平成16年03月03日 戻る
― 検証・この国のかたち ―

シリーズ その1「日本と日本人を考える」

松室猛のTMニ水会定例講演資料

最近、この国のかたちが大きく変わってきたのではないだろうか。
時の流れにともなって価値観が変化し、習慣の変化などが人間関係にまで影響をおよぼし私たちの「日本」のかたちが従来の姿でなくなってきた気がしてならない。 この機会に国家とは何か、日本の現状はこれで良いのかを一緒に考えてみたい。

日本の政治体制は何か(政治体制の比較)

アメリカ     共和制(合衆国) ロシア     
連邦共和制
イギリス 立憲君主制 ニュージーランド 立憲君主制
タ イ 立憲君主制 北朝鮮      共和制
シンガポール 共和制 オーストラリア  立憲君主制
韓 国 共和制 日 本      ・・・・・・

国家とは何か

「統治のメカニズムを持った整備された国民共同体」 − 領土、統治権、住民が最小要件 −
・共同体を構成するためには住民が「個人」のエゴを「公」のために規制されることは避けられない。
・ 人は皆、帰属意識のあるなしに関わらず国家に帰属しており、それを放棄してもいずれかの国に帰属することにならざるを得ない。
・ 「民主主義」とは、統治される国民が自らの意思で統治する国家機能のあり方を決める制度。
従って国家のあり方を決めるのも国民自身である。
・ 民主主義国家の基本枠は国民の意思で形成されるのに対し、全体主義国家は独裁者が一方的に支配することから国民と国家が一体とはいえない。(強制的、強圧的な体制)
・ グローバルスタンダードと民族の独自性との違いの明確化。
・ 国際交流とは、それぞれの国の国民であることがスタートであり、同化するのではなくお互いの違いを認め合うことから始まる付き合いでなければならない。
・冷戦終結以降、経済がグローバル化するにつれ、あらゆる分野でボーダーレス化が進み国家が大きくかたちを変えるのではないかといわれた時代があった。ECからEUへなどは新しい流れであるが 経済的な統合がなされても国家観に極端な変化は見られない。
・しかし、無差別テロの典型である9・11以降、安全保障が中心の国家観が台頭してきた。
・宗教的戒律に基づく国家観をどのように理解すべきか。
・宗教から見た日本の特異性 ― 宗教的、精神的バックボーンの希薄さ ・八百よろずの神の国

国家観、歴史観に見る日本の特異性

自虐史観の国 敗戦を機に自国や自国の歴史を自虐的に捉える類例のない国になったのは何故か
一部のマスコミに自虐的報道が目立ち、自国向けというよりも相手国に向けた報道姿勢が見られる特
異な国になったのはなぜか。
・都立大の関嘉彦教授はこれらの原因として、「戦前、戦中に行政府と軍部との力のバランスが崩壊し、国家の命令に従った末の戦争で国を滅ぼした惨状から国家への反発と、国家をブルジョアのプロレタリア弾圧の道具と断じたマルクス主義国家観の影響であり、共産党やかつての社会党に連なる進歩的文化人と称される人や、左傾マスコミの「国家は悪」のプロパガンダの影響である」と断じている。   
然らば、日本人のアイデンティティとは何か

国際紛争に対する日本人の感覚
「すべての戦争は悪である」この感覚だけで戦争が回避されるのか

戦争で手痛い犠牲を経験した日本人の発想として当然のことではあるが、理不尽な侵略行為に対しても尚、武力行使を禁ずるのが正しいのか
国際紛争を解決する手段としての武力行使とは何か・・
侵略に対する自衛権発動は国際紛争の解決のためではないのか・・

日露戦争100周年(1904・明治37年)の回想 (国民の反応は−日中、日韓併合との関連)
極東における戦いは対ロシア、対ヨーロッパ勢力との均衡に起因するものでもあった。
第二次世界大戦の勃発原因についての検証過程には膨張主義だけではなかった事実がある。

諸外国の歴史に見る実情

・紳士の国イギリス、民主主義の国アメリカというが実態は・・・・
アメリカ フロンティアスピリットと称してインデアンを殺戮し国を造った
イギリス 世界最大の植民地帝国(香港の租借に至る歴史は何を語るのか)
スペイン 探検家精神を発揮し南米を侵略、インカ文明を丸ごと潰した
ドイツ  ゲルマン魂は大量のユダヤ人を殺害した
中 国  中華思想をもとにチベット、モンゴルの植民地支配

戦後日本の特徴的な傾向

平和ボケの由来と国家観(主として国を護る観点)のあいまいさ。
国家の基本法である憲法の問題点(憲法の前文の抜粋)
「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼し、われらの安全と生存を保持しようと決意した。・・・」
平和とは何か ― 諸国民の公正と信義に信頼できるのか、
非武装中立論の幻想と生存基本権としての自衛権の関係
世界の中立国の現況は
主権を護ること、自衛権の限界と集団安全保障体制
集団安全保障と集団的自衛権の見直しの必要性はないのか
権利意識と国益意識について思うこと
西洋諸国の国民が持っている権利意識と比較し日本人はつつましいといわれるが、外交交渉において国益を優先させるのは当然である。
  ・日中、日韓、日朝、日ソ、日米との外交交渉に見る日本外交の腰抜けぶりは何によるのか
  ・主権侵害も甚だしい犯罪行為である拉致問題に対して毅然たる態度が取れないのか
  ・日本大使館が「日本海」を「東海」とWeb上で表記した馬鹿さ加減をどう説明すればよいのか
  ・北方4島、尖閣列島、竹島問題の領有権について、なぜ毅然たる態度を取れないのか

ODAの現況に思うこと

  ・なぜ有人宇宙衛星を打ち上げる国に経済援助が必要なのか
  ・オリンピックの誘致を競う国に、なぜ経済援助をしなければならないのか  
  ・拉致をする国になぜ人道支援をしなければならないのか

人を愛することと、国を愛することの違いは何か

郷土に対する愛着、国家に対する帰属意識「愛国心」の言葉の響き
いとおしむ心、愛する心の欠落、(価値観の変化がもたらしたもの)
道徳規範が希薄となり長幼の序や、もったいない、感謝の気持ちや生命に対する尊厳意識の希薄さは目に余る。その結果、ゲーム的殺人や尊属殺人、幼児虐待、親が子どもを殺す事件が後を絶たない。
  ・基本的人権を尊重するということ
人権意識の高揚がもたらした功罪(凶悪犯の人権・知的障害者の高校入学など)
  ・平等意識の混乱 − 機会の平等と結果の平等の混同
  ・官に対する依頼心の増幅と不満がもたらしたもの ― 政治不信 ―



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