平成19年4 戻る



松 室  猛

選挙期間中のWEBは公職選挙法上規制を受けるので発信を控えて
きたが、許容されると自分で判断をし発信した文書がある。
敢えて標題をぼかして「株価激変と地方選の行方」とした。この標題で
は興味がわかないらしくアクセスが低かったので、改めて若干編集して再掲することにした。


今年は選挙の年で3月末から都知事選などを含む統一地方選挙が始まり7月の参議院選挙へとつながっていくが、3月初旬の時点で大阪府議会議員選挙の候補者数を調べてみれば例年に無く候補者数の減少傾向が顕著で、無投票選挙区がかなり出そうな状況である。(結果的には12選挙区で無投票となった)
なぜ地方議会がこんな状態であるのかを検証してみる必要がある。
大阪府をはじめ他の自治体でも財政問題のみならず裏金問題、入札不正問題などの不祥事が多発しており議会のチェック機能が問題になっているのになぜ無投票区が多くなるのか理解に苦しむところである。

地方議会の特徴 (二元代表制)

地方議会は衆議院と異なり執行権者である首長も議員も直接選挙で選ぶシステムとなっており、これを二元代表制というが、首長と議会の支持基盤が異なる事態が多発している。
同じ選挙民が選挙しながら党派的には首長と議員を違う党派(信条が異なる者)を平然と選ぶ傾向がある。クロスボーティングといわれる民意の捩れ現象であるが、極端な例をあげるなら、首長には共産党単独推薦の候補を支持しながら議会の構成メンバーである議員は保守系の候補者を選ぶ結果は各地で見られるのである。
地方選挙で示される民意をどう理解すればよいのか戸惑うことが多いが、議会は民意を反映するものでなければならないとは言うものの、それなら首長選挙で示された民意はどうなるのか、こうなれば民意とは何かを考えてみる必要がある。
実は、これが首長と議員を同じ基盤から選ぶ二元代表制の悩ましいところであり、逆の見方をすればこれこそが地方自治制度の最大の特徴なのである。

民意に極端な捩れが出れば議会運営は大変難しくなり、その意味ではこのシステムがわが国地方自治制度の良さであると言い切ることは出来ないし、議会と首長とのあり方が大きな問題となるであろう。もちろん選挙民の意志(民意)のあいまいさにも大きな問題があることはいうまでもない。

地方議員の評価が定まらないのは何故か

地方議会が機能していない、議員は何をしているのだ、議員の数が多すぎるとの声は大きいし議員の資質を問う意見が多いが、この原因の中には選出基盤と民意にも大きな問題がある。その原因の一つに地方議会議員の選挙区は総体的にみて狭い範囲で人口に比例した議員を選出するが、それだけに極めて個人的な魅力や人脈で選挙が行なわれる傾向が強い。換言すれば議員としての資質を問うことより、好き嫌いなどの情緒的判断で選ばれることが多い。だから議員を目指す者は政治家としての勉強よりもひたすら地元民との接触やお世辞、サービスに専念する傾向が出てくるのである。その結果ひどい例としては本会議よりも地元のお葬式を優先するなどのふざけた議員を生んでいるのである。

こんな形で選ばれてきた議員は執行権者である首長にすり寄り選挙地盤に行政投資を呼び込むことで「力」を誇示し、首長も彼らをうまくコントロールすることで議会運営を図る傾向が強いので、必然的に「馴れ合い」と「癒着」が生じるのである。

首長に問題はないか

このシステムの問題点の一つだが、首長が「対話集会」などと称して市民との直接対話を働きかけることが良く行なわれているが、これは首長も直接選挙で選ばれるから当然の対応であり選挙対策の一つでもありそのことを非難できないが、この事が過ぎると代議制民主主義の基本システムを侵しかねない問題を生じるのである。首長が直接地域住民と話し合い行政需要を充足させるのなら議会は予算などの首長提案を議決するだけの権限しか果たせなくなるからである。
次元は違うが、首長主催の「対話集会」に人が集まらないから職員を使って動員をかけている実態があり、ここまでくると問題である。対話(公聴)にかこつけた見せ掛けのパフォーマンスであり公務員を動員した選挙活動になりかねないからである。
この件に関してもっと問題なのは、この会合に時に議員を帯同していることである。
さすがに古参議員はそんなことはしないが、一年生議員などは首長との「近さ」や首長が間接的にその議員の面倒を見ている状況を知らしめるパフォーマンスになっているのはお笑いであり、首長よりも議員の資質を笑うほかはない。
選挙民との対話の必要性を説くなら議員が対話集会を主宰すべきであり執行権者に対して市民と同じレベルで陳情をすることがあるとすれば尚更お笑いである。
こんな議員に二元代表制の本来あるべき姿がわかっていないことは言うまでもない。
この際付言しておくが、二元代表制とは首長も議員も等しく選挙民の負託を受けていることを指すのであり、執行権を有する首長と、議決、審査、監視と議案の提出権を有する議員の役割分担があり民意に対しては二元的な代表であることをいうのである。従って首長と議員は、ある意味で対等であるべきなのにローカルの議長などは首長と議会とは車の両輪であるとしばしば発言をしているのを聞くが、協調の意味での両輪論なら許容できるが、そうではなくあたかも追従を宣言している場合があるのは情けない限りである。
相互の協調性の必要なことは否定しないが、時には「首長与党として頑張る」などと言われればその不見識に呆れてものが言えない思いである。
結論的にいえば議長や議員が、首長与党などと発言することがトンでもない間違いなのである。
なぜなら、与党・野党の言葉は代議制民主主義の中で議院内閣制をとる衆議院で、執行権者である総理や閣僚を選出する勢力のことを与党と呼び、その反対勢力を野党と呼ぶのである。
従って地方議会には与党・野党など存在する筈はなく常に首長と議会は是々非々の対応しかないのである。

議会改革の新しい流れ

最近、改革府県と呼ばれている自治体で二元代表制論が声高にさけばれ、首長と議会は対等であることを確認する「議会基本条例」の制定が取り沙汰されているが、今更の感じがしなくはないが、それでもやっとそのことに気づいただけでも一歩前進というべきだろう。北海道の栗山町では理事者の議員に対する「反問権」や、年一回議会主催の「報告会」の開催を義務付けることなどを盛り込んだ「議会基本条例」を制定しているが、こんな動きに対してももっと真摯に検討する議員が身近にいて欲しいものである。

さて、今年は選挙の年であるがこの程度の基本的な事柄すらわかっていない候補者がいるとすれば選挙民はこの時こそ選択権を行使すべきである。

議員および首長を選ぶ際の検討事項

・先ず議員及び首長たるものは企画立案能力があること。
・そのためには自分の言葉で話が出来る人物であること。
・自分のためだけでなく人のために働けること。
・見せかけや思い付きで事をせず「筋を通した対応」ができること。
・ 几帳面であること。

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