金融不安を解決するためには不良債権処理をしなければならない必然性は理解できても、
その結果どんな問題が派生するのか、さらに不況の深刻化を加速させないだろうかなどの
問題点も取りざたされている。こんな情勢の中で金融改革を急がねばならないといわれ
ているが金融改革とは何なのか、また不良債権とは何なのかについても詳しく知ておく必
要があるだろう。
これらの問題に関連して、過剰生産、過剰債務の問題、あるいはオーバーバンキング、
オーバーカンパニーといわれるわが国の企業数の過剰の実態について検証して
みる必要がある。
先ず日本の金融機関の数と不良債権を含むリスク管理債権がどれ位あるのかを
調べてみたい。
日本の金融機関数〔14年3月〕
都市銀行 15 貸出金 293兆2,230億円 |
リスク管理債権 27兆6,260億円 |
(都銀:7 長期信用:3 信託:5)
|
|
地方銀行 118 貸出金 180兆 190億円 |
リスク管理債権 14兆4,020億円 |
(地銀:64 第2地銀:54)
|
|
小 計 133 小 計 473兆2,420億円 |
小 計 42兆 280億円 |
協同組織金融機関
信用金庫 344 |
貸出金 72兆9,130億円 |
リスク管理債権 9兆5,370億円 |
信用組合 205 |
〃 11兆5,830億円 |
〃 1兆4,840億円 |
その他 70 |
|
48兆6,350億円 |
小 計 619 |
小 計 133兆1,310億円 |
小 計 11兆 210億円 |
合 計 752 |
合 計 606兆3,730億円 |
合 計 53兆 490億円 |
不良債権処理の分類
(5分類)−正常債権・要注意債権・破綻懸念債権・実質破綻債権・破綻債権)
不良債権処理方法
直接償却−帳簿から切り離す(オフバランス)債権放棄・法的整理(更正法適用)債権売却
不良債権処理は完結。
間接償却−破綻に備えて貸倒引当金を積み帳簿には残しておく−不良債権処理は続く。
オフバランス化によって銀行破綻や貸出先の倒産もあり得る。130万人の失業者増、
所得は6兆 8?千億減少と予測。
失業率は全国平均−5.4% 近畿は7.6%(完全失業者数−365万人〔平成14年9月〕)
自己資本比率
一般的には企業の総資産に対する自己資本(資本金・準備金)の割合。
銀行は融資等の資産ごとに貸倒れリスクの多寡に応じた比率をかけて再評価した資産
(リスクアセット)で、自己資本を割って算出する。
公的資金導入について
平成10年3月大手18行に1,7 兆円、11年3月に大手14行に7,3 兆円投入。
現在15兆円を用意している。
自己資本比率を高めるために銀行株の引受〔優先株・普通株〕・破綻銀行の預金全額保護
のため資金投入、銀行の国有化。
竹中経済財政・金融相は自己資本の計算方式の厳格化を導入しようとしている。
税効果会計の厳格化などアメリカ方式の導入を考えているが、破綻を加速しデフレを深刻
化させないだろうか?
伊藤元重東大教授・本間正明阪大教授の見解
無理につぶすのではなく、事実上役割を終えた企業を整理をすべきであるとの見解。
小泉総理が信頼している学識経験者は多いが、両者は竹中経済金融相とともにその
代表格といっていいのではないだろうか。
構造改革を進めるにあたって何をなすべきか
オーバーカンパニーの整理は避けられないだろう。そのときの副作としての失業問題
の深刻化にどう対処するのかが問われるとになる。
資本主義経済体制は基本的には競争原理を根本理念としている。
?したがって弱肉強食の傾向は否定できない-−
それらを是正するための方策としてセーフティネットの必要性がある。
即ち、救済措置としての福祉施策や過当競争抑制措置、弱者救済措置の
必要性がある。
銀行・企業が多すぎる−淘汰−経済不況−構造改革の行方は?
ゼネコンの企業数 全国 571,388社 大阪 45,727社
オーバーカンパニーの整理。
雇用保険の現実・平成4年4兆7千億あった積立金が現在は1千4百億円。
保険料率を0,2 %Up(労使折半) 給付率下限6割から5割に引下げー再雇用給与
との逆転解消。自己退職者の給付日数30日削減、非自発的失業者には30日増。
教育訓練給付を8割から5割へ減らす。(英会話、パソコン塾など)
セーフティネット拡充に向けた施策。
不良債権処理就業支援特別奨励金を新設−中高年の失業者を雇い入れた企業に
対する助成金を現行制度より倍増。
地域中高年雇用受皿事業特別奨励金を新設−失業者を雇用し公共性の高い事業
に助成金を支給。
セーフティネット保証の拡充―(RCCに債権譲渡された再生可能な中小企業など
を対象)
デフレの克服策にどんな物が必要か
最大の問題は不良債権処理によって、企業の倒産が避けられず、また失業者が増え
るとすればデフレ抑制策としてどんな手立てが講じられるのかが問われるが、現在示
されている施策の主な物は景気刺激策としての補正予算編成であるが、財政出動に
よって果たして効果があるものだろうか。
減税についても検討されているが可処分所得を増やしたところで国民の関心が消費
に向かわない現状が最大の問題である。したがって企業減税、特に研究開発のため
の減税などを重点に行い企業の活性化を図らねばならないだろう。
いずれにしろ、考えられる総ての策を思い切り断行するしか方策がないのでは
ないだろうか。
|