平成11年9月17日   戻る

介護保険制度の概略とこれからの課題


寝たきりのお年寄りは全国で120万人、介護が必要な痴呆症は20万人、要
介獲の虚弱者は約130万人で合計270万人と推定されている。高齢化がピ
ークを迎える2025年には520万人まで膨れる。介護を必要とするお年寄
りが増加する一方、少子化の影響もあり介護する側の半数以上が60歳以上と
いう「老老介獲」が深刻化している。また、現在の福祉サービスが自治体が決
める「措置制度」のために利用者側がサービス内容を選び難いし、寝たきりの
お年寄りを受け入れる施設も不足している。負担も本人の収入に応じた「応能
負担」のために中高所得者層には負担感が大きい。入院したほうが安上がりと
の理由で長期にわたる「社会的入院」を招き医療費と医療そのものを圧迫して
いる。このような状態から社会全体で介獲の必要な人を支えていこうという発
想で介護保険制度が創設された。 (8/22・読売新間参照)


制度のあらまし
介護保険の
実施時期
2000年4月1日・介獲認定の申込み10月1日から
保険者(運営者) 市町村
運用財源 利用者負担は一割
自己負担以外の財源構成
公費 (50%) 国   25%(うち5%は調整交付金)
府県  12.5%
市町村 12.5%
保険料 (50%) 第1号被保険者   17%
第2号被保険者   33%
被保険者は
2種類
第1号被保険者  65歳以上
第2号被保険者  40〜64歳以上  
保険料の決定 各市町村が介護必要者数やサービスの水準等を勘案し独自に設定する
保険料の概略 全国平均で月額2,885円(厚生省集計・11年7月末)--決定後3年間は掘え置き
保険料は所得に応じて5段階に分けられる。〔所得別の負担増減措置〕
増減される人
 基準額×0.5  生活保護、老齢福祉年金受給者で住民税非課税者
 基準額×0.75  世帯全員が住民税非課税
 基本額     本人が住民税非課税
 基準額×1.25  本人が住民税課税で250万円未満
 基準額×1.5  本人が住民税課税で250万円以上
保険料の徴収 第1号保険者 年額18万円以上の年金受給者は年金からの天引き「特別徴収」
       それ以下の人や障害、遺族年金受給者は個別納付 「普通徴収」
第2号保険者 医療保険料に上乗せ〔扶養家族は支払い不要〕
       各種医療保険が料率決定
介護認定 保険サービスを受けるためには介護の必要度を認定してもらわねばならない
認定は申請に基づき市町村が決定・6か月毎にチェック[本人又は家族]
?85項目の聴き取り調査・特記事項 1次判定
?コンピューター処理は85項目のみ
?主治医の意見書 2次判定
?介護認定審査会


※自立〔非該当〕、要支援・要介護(5段階)の決定

介護サービス計画の作成 判定をもとに、本人の希望を聞き、いつ、どんなサービスを受けるか計画作成(ケアマネジャーが作成)[本人が計画を作成することも可、但し届け出の必要あり]
介護サービスの種類 要支援・要介獲?〜?段階
  • 自立の認定を受けた人は保険によるサービスは受けられないが市町村が従来から行っている移送、配食、寝具乾燥、散髪などの「独自サービス」は継続も可能
サービスの
中身
「在宅サービス」
ホームヘルパー、看護婦の派遣、デイサービス、ショートステイ、介獲用品購入など

「 施設サービス」
「特別養護老人ホーム」・・福祉施設、医療は健康管理に限られる
「老人保健施設」・・・・・病院と福祉の中間施設、リハビリなどを行う
「療養型病床群」・・・・・病院


介護保険制度の現時点における課題は?

