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衆議院議員船田元氏との意見交換から

二水会で「国民投票法を含む選挙の投票率を考える」と題してささやかな勉強会を開催しましたが、丁度その法案が成立する直前の5月7日にこの問題に関するシンポジュームが中山太郎衆議院議員の主催により大阪で開催されました。
この会合に参加をさせていただきましたが、シンポとはいえ時間の制約のある中で質疑の時間も無かったものですから終了後に、パネラーとして参加されていた保岡興治議員と船田元議員にお会いししばらくの間意見交換をさせていただきました。
もとより短時間ですから詳細にわたる意見交換ができなかったものですから後日私どもの勉強会の資料をお届けする旨をお伝えしました。
お届けをした二水会の講演資料に対し船田元議員からご返事のお手紙をいただきましたので、「議論の広場」に書かせていただきました通りここにご紹介させていただくことにしました。
船田先生からの私信ではありますが、内容は自民党の見解そのものですからお許しいただけると考えここに掲載させていただきます。
尚、私からお届けしました資料は5月10日にこのWEBで発信しているものです。

船田元議員からのご返事のあらましは次のとおりです。
先日のシンポジュームありがとうございました。また松室様の勉強会感服しております。
最低投票率につきましたは

・ 憲法96条が予定していない過重な要件であること。
・ ボイコット運動を誘発すること
・ 棄権の人々の「他に委ねる」という意思を無視すること。
・ 圧倒的多数の賛成でも無効というパラドックスが生じること。

などを総合的に判断して法律に入れませんでした。しかし付帯決議でさらに「検討」となりましたので今後も勉強を続けてまいりたいと思います。
というものでした。

このご返事に対し次のような手紙を書かせていただきました。

松室猛からの手紙。

拝 啓 いよいよ終盤国会を迎えましたが、年金問題の悩ましい案件があるだけに先生のご苦労も如何ばかりかとお察し申し上げます。
そんなお忙しい中を、拙稿「国民投票を含む選挙の投票率を考える」に対し、ご丁重なご返信をいただきありがとうございました。
率直に申し上げて先生のご見解や政府の見解では憲法改正ありきの感が強く、どんな低投票率でも国民投票は成立し、その過半数で決する事には問題を感じています。
選挙の成立要件を設けることについて、「憲法が規定していない過重な要件」であるとご指摘ですが、憲法96条では国民投票の過半数で決すると規定されているだけで、この条文があっても選挙の成立要件を設けることには何の問題も無いと考えます。むしろ、極端に低い投票率でもその過半数だけで事を決する方が問題ではないでしょうか。この際、過半数の法理をお考えいただく必要があると考えています。
ご指摘の、選挙をボイコットする動きについてですが、こんな事をするより憲法改正反対を主張するほうがはるかに効果的でしょうし、もしこんなネガティブな運動をする政党や団体があれば国民のひんしゅくを買う結果になるのではないでしょうか。
市町村合併の住民投票で成立要件を条例で決めていた市町村がありましたが、投票をボイコットするような運動はそれほど目立ったものではありませんでした。
棄権に関しては、「他に委ねる」という意思もある、とのご指摘は、新しい感覚と受け止めさせていただきました。
最後にお書きいただきました「圧倒的多数の賛成でも無効というパラドックスが生じる」とのお説ですが、投票率の程度にもよりますが、仮に投票率が40%ですとその過半数では全体の20〜30%強でしかない事を考え合わせますと決して圧倒的過半数とは言えないと理解しております。
あらゆる分野での政治不信が選挙離れを増幅させているようですが、拙稿にも書きましたように、いずれにせよ国政選挙はまだしも地方選挙の投票率、中でも単独で執行される首長選挙の低投票率にはうんざりさせられていますだけに、せめて憲法改正のために初めて行なわれる国民投票では、それにふさわし投票率であることを願わずにおれません。
既に法律が成立致しておりますが、今後、機会がありましたらぜひご検討の程をお願い申し上げます。
大変お忙しい中をわざわざご返事をいただき誠にありがとうございました。
公務多端な折柄ご自愛の上ご精励の程をご祈念申し上げます。    敬 具

平成19年6月4日

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本来は私信のやり取りですからこんな形で公表する事は如何なものかと思いましたが、私信とはいえその内容は政策論ですからご了解が得られると考え発信させていただきました。遅まきながら船田先生のご了解をお願いいたします。


    平成19年6月4日

松 室  猛



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