平成11年9月8日     戻る

2000年問題を理解するための資料

「Y2K」とは、Year2Kiloの略称でコンピューターの2000年問題を意味する。コンピュータ
ーは1960年代に汎用化されたが、当時はコンピューターの記憶装置は極めて高価で、しかも
記憶容量が小さかったために記憶量を極力減らすことがプログラマーの課題であった。
そこで日付の西暦年を下二桁で表示する従来の習慣をそのままコンピューターに持ち込んだので
ある。これは単に習慣だけでなく、当時のコンピューターの標準規格であった。〔1995年頃
から4桁対応になった〕
専門家によると当時から2000年になると問題が発生することは予知できていたが、2000
年は遠い将来の話で、その時代のコンピューターが2000年まで使われないだろうと考えられ
ていた。その結果、現在使われているコンピューターの大半が2000年になると1900年と
誤作動し、各分野で大混乱が生じる危険性が取り沙汰されるようになったのである。
コンピューターの構成
コンピューターはハードウエアとソフトウエアから構成されている。ハードウエアとは機器本体
ことでソフトウエアは機器に指令するプログラムのことである。ソフトには大別してシステムソ
フトとアプリケーションソフトの2種類ある。前者はハードを動かすためのもので、後者のアプ
リケーションソフトは、ワープロや財務やゲームなどの応用ソフトのことである。
コンピューターの種類と数
一般コンピューターには下記の4種類があり、世界中に存在するそれぞれの数は
汎用フレームと呼ばれる「大型コンピューター」 約1,000万台以上
オフコンと呼ばれる「中型コンピュータ」
パソコンと呼ばれる「小型コンピューター」 約3億台
埋め込みチップと呼ばれる「マイクロコンピューター」 約5億個〔6万種〕

〔越智洋之監修「本当の2000年問題」〕

※コンピューターには総て日付機能が付けられているが、埋め込みチップにもかなりの部分に日
付機能を持ったものがある。3億台あるコンピューターの7〜80%が2000年未対応でトラ
ブルを起こす可能性がある。埋め込みチップは1〜5%が2000年未対応でトラブルを起こす
可能性がある。これがY2Kの最大の問題点である。

〔越智洋之・足立晋著「Y2K最新最終事情」〕

Y2K問題は進捗率を云々するのだけではなく、99%対応が完了しても1%の未対応が誤作動
を起こせば連鎖反応が起きる可能性があり大変な問題になる。100%対応と誤作動を絶滅する
ことは不可能であるとさえ言われている。

〔深野一幸著「2000年間題の本当の恐ろしさ」〕

アメリカ連邦政府は98年11月15日に対応状況報告で61%が完了したと発表。前年に比べ
27ポイント増えたと発表している。アメリカが必死になって対応していることがわかる。
1999年8月22日午前9時に何が起きたか?
カーナビゲーションシステムが誤作動を起こした日である。カーナビはGPS衛星(Global
Positioning System)の電波信号を使って衛星の場所を把握し、車の位置を割り出すシステムであ
る。GPSは運用が始まった1980年1月6日の週を1週目とし、2進法による「0」と
「1」信号の組み合わせによって、計10ビット(桁)まで処理できるが、1,024週目(2の1
0乗)に当たる8月22日世界標準時午前0時(日本時間午前9時)には、日付カウンターがゼ
ロ週目に戻るように設定された機種がある。この場合、GPSの受信機側が99年8月22日を
80年と誤認してしまうのである。カーナビの大手メーカー「パイオニア」は、誤作動の事実を
真っ先に公表した。98年2月に15億円を使い該当するカーナビのマイコンを無債で交換する
対応策を開始した。しかし、27万台出荷した該当機種のうち8月19日までに修理を終えたの
は14万8千台であった。利用者が特定できないことから現在使用中かどうかも判らないので、
22日は日曜日であったが450人を出社させ対応することにした。
メーカーの「ザナビィ・インフォマティクス」は当日743件の間い合わせがあり、435件の
ソフト交換の申入れがあった。(パイオニアの対応数は不詳だが通産省の発表した件数では4社
で3,100件)各社とも「地図が出ない」とか「車の現在地が違う」などの誤作動が発生した
が、幸い大事故を招いていないが、ユーザーヘの徹底の難しさを改めて浮き彫りにした。