保険料の徴収について
年収18万円未満の年金受給者および生活保護、老齢福祉年金受給者に対して保険
料の軽減措置はあるが、この人達は個別納付となっている。果たして保険料の徴収
が可能だろうか?滞納者は給付の時点で負担させることにはなっているが、国保会
計と同じく市町村の負担を大きくさせる可能性があるのでは?[基金での補填の道
あり]
市町村民税非課税の扱いの中で、同居親族の扱いが規定されているが、世帯分離を
招かないか?
★介護認定について
申請から30日以内に判定通知が行われるとのことで、そのための準傭は進んでい
るようだが見直しは6か月の周期である。主治医の意見の聴取が前置されていると
はいえ高齢者の体調は急変しやすいので頻繁に見直しが必要になる。そのための事
務量の増加に対応できるのだろうか?
介護認定に家族環境と所得が不問なのは正しいか?老人福祉法では「おかれている
環境に応じた措置」となっている。
★介護サービスの実施について
介護認定5の独居老人が介護サービスで在宅が可能だろうか?
介護計画が作成された後、(本人が計画することも認められている。)サービスの
供給側との日程及び時間調整は円滑に行くのか?
自己負担の上限と介護サービスの上限についての理解は進んでいるか?
最大の問題点は認定どおりの介護サービスが提供できるかどうかである。
在宅サービスは業者の参入もありマンパワーの整備が進んでいるようだが、施設サ
ービスは地域差があるとはいえ、かなり不足しているのでは?
特別養護老人ホームの現在の入居者と新たな入居必要者との調整は円滑にいくか?
5年間の経過措置が設けられているが、この種の施設は作れば作るほど待機者が
増える傾向があることから、認定は受けたが入居できない人が増えることは、
「措置」の場合と違って保険料との関係からも難しい対応となるのでは?
また、経過措置の5年間に高齢者の健康回復は大変難しく、入所者の退出は見込め
ないのでは?
認定の見直しで施設サービスから在宅サービスヘ切り換えられた場合、スムースに
対応されるだろうか?
介護サービスの実態把握の必要性と市町村の役割について
[苦情処理は国民健康保険団体連行会だけでは不十分である]
?サービスの質の確保・点検はどうするのか?[介護計画を実施内容の剥離は生じな
いか?]
?介護の実施は密室化しがちで、粗暴な扱いや虐待は起きないだろうか?
?痴呆、衰弱などで意志能力を失っている人への対策は?
?特定の業者に偏るサービス供給が起きないか?[入所との関係で懸念されるので
は?]これらの問題に対処するため保険者である市町村がNPOなどと協力して実施す
べきではないか?
現在、何らかのサービスを受けている人のうち、府下で約1万人位が自立と認定
されるようだが保険料は徴収される。この場合、市町村の独自サービスはどうなる
のだろうか?一般福祉サービスにも応分の負担を求めざるを得ないのでは?
※検討事項
2号被保険者の保険料率の上限[組合健保は9.5%、政管健保は9.1%、国保は金額設
定]が決まっているが介護保険料を加算すれば上限を突破する可能性あり。料率の
上限撤廃の問題が起きる。また、医療費から社会的入院などの介護に近い部分が分
離されるから、医療保険料そのものは下がることになるが、39歳以下の給与所得
者は直接恩恵を受けないのは問題ではないか?
広域対応で保険料は同一だが、サービスの差が出る。どうするのか、介護保険の実
施で市町村の力量が問われることになるだろう。



〔注一1〕


在 宅 サ ー ビ ス

分 類 サ ー ビ ス 内 容


平均利用額/月

要支援


    週2回の日帰りで通うサービスを利用する


6.4万円

要介護1


    毎日ホームヘルパーなど、何らかのサービスを利用する


17.0万円

要介護2


    週3回の日帰りで通うサービスを含め、毎日何らかのサービスを利用する

20.1万円

要介護3
  • 夜間又は早朝のホームヘルパー等のサービスを含め、1日2回のサービスを利用する
  • 必要性に応じて週3回の訪間看護を利用する
  • 痴呆の人は週4回の日帰りで通うサービスを含め、毎日サービスを利用する

