平成16年05月 戻る
自治体のあり方について−池田市の合併構想に思う
松室猛のTMニ水会定例講演資料



地方自治体の現況と経過
明治21年に従来の自然集落(71、314)を市町村制へ移行。(内務大臣訓令)
翌22年には39市15,820町村とする市町村制を施行。
昭和28年に町村合併促進法及び昭和31年の新市町村建設促進法により市町村数を3分の1にすることを目途とする基本計画を策定。
「昭和の大合併」
昭和28年から37年までの間に3分の1にすることに努め、昭和37年6月には558市1,982町913村の計3,453市町村となる大合併が行われた。
平成16年4月1日現在の全国の市町村数
695市・1,872町・533村 計3,100市町村となっている。
(この数字は合併により刻々変化している)
・中央と地方とが一緒になって国民生活を安定させることが急務と考えられた時代があった。その結果「画一的」「縦割り方式」が顕著となり、もっとも問題視されているのが「中央集権的」過ぎることである。

自治体の規模はどれくらいが適当か
40万人規模で300が良いのでは・・と言う意見があった。


地方自治体の組織の特殊性について・・・・二元代表制
首長と議会の資質が重要性をおびてきているが実態にはかなり問題がある。
時代の変化と共に行政需要が様変わりし、新しい行政課題が浮上してきた。
交付税制度は一面では限界財政責任論(吉田和男教授)と言われる縛りを課している。

首長選挙と議員選挙に捩れがおきる問題がある。
長野県の田中康夫知事と県議会との関係など・・


自治体の抱える問題点
高度経済成長期には税の自然増を当てこんで過度の行政サービスを展開してきたが景気の衰退後は一転して行財政改革が叫ばれ行政のスリム化が大きな課題となってきた。
受益と負担をめぐる議論や官民の役割分担議論などがそれである。
現在の自治体のほぼ全部が財政的に破綻していることに加えて、急激な時代の流れを受け、新しい時代にふさわしい自治体のあり方が問われている。
三位一体改革との関連において、自治体の能力も問われる時代である。

大阪府などは久しく不交付団体であったが最近は3〜4000億オーダーの交付金を受けている。
何故そうなったのか・・・経済変動と行政システムの旧態依然性がもたらしたシステム疲労が最大の原因ではないだろうか。


新しい行政課題とは何か
・ 少子高齢化の急激な進展に対する施策
・ IT化に対する対応と新しい行政システムの構築 
・ 多極分散型国土の形成―地方文化の振興策
・ 低成長期に見合った行財政の見直しと財政健全化策
・ 地球環境に対する広域的対応の必要性
・ 大災害に対する危機管理施策の構築

これらの課題を解決するための

広域行政によるメリット、デメリットは
現行法ではゴミ処理や下水道処理は市町村固有の事務となっているが、財政力の弱い自治体が完結的に処理することは非効率であるにとどまらず、部分的には不可能な場合すらある。ダイオキシン問題や消防行政なども広域的対応の検討を急ぐべき課題である。
・個別の検討課題   医療施設、文化施設、福祉施設など

           一部事務組合に対する一般的な感覚について

何故このようになったのかの一因に首長及び議員の過保護的な行政サービスがある。
首長のパーフォーマンスがひど過ぎないか。


合併論議のスタートで留意すべきことは・・(最重点の問題点)
広域行政への取り組みは、市町村が市町村だけの責任として現在抱えている問題と責任を果たせるのかを真剣に考えることからスタートしなければならない。換言すればメリット、デメリットだけでなく、このような新しい行政課題に対して現行のシステムで対応することが適切かどうかの判断が肝心なのである。同時に検討をしようとしている合併構想によって、合併後に効率よく行政執行が可能かどうかを検証する必要があることは論をまたない。

「市町村の合併の特例に関する法律」とは何か
昭和40年法律第6号として制定された法律で、平成7年の改正において単に合併の障害除去にとどまらず、合併に向けた環境を積極的に整備して自主的な合併を推進することとしており、そのために行財政上の特例措置を大幅に拡充整備した。即ち平成7年の改正により『市町村の合併の円滑化を図ること』から『自主的な市町村の合併を推進すること』に変更された。これらの特例は平成17年3月末までに合併する場合に限りの特例であるため、時限立法となっている。

合併を検討する際の手続きについて
法律の第3条に合併協議会の設置を義務付けている。
「合併協議会」とは、合併を行おうとする市町村が、合併すること自体の是非も含め、合併のための諸条件を協議し決定するための自治法上の機関である。
即ち、合併協議会の設置イコール合併を行うことにはならないのである。
・住民発議について
同法第4条と4条の2において住民発議制度も定めている。
有権者の50分の1以上の署名をもって市町村長に対し合併協議会の設置の請求を行うことができる規定がある。