〔8/24日経産業・9/1朝日〕

カーナビは単体として使われるが、コンピューターの場合はネットワーク化されているので、連
鎖反応は広範囲に起きる。まだ、Y2Kは元旦にだけでなくプログラムによっては違う日に発生
する可能性がある。カーナビでも同じことが起きている。
何が起きるのか?
予測される大きな問題
  • 電気、ガス、水道及び交通機関の制御機能で誤作動が起きたらパニックが発生する可能性あり。
    (電気が止まれば2000年問題以前の大間題が発生する。)
  • 石油、天然ガスの採取現場や輸送機関での誤作動は経済活動に大混乱を招きかねない。
  • 金融機関のATM、CDをはじめオンラインシステムに影響が出れば経済活動がマヒする。
  • 医療機関の機器類に誤作動や停止が起きれば直ちに人命に関わる。
  • 航空機は安全か?管制機能は安全か?軌道車のATSは安全か?信号は安全か?
  • ミサイル他の戦略兵器が誤作動を起こさないか?
予測される身近な問題
  • テレビ、ビデオ、炊飯器、フアックス、電話の交換システム、エレベーター、は正常に稼働するのか?
  • 自動車は安全か?
※カーナビはメーカーが問題を公開し無料で対策を講じたが、家庭電化製品等の問題についてメ
ーカーは現時点では一切対応を明らかにしていないのは何故か?
PL法が制定される前の製品について製造責任が問えるのか?ハードはともかくソフトの製造
責任は問えるのか? Y2K対応をするのに小規模のオフコンでも1000万円単位の経費が必
要であり、金融機関や大規模なメーカーや商社では2桁の億単位の経費が必要とされているが、
この費用は誰が負担するのか?
問題発生時の賠償責任はどうなるのか?(JTBは年末年始の旅行取扱を停止した)〔訴訟の多
発が考えられる〕
「ノストラダムスの大予言」は科学的な根拠はないが、Y2Kはその規模の大小は簡単に予測で
きないが、決まった日時に必ず発生する。そのことを大々的に公表するとパニックが起きる危険
性(可能性)があるので厄介なのである。 対策の進捗に関して大企業と中小零細企業とでは格
段の差があるのは対策費が膨大だからである。9月5日放映の「サンデープロジェクト」でY2
K対策の一貫として日銀が4兆円の現金をストックしていことを金庫の中までテレビるカメラを
入れて紹介していた。日銀をはじめ銀行協会ではY2K対応は万全だとしながらも、このような
準備をしているのは、ローカルの金融機関で問題発生の可能性を否定していないからである。
1999年9月8日から起算すると2000年まで、後わずか113日しか残されていないので
ある。100%万全な物理的、時間的対策は我々が考えても不可能であることが判る。
しからば、どうするのかが問題だが、今から間に合う対応は「危機管理」だけである。政府の関
係筋はソフトなトーンながら、年末には少し余分にキャッシュを用意することや、停電対策、食
料の備蓄などを言いだした。銀行は対策を講じていると思われるが、少なくとも年末にはカード
で出し入れしている預金を、改めて通帳に記帳しておく必要はあるだろう。何故ならコンピュー
ターの誤作動で残高が消えてしまったら証明する方法が無くなるからである。
各種の保険関係はどうすればよいのか、証券取引をしている人はどんな対応をすればよいのか、
これぐらいのことを処理する時間としてなら113日で充分だろう。


Y2K問題の対策内容とそれにかかる費用(新聞掲載より抜粋)
●1999/8/28 (朝日新聞 朝刊)

日本銀行→4,552億円
当座預金取引のある関係金融機関を対象に危機管理計画を策定

● 1999/8/25 (毎日新聞 地方版)

・大垣共立銀行→約40億円
システムの更改、危機管理計画のまとめ、危険日への要員の配置など
・ 岐阜信用金庫 本年12月31日から翌年1月11日の間、手形の決済や給与振り込み、入金などの 取引を控えるよう求める文書を取引先に配布

● 1999/8/11(東京読売新聞 朝刊) 賠償訴訟問題

ソフトウエアハウス→1400万円
ソフトウエアハウスが食品会社に納入した会計ソフトを2000年対応に改修する費用

● 1999/6/15(日本経済新聞 地方経済面)

日立ソフトウエアエンジニアリング→4億3000万
危機管理計画を策定 顧客対応として自社製品の対応状況をホームページで開示する

● 1999/6/1(朝日新聞 朝刊)

群馬銀行→60億円 システムの更新

● 1999/4/21(朝日新聞 朝刊)

中国人民銀行(中央銀行)→50億元(約750億円)
年末の資金決済を12月30日に前倒しする。また、31日は社員全員出勤し 問題発生に備える

● 1999/2/27(朝日新聞 朝刊)

宮城県情報政策課→数億円単位 コンピュータの日付を今年の大みそかに設定し、越年テストを行う

● 1999/2/23(日本経済新聞)

九州電力→21億円 事務系システム(電気料金の計算・経理)や制御系システム(発電・送電)などの誤作 動防止のためのプログラム修正

● 1999/1/14(日経産業新聞)

旭硝子→4億円 危機管理対策にかかる費用(人件費も含め)

● 1998/11/27(日本経済新聞 朝刊)

アメリカ大手金融機関がY2K問題の対策投資を増額

・JPモルガン  2億5000万ドル→3億ドル(5000万ドル増)
・チェース・マンハッタン 3億ドル→3億6300万ドル(予定の2割増)
・バンカアメリカ   5億ドル→5億5000万ドル(5000万ドル増)
・バンカーズ・トラスト  2億2000万ドル→2億6000万ドル(3000万ドル増)

☆対策投資額は米産業界全体で1500億から2250億ドルに達する見通し

● 1998/8/17(毎日新聞 朝刊)

全世界で対策費用は 78兆円(米の調査機関によると84兆円)
日本国内では2兆4000億円

● 1998/7/22(日経金融新聞)

オーストラリア準備銀行(中央銀行)→16億豪ドル(870億)

● 1998/3/12(毎日新聞 地方版)

川崎市のコンピュータ→4億9000万円 職員人事などシステムの修正にかかる費用

●1998/2/26(日本経済新聞 朝刊)

米国ではY2K問題の対策費用を98年度の見積り(5億8000万ドル)より大幅に増額(2億 5000万ドル)した 。
老齢年金の支払いや、管制のミスによる航空機事故などといったトラブルにつながり かねないとの危機感を強める


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