27.1万円

要介護4
  • 夜間又は早朝のホームヘルパー等のサービスを含め、1日2〜3回のサービスを利用する
  • 必要性に応じて週3回の訪問看護を利用する
  • 痴呆の人は週5回の日帰りで通うサービスを含め、毎日サービスを利用する

31.3万円

要介護5
  • 夜間又は早朝のホームヘルパー等のサービスを含め、1日3〜4回のサービスを利用する
  • 必要性に応じて週3回の訪問看護を利用する

36.8万円



※この表は平成11年8月に公表した仮単価を基に在宅サービスの要介護度別の平均利用額を示したものです

[注−2]

訪問調査の質問85項目

1.左手のまひはありますか? 30.排便後の後始末ができますか 59.夜間不眠や昼夜の逆転がありますか
2.右手のまひはありますか 31.スプーンなどで食事がとれますか 60.暴言や暴行がありますか
3.左足のまひはありますか 32.歯磨きができますか 61.話を繰り返したり、不快な音を出したりしますか
4.右足のまひはりますか 33.顔を洗えますか 62.大声を出したりしますか
5.その他の部位にまひはありますか 34.髪をとかし整えることができますか 63.助言や介護をしようとしても抵抗しますか
6.肩は動きやすいですか 35.つめ切りができますか 64.目的もなく動き回ったりしますか
7.ひじは動きやすいですか 36.ボタンのかけはずしができますか  65.「家に帰る」等と落ち着きがないですか
8.股関節の動きやすさはどうですか 37.上着の着替えができますか 66.外出すると一人では戻れないですか
9.ひざは動きやすいですか 38.ズボンの着脱ができますか 67.一人で外に出たがり目が離せませんか
10.足の関節は動きやすいですか 39.くつ下の着脱ができますか 68.いろいろな物を集めたりしますか
11.その他の関節は動きやすいですか 40.自分の部屋の掃除ができますか 69.火の始末や管理ができますか
12.寝返りができますか 41.薬を正しく飲めますか 70.物を壊したり、衣服を破いたりしますか
13.寝た状態から上半身を起こせますか 42.預金通帳や小銭の管理ができますか 71.便をいじるなど不潔な行為をしますか
14.両足を床につけて約10分間座れますか 43.ひどい物忘れがありますか 72.食べられない物を口に入れたりしますか
15.床につかなくても約10分間座れますか 44.周囲への関心がありますか 73.周囲が迷惑する性的行動がありますか
16.両足で約10秒間立てますか 45.眼は普通に見えますか 最近2週間に以下の医療を受けましたか
17.5メートル以上歩けますか 46.耳は聞こえますか
18.ベッドから車いすなどへ移乗できますか 47.何らかの方法で意志を伝えることができますか 74.点滴の管理
19.座った状態から立ち上がれますか 48.介護者の指示に反応しますか 75.中心静脈栄養
20.片方の足で約1秒間立てますか 49.食事時間などの日課がわかりますか 76.人工透析
21.浴槽に出入りできますか 50.自分の生年月日や年齢を言えますか 77.人工肛門の処置
22.体を洗えますか 51.直前のことを思い出せますか 78.酸素療法
23.床ずれはありますか 52.自分の名前を言えますか 79.人工呼吸器
24.床ずれ以外の皮膚疾患はありますか 53.今の季節がわかりますか 80.気管切開の処置
25.片手を胸元まで持ち上げることができますか 54.今いる場所がわかりますか 81.疼痛の看護
26.食べ物を飲み込めますか 55.物を盗まれたなど被害的になることがありますか 82.経管栄養
27.尿意の自覚はありますか 56.作り話をして周囲に言いふらすことがありますか 83.心拍などのモニター測定
28.便意の自覚はありますか 57.幻聴や幻覚がありますか 84.床ずれの処置
29.排尿後の後始末ができますか 58.泣いたりして感情が不安定になることがありますか 85.導尿カテーテル

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