平成12年10月      戻る

大統領と議会との関係
アメリカの大統領は独特の選挙制度で選出されるが、議会との関係を列挙すれば概略次の通りである。
  • 大統領は立法府から独立した機関であり議会の招集権(緊急の場合を除く)議案の提案権および解散権はない
  • 議会から信任を受ける必要もない
  • 議会には大統領の不法行為に対して弾劾権がある
  • 議案提案権はないが勧告することはできる。「教書」と言われるもので、議会に対し事案に関する方向づけはできる
  • 議会の議決案件に対して「拒否権」を発動し拒否できる。但し上下両院の3分の2で再議決すれば拒否権は失効する
  • 大統領は立法府や政党からも独立をし、国民に対して責任を有する。軍の統帥権をもつ最高司令官であるが実際には軍人に委ねている。〔トルーマンは広島、長崎への原爆投下を直接命じた〕
  • 宣戦布告は連邦議会の権限である
アメリカに於ける閣僚の役割と権限
  • 大統領が指名する。但し上院の承認を要する
  • わが国の制度と違って閣僚は必ずしも行政職の最高位ではない
  • 閣僚(長官)は議員を兼務できない。議会での発言権もない。召還されたときのみ発言できる。 即ち大統領に忠実に執務し、大統領に対する助言者であり補佐役である。議会とは何の関係もない。
アメリカの選挙制度について
  • 大統領候捕者の資格は出生市民であり、14年間以上国内居住を満たす満35歳以上のアメリカ人。
  • アメリカ連邦議会議員選挙〔上下両院議員〕は上院議員は各州2名ずつの100名と、下院議員は定員435名で各州から人口比で選挙される。
  • 連邦議会議員になるためには各州で、それぞれの属する政党内部で候補者としての指名を受けねばならない。 予備選挙と称されるもので、党内で認知されたのち一般選挙で選ばれる。 従って民主党または共和党が圧倒的に強い地域では、党内選挙の予備選挙で指名を受ければ、実質的に当選となる。
  • 予備選挙については州法を制定しているところもあるが州によって異なる。本選挙は下院議員選挙は小選挙区制、上院は 州全体が選挙区となる。
  • 地方議員は直接選挙で選ばれる。選挙区については不詳。
アメリカの政党の特質
  • 日本と違い民主、共和両党の党主的な党代表は存在しない。州組織のゆるやかな連合体と見るべきである。
  • 大統領も党の代表としての立場ではない。
アメリカ大統領の選挙制度について・アメリカ大統領選挙は間接選挙である
大統領選挙には3通りの手順がある。
  1. まず、党内で候補者を特定するために予備選挙〔Presidential primary〕を行う 予備選挙で代議員を選ぶのだが、その選出方法に「党員集会」と「予備選挙」の2通りある。
    予備選の方式には拘束性〔クローズドプライマリー〕と非拘束性〔オープンプライマリー〕の2通りある。党員資格がわが国ほど明確でないので自ら党員であることを告げれば予備選に参加できる州と、一般に投票を認める州とがある。
  2. 選挙人〔Electer〕を選ぶ一般選挙〔Popular vote〕により各州で、どの候補者に投票するかが決まっている選挙人を 選ぶ選挙がある。〔選挙期日は11月の第1月曜日の次の火曜日〕
    ・一般選挙は勝者独占方式〔Winner take all system〕で勝者がその州のすべての選挙人票を獲得する。
    ・Electerは上下院両院議員の数の合計、即ち100+435とワシントン特別市の3名の計538名・過半数は270名である。
    ・一般選挙に向けての選挙戦は9月のレイバーディの休み明けから本格化する。〔最近はTV討論会など〕
  3. 選挙人が行う選挙期日は12月の第2水曜日の次の月曜日で、州都に集まり投票する。 投票は封印され、上院議長に届けられる。翌年の1月6日に上下両院議員の前で開封され大統領選挙が終結する。 ※大統領の就任式は1月20日の正午に行われる。

連邦議会議員と同様に、まず党内で大統領候捕の指名を受ける争いから選挙が始まる。いわゆる予備選挙であるが予備選挙に関して憲法上の規定はないが、各州が独自に選挙法を制定する権限が認められている。
連邦最高裁判所が、政党には指名党大会出席者に関する規則を制定し施行する権利があると判決を下したために、各州は党則に従って予備選挙や党員集会を実施する。

