平成11年7月         戻る
住民番号制とは何か

住民基本台帳法改正案をめぐる議論の検証

住民基本台帳法改正案は平成10年3月に提出されたが、「国民総背番号制」につながる といった反発もあり、金融再生法案の処理を優先させるため審議が1年以上も先送りされていた。 平成11年の4月13日の本会議で趣旨説明と質疑が行われ本格的な審議が始められた。
〔平成11年6月15日衆院は通過、現在参議院で審護中・7/14〕

わが国の「番号制度」に関する経過

住民基本台帳法改正で番号付与はどうなるのか?

住民基本台帳は現在すでに全国93%の市町村でコンピューター管理されている。しかしシステムが独立しているため行政区域を超えて利用できない。
〔金融機関のコンピューターシステムにも同じ間題がある〕

改正案のあらまし

以上の4情報とコード番号を市町村ごとにデーターべ一ス化し都道府県と指定処理機関(全国センター)をネットワークで結ぶ 。
※厚生省が年金番号システムを97年1月から実施〔国会審議はまったく経ず省令で導入〕
社会保険庁が所管する番号システムで「基礎年金番号」と呼ばれているが、これは2
0歳以上の全国民が対象で、4情報に加えて加入年金の種類、婚姻関係、扶養関係、
所得、勤務先などの情報がすでに管理されている。
※コンピューター文化の普及に背を向けることは時代遅れであり、電算システムを活用し
た事務処理の合理化は避けて通れない。個人情報の保護(プライバシーの保護)との整合
性が間題である。現在開会中の国会で可決されても(自自公が合意)3年以内に制定する
とした「個人情報保護法」の成立が前提となる。




主要国における納税者番号制の概要

番号の種類 適用業務 付番者数 人口 付番機関と
根拠法
実施期日
アメリカ 社会保障番号
雇用者番号
ともに〔9桁〕
 税務、社会保険、
年金、兵役など
3憶8千百万人
〔累積〕
2憶6千3百万人 社会保障庁/
社会保障法
内国歳入法典
社会保険1936
税務
1962
カナダ 社会保障番号
〔9桁〕
税務、失業保険 3,153万人〔累積〕 2,961万人 人的資源開発省/
失業保険法
失業保険1964
税務1967
デンマ|ク 統一コード
〔10桁〕
税務、年金
住民管理
全住民 523万人 内務省中央個人登録局/
個人登録に関する法律
1968/4/1
スウェ|デン 統一コード
〔10桁〕
税務、社会保険 
住民管理
全住民 883万人 国税庁/人口登録制度に関する法律 1968/1/1
ノルウェ| 統一コード
〔11桁〕
税務、社会保険
住民管理
全住民 436万人 登録庁/人口登録制度に関する法律 1970/1/1
イタリア 統一コード
文字と数字の組み合わせ
税務、諸許可 約5千万人 5,719万人 財政庁/納税者登録及び番号に関する大統領令 1977/1/1
オ|ストラリア 統一コード
〔9桁〕
税務、所得保障
約l,250万人
1,805万人 国税庁/税制改正法 1989/1/1



主要国における付番の名称

アメリカ
SSN(Social Security Numbers)
TIN(Taxpayer Identifiction Numbers)
カナダ
SIN(Social Indentification Numbers)
北欧方式
PIN(Parsonal Identification Numbers)
イタリア
TFN(Tax File Numbers)




改正案 住民票に番号、ネット化(住民基本台帳法案Q&A)
発行年月日 1999年6月19日
媒体(紙誌) 朝日新聞朝刊
紙面      2
Q.住民基本台帳法の改正案が参院に送られたというけど、そもそも住民基本台帳って何なの?
A.住民票をまとめたものだよ。99%の市区卿町村はコンピューター管理しているけビ、ネットワーク化されていないから、いまは、登録している以外の自治体で自分の住民票をとることはできないんだ。
Q.改正案はそれをどうしようというの?
A.まず、すべての図民の住民票に異なる番号をつける。住民票に記載してある情報のうち、住所、氏名、生年月日、性別の四つの情報だけをコンピユーター入カし、全国の市区町村とつながるネットワークに載せる。都道府県を通じて、公益法人の全国セン夕一(指定情報処理機関)にそれらの情報は集められる。
Q.どんなメリットがあるの?
A.全国どこの自治体でも自分の住民票がとれる。あらかじめ定めた16省庁の92事務に限って、中央省庁は全国センターから情報の提供を受けることができる。例えば恩給の給付や共済年金の支給などの手続きだが、これまでは生存確認や住所異動など、いちいち市町村に照会しなけれぱならなかったけど、その手間が省ける。行政効率が良くなって、経費節減になると自治省は言っているよ。
Q.何が間題なの?
A.生まれたばかりの赤ちやんも含めて全国民に番号がつくのは初めてだ。ネットワーク化されているから国にすれば利用しがいがある。だが、この番号をもとに様々な行政機関が保有する個人情報が集まれば、国が国民の情報を管理、監視する「国民総背番号制」につながりかねない、と野党は指摘している。
Q.国民総背番号制って何なの?
A.1970年代初めに政府は「統一個人コード」の導入推進を打ち出した。各省庁の持つ個人情報を、統一のコード番号に集め、管理する考え方だ。でも、野党や市民団体が「あらゆる情報が一元的に管理されるのは危ない」と反対して断念した。80年代には「グリーン・カード」(少額貯蓄等利用者カード)で同じような議論があった。
Q.法案ではどうなっているの?
A.中央省庁も92の事務以外にはアクセスできず、利用範囲を広げる場合は法改正が必要だ。各省庁の情報は全国センターに楽まることはなく、全国センターのコンピューターから十把ひとからげに情報を得ることはできない仕組みだ。民間の利用も禁じている。
Q.それじゃ安心なの?
A.個人情報がいつの間にか収集、加工、利用される情報管理社会が到来する、という指摘もある。最近も京都府宇治市で住民基本台帳のデータが流出し、インターネット上で販売される事件が起きた。だから、個人情報保護法(仮称)の制定が先決だ、と野党は主張している。
Q.自民、自由、公明の三党は、施行は個人情報保護法の制定が前提だ、という修正のうえで衆院では法案に賛成したんだね。
A.そうなんだ。ただ、実効ある法律になるかどうか分からない。民主、共産、社民の三党が「順序が逆だ」と反発して、参院で徹底審議を求めているのもそのためだ。



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