平成10年6月       戻る 

ダイオキシン問題を考える

基礎知識 ごみに関する資料と実態 ごみ処理法の種類 今後の計画と問題点

ダイオキシン対策と府県行政の関わりについて       松室猛の提言!

【基礎知識】

★ダイオキシンとは?

塩化有機化合物で、ポリ塩化ジベンゾーパラオキシン(PCDD)とポリ塩化ベンゾフラン(RCDF)をまとめてダイオキシン類と称する。
無味、無臭の固体でほとんど水に溶けないが、脂肪などには溶けやすい。
元々、地球上にはほとんど存在しないもので、人間が合成しうる最高の毒性をもつ化学合成物である。

★ダイオキシンの発生源は?

現存する地球上のダイオキシンの90%前後はゴミの焼却過程で発生すると推計されている。
塩化ビニール類を燃やすと、ダイオキシンが多く発生するが、紙を燃やしても含まれている漂白剤の燃焼によりダイオキシンが発生する。
特にゴミ焼却炉内の温度が上がりきっていない状態の不完全燃焼時に多量に発生が認められることから、800度以上の高温で炉を連続運転(連続焼却)しないと発生を防げない。

ダイオキシンの発生とゴミの処理方法との因果関係が大きいために、この対策としてゴミ処理のあり方が問われている。

【関係用語の解説】

ng(ナノグラム)
ナノは単位の一つで10億分の1のことをいう
pg(ピコグラム)
ピコは単位の一つで1兆分の1のことをいう
PPT
濃度を表す単位で、1兆分の1を意味する。
たとえば、1g当たり1pg含有していれば1PPT。
TEQ
毒性等量。ダイオキシン類は多くの異性体を持ち、それぞれの毒性の強さが異なる。異性体の中でも最も毒性の強い2.3.7.8-TCDDの毒性を1として、各異性体の毒性等価計数(TEF)の積をもとめ、これを総和したものをダイオキシン類濃度のTEQ換算値という。
旧ガイドライン
平成2年に厚生省が示したゴミ焼却施設のダイオキシンの基準
 〃  適用
平成2年の基準に従って設計された施設
  〃 非適用 
平成2年の基準以前の設計で平成4年までに稼働した施設
新ガイドライン
平成9年1月に厚生省が「ゴミ処理に係るダイオキシン類発生防止等のガイドライン」を策定(新ガイドラインによる排出規制基準は下記)
 〃緊急対策
80ng−TEQ/N?(すべての施設で80ナノまでに抑制を義務づけ)
 〃恒久対策
新設炉 0.1ng-TEQ/Nm3(旧ガイドライン適用炉)
 〃緊急対策
既設炉 0.5ng-TEQ/Nm3(旧ガイドライン非適用炉−連続運転)
    5ng-TEQ/Nm3(旧ガイドライン非適用炉−間欠運転)


【ゴミに関する基礎資料】

大阪府のゴミ発生量・・4,513,000トン/年(平成8年度)

ゴミ処理に関する諸外国との比較

日本
アメリカ
ドイツ
カナダ
排出量
5,030万トン
20億700万トン
4,350万トン
2,320万トン
焼却量
焼却率
3,800万トン
74%
3,290万トン
16%
1,100万トン
25%
120万トン
5%
施設数
1854
148
53
17
施設当りの
焼却量
56?/日
610?/日
568?/日
193?/日

【ゴミ分別収集の実態】

8種 〔可燃〕?普通?第1(家具類)?第2(布団など)?第3(紙類)
〔不燃〕?第1(家電製品)?第2(陶器類)
〔資源化ゴミ〕?缶・ビン?ペットボトル
2市町 門真市・熊取町
7種 ?可燃?粗大?不燃?資源ゴミ(缶・ビン)?トレイ?ペットボトル?廃電池 1市 四条畷市
6種 ?可燃?不燃粗大?ビン・ガラス?缶?古紙・古布?電池他有害物 2市 豊中市・守口市
5種 ?可燃?不燃?粗大?資源ゴミ?有害危険ゴミ 12市町 豊中・吹田・八尾・松原・
箕面・東大阪・泉南・交野・島本町・豊能町・太子町・
美原町
4種 ?普通?粗大?ビン・缶?紙布他 15市町 岸和田・池田・高槻・枚方・茨木・寝屋川・大東・羽曳野・摂津・高石・藤井寺・
能勢町・忠岡町・岬町・
河南町
3種 ?普通?粗大?資源ゴミ 13市町村 大阪市・堺・泉大津・貝塚・泉佐野・富田林・河内長野・和泉・柏原・大阪狭山・
阪南・田尻町・千早赤阪村

table1

市町村における資源化量の状況

                     (平成8年度)

table2

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ゴミ処理の方法にどんなものがあるか?