池田市の住民発議による合併協議会の実態について
池田市における合併協議会は住民発議により発足したことになっているが、市長が関係者にそのことを仕掛けて署名集めをさせたもので、本当の意味で住民発議とはいえるものではない。(このことは事実に基づいて指摘している)
この件に関してホームページで発信をし、後日、協議会委員全員に意見書を発送して住民の意見をもっと真面目に聞くべきであると指摘したが、そのことに関連して3月16日の池田市議会本会議において次のような質疑が行われている。
発言録は話し言葉であるため活字にすると多少わかり難い部分があるので主旨を要約すると、
『市長が自分の後援会や、青年会議所に呼びかけて、あたかも住民発議のような形で協議会を発足させようとしたものではないかという意見がでているが、市長の見解は・・・・』という質問に対して合併協議会の会長である市長は、
『恣意的に仕掛けるとか、仕掛けないとかということではありませんし、そんな恣意的な仕掛けに8千人ほどの、いわゆる有権者の1割に及ぶ方々が約1週間で署名をしていただける、そんな市長がおったら大したものでございまして私はそんな力を持っていない。あくまでも自然発生的に市民運動を展開されたものだと思っております』と発言している。
解説するまでもなく、このやり取りは「出来芝居のヤラセ」であることは歴然だが、この市長答弁は完全に馬脚を表わしている。世に言う「語るに落ちる」とはこのことで、いかに言辞を弄そうとも、池田市と豊能町のような飛び地の合併を市民が自然発生的に発議し、ましてや8千人の署名が1週間で集まることなど、絶対といってよい程あり得ないことである。
恣意的な仕掛けに関して、かなりの地域で誰を対象にどんな仕掛けをしたのかはほぼ掴んではいるが、それを明らかにすれば固有名詞がでるので控えるが、こんな恣意的な仕掛けをなぜしたのかは次の発言に現れている。
『この法定協は合併の是非を論議する場では私はないと思っております。・・』
すなわち、住民発議をもとに協議会を立ち上げたのだから合併を前提とする場であり、合併の是非を議論する必要はないと言い切っているが、立ち上げの前段の仕掛けはそのためのものだったのである。こんな協議会に行政側のイエスマンを委員として多く配されたらどうなるのだろうか。

大事なことは、住民の意思を主導することは悪くはないが、その場合は謙虚に、そして真摯に状況を説明し理解を得ることである。アカンタビリティ説明責任を果たすのが民主主義の最低のルールである。
特定の住民を使って行政の問題点を糊塗するための方便を用い、それを指摘されて開き直るがごときはもっての他である。


民主的な合併協議会運営のためには構成メンバーの公募が必要である
池田における協議会委員が正しく民意を反映するにふさわしいメンバーと言い切れるであろうか、大いに疑問を抱いている。協議会の立ち上げもメンバー構成も行政の意のままに進めようとする対応を「恣意的」と言わずに何と言うのだろうか。こんな状態では民意が集約される筈がない。
しからば、なぜこんな形で合併を急ぐのかが問題になる。

既に、協議会に示された建設計画には市庁舎の大規模改修や総合福祉センターの新設、児童福祉施設新設,市営住宅の建て替え、総合教育センター新設、学校社会教育施設、人権交流センター、共同利用施設、コミセンのリニューアル(これらはすべて池田市の計画)であるが。財源対策としては合併特例債で事業費の95%が起債可能で,償還時には70%が交付税で措置されることを当てこんでいる。
しかし,95%の70%償還補助でも総事業費の66、5%は補助対象であるが33,5%は自主財源が必要であり,更に将来にわたる維持管理経費の増高を考え合わせると,本当にこれでよいのかが問われるところである。

豊能町は自治体の規模としても、レベルとしても御し易いとの見方がなかっただろうか。


合併論議で一番大切なことは
自治体の目指すべきは、地域特性に根ざした地域の自主的な運営であって、量的拡大だけを指向するのではなく、質的健全化と行政の透明化である。
従って合併により住民との距離が遠のいたり、意識のずれなどあってはならず、
目が行き届かない状態が発生する可能性の排除には最大限注意を払わねばならない。そのことを糊塗するために、またぞろ合併特例債による「箱物」づくりといった行政サイドのパフ-マンスなどの愚を断じて許してはならない。
合併の際の一番大事なことは地域住民の意思である。 
合併が民意によるものでなく行政サイドの都合、すなわち特例債を当てこんだ財政破綻を先延ばしするための便法として進められることなどは本末転倒も甚だしいことを指摘しておきたい。

住民投票について
住民の意思を問う方法としての『住民投票』が考えられているようだが、果たして住民投票が一番民主的なやり方と言えるであろうか。
その前段には、首長,議員がそれぞれの立場で説明責任を果たすべきであろことが絶対要件だ。広く民意を聞くとは名ばかりで問題を詳しく知らない一般人に是非だけを聞くのは衆愚政治に繋がる危険性がある。また、首長及び議員が地域住民の負託を受けた選良としての資格を自ら放棄することに通じかねないのではないか。
議会制民主主義,代議制民主主義の崩壊に繋がらないだろうか。
守口・門真の合併に関して住民投票の投票率が50パーセントに達しない場合はこれを無効とし開票もしないことをい決めたのは見識であると思う。


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池田市と豊能町の比較

池 田 市
豊 能 町
備   考
財政力指数
0,917
0,613
1を超えたら不交付団体
経常収支比率
106,3%
92,5%
市75%・町70%が妥当
起債制限比率
12,5%
5,9%
高ければ起債制限
地方債現在高
348,506円
105,884円
1人当たり
基金現在高
23,971円
122,160円
職 員 数
9,4人
10,2人
住民1,000人当たり

参考 大阪府の基準財政需要額 957,939百万円
    〃   〃  収入額 650,739 〃
(15年度)  交付税決定額 305、379 〃   (7月19日一部加筆修正)



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