    
予備選挙に関する両党の対応について
  • 民主党の場合
    ・党組織に対して一連の全国的規則を制定している。
    ・大統領の任期の前年の3月の第1火曜日から6月第2火曜日の間に全国大会(コンベンション)代議員を選出する。
    ・但し、小さな州のアイオワとニューハンプシャーはこの制度を免除されている。
    ・代議員の数は党が定めた公式により計算される。
    ・代議員の男女構成比は半々でなければならない。
    ・勝者独占方式ではなく、得票比率で代議員の候補支持がきめられる。
  • 共和党の場合
    ・予備選挙に関して民主党のような全国的な規則はない。
    ・代議員は男女同数でなくてもよい。
    ・勝者独占方式が一般的である。
     
アメリカに於ける政党の実態
アメリカの政党は1800年代初めに選挙権における財産所有要件が廃止されたことに伴い、参政権の拡大と密接に結びついている。即ち、有権者の大幅な拡大に伴い大勢の投票者を動因する手段が必要となったことから政党が制度化されていった。 今日では民主党と共和党が浸透しており、国民の約3分の2が自らを共和党員、民主党員であるとしており、無所属とする人でもいずれかの党派寄りであり、党派への忠誠度はかなり高い。
  • 1998年の選挙以降、無所属で当選した連邦議員は僅か1名だけで、州議会では7,300名を越える当選議員のうち無所属は わずかに20名(0.003%)である。
  • 予備選挙に参加するための党員要件は、自らが党員である意思表示をすればよい地区もあり、わが国の党員要件とは少し異なるようである。
  • その理由の一つとして党の全国組織は、全国党大会への代議員の選考手続きに関する限られた範囲の権限を除き各州レベルの党内問題にはほとんど関与しないからである。党の全国大会であるコンベンションは4年に1回しか開催されない。

第3政党と独立候補
民主、共和両党以外の第3政党は周期的に現れるが、多くの場合1つの選挙で表舞台に現れたのち消滅、もしくは2大政党のいずれかに吸収されている。以上のとおり第3政党が定着する事は歴史的にみてなかったが、1992年の大統領選挙のときにH・ロス・ペローが立候捕したことによって共和党に票を投じていた有権者の票がペローに流れ、その結果共和党大統領候補が敗北を喫した例がある。

            
2000年選挙の予備選挙実施状況
                   
アラバマ 6/6 ミシガン 2/22
テネシー 3/14
アラスカ 5/19(R)
5/20(D)
3/11(D)
テキサス 3/14
ミネソタ 3/7 ユタ 3/10
アリゾナ 2/22(R)
3/11(D)
ミシシッピー 3/7 ベルモント 3/7
ミズーリ 3/7 バージニア 2/29(R)
6/3(D)
アーカンサス 5/23 モンタナ 6/6
カリフォルニア 3/7 ネブラスカ 5/9 ワシントン 2/29
コロラド 3/10 ネバダ 5/21(D) ウエストバージニア 5/9
コネチカット 3/7 5/25(R) ウィスコンシン 4/4
ワシントンDC 5/2 ニューハンプシャー 2/1 ワイオミング 3/10(R)
フロリダ 3/14 ニュージャージー 6/6 3/25(D)
ジョージア 3/7 ニューメキシコ 6/6
ハワイ 3/7(D)
5/19(R)
ニューヨーク 3/7
ノースカロライナ 5/2
アイダホ 5/23 オハイオ 3/7
イリノイ 3/21 ノースダコタ 2/29(R)
インディアナ 5/2 3/7(D)
アイオワ 1/21 オクラホマ 3/14
日付の・印は党員集会
(R)  共和党
(D)  民主党
カンサス 4/22(D)
5/25(R)
オレゴン 5/16
ペンシルバニア 4/4
ケンタッキー 5/23 プエルトリコ 2/22(R)
ルイジアナ 3/14 4/2(D)
メイン 3/7 サウスカロライナ 2/19(R)
メリーランド 3/7 3/9(D)
マサチューセッツ 3/7 サウスダコタ 6/6
                
アメリカに於ける地方議会の呼び名
ネブラスカ州だけ一院制であるが、その他はすべて二院制
上院はSenate
下院は26州でLegislature 19州でGeneral Assembly
    その他ほとんどの州ではHause of Representativeとされている。