?焼却

ストーカー炉
反転ストーカー(扇形の箱型金物)で送り込む方式
流動床炉
炉底に砂を敷き、熱風を吹き上げ燃焼させる方式
階段炉
プッシャーにより送り込む方式
溶融炉
コークス、重油などを燃焼として焼却の後、灰を溶融し、スラグ化(石あるいはガラス状にすること)する方式
ガス化溶融炉
加熱によりガス化分解させ生成したガスを高熱燃焼させ溶融する方式

★日本はゴミの74%を焼却処理しており、焼却方式も多様である。現時点では、大型炉はストーカー炉方式(焼却温度800度)が多く、中小炉は流動床炉が多い。能勢の焼却炉は流動床炉である。

溶融炉方式(焼却温度1200度以上)は進んだ施設だが、設備費が高価で、燃料を用いることからコストがかかる。但し、スラグは再利用が可能であり、体積が減り可搬性が高い(埋め立て処分費が削減される)

ガス化溶融方式は前段の焼却段階で燃やさず(酸素を供給せず)、蒸し焼き状にしてガス化したものを高温で燃焼させ溶融する方式。コストがかかるが、サーマルリサイクル(熱利用により発電等)が可能である。

?ゴミ燃料化方式(RDF−Refuse Derived Fuel)

ゴミを乾燥させ、添加物を加えて圧縮し固形化する方式。燃焼させないので、煙、灰などは出ない。しかし、あくまで中間処理でしかなく、燃料として燃やす必要がある。燃焼方法によってはダイオキシンが発生する可能性がある。〔RDFは燃料とは認められておらず、依然ゴミである〕

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厚生省の通達と方針〔平成9年5月18日・通達173号〕

焼却炉の規模を可能な限り300?/日とし、最低100?/日の全連続式路を設置できるように市町村を広域ブロック化する方針。
―広域化計画を平成9年度中に策定すること、やむを得ない場合は10年度でも可―

広域化計画の問題点

ごみ処理は市町村固有の事務であり、府県が直接処理に関わることは法的、財政的に問題がある。
財政力の弱い市町村では、複数の自治体が共同で焼却場を運営している(一部事務組合)ケースがあるが、広域的に処理するためには数々の問題がある。

【問題点】

?他の市町村で発生したごみを自分の市で焼却処理することに対する抵抗感。
多くのパッカー車(ごみ収集運搬車)が、自分たちの居住地域を通過することに対する拒否感。

?既存の施設に多額の投資をしているが、その施設をどう扱うかの問題点。

?各市町村でごみの減量化、分別収集を啓蒙しているが、他市で処理することによりリサイクル、減量化などの施策が形骸化する傾向が出てくる。

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【ダイオキシン対策と府県行政の関わりについて】

ダイオキシンは人間が合成しうる最高の毒性を持つ化合物であるが、その90%前後はごみの焼却過程で発生することが判明している。

大阪府豊能郡では焼却場周辺で許容基準をはるかに超える土壌汚染が判明し、現在焼却場は使用中止となっている。しかし、ゴミは毎日発生しており、緊急措置として隣接の池田市、箕面市、豊中市の焼却場で分担して焼却処理に協力しているが、早急に焼却炉の再開のための手だてを講じなければならない。

ゴミ焼却施設で、ダイオキシンの発生を現行の許容範囲に改善することは技術的に不可能ではないが、自治体の財政力との関連で大変難しい問題がある。資料の部でも記載したようにゴミ焼却は市町村固有の事務であり、市町村の責任で処理しなければならないが、高度燃焼処理や焼却残灰の溶融処理などはランニングコストからしても単位自治体の財政上の能力を超える負担となってくる。厚生省はこの問題の解決のためにごみ処理の広域化計画を早急に策定するように府県に指示しているが、そのためには解決しなければならない数々の問題がある。

大阪府下においても隣接する複数の市町村が連携して共同処理をしている事実がある。

★広域的取組を行っている地域と施設

  • 豊中市伊丹クリーンランド(豊中市、伊丹市)
  • 四条畷市交野市ゴミ焼却場
  • 柏羽藤クリーンセンター(柏原市、羽曳野市、藤井寺市)
  • 南河内清掃施設組合(富田林市、河内長野市、大阪狭山市、美原町、太子町。河南町、千早赤阪村)
  • 泉北環境整備施設組合(泉大津市、和泉市、高石市)
  • 岸和田市貝塚市清掃工場(岸和田市、貝塚市)
  • 泉南清掃工場(泉南市、阪南市)
  • 泉佐野市田尻町第2事業所(泉佐野市、田尻町)
  • 豊能郡美化センター(豊能町、能勢町)

このように自治体の枠を超えて広域的に取り組む方法を地方自治法で「一部事務組合」と呼ぶが、率直に言って財政力の弱い自治体が共同している姿がここにあるが、既存の施設を持つ単一の自治体が、これから新しく一部事務組合を作り、新設炉をつくる場合には数々の問題がある。
その主なものとしては、

?多額の投資をして建設した既存の施設(ストック)をどうするのか?
?複数の市町村のゴミを一カ所に集めることにより、ゴミ運搬車の通過に対する忌避感をどう解決するのか?
?高度燃焼処理をするとはいえ、各種公害の発生が皆無ではない大規模焼却施設をどの場所に設置するのか?

 などなど数多くの問題を解決しなければならない。


【松室 猛の提言】

地球環境に多大の影響を及ぼすゴミ焼却に伴う公害の除去は緊急課題であるが、前述のごとく、市町村単位では高度処理は財政的に困難と言わざるをえない。さりとて、広域的取組が難しいとすれば問題解決はできないが、ここで府県の取組が問題となる。現時点で府県はゴミ焼却施設の建設や管理運営に対する指導助言やゴミの減量化や分別収集、再資源化の推進に関して市町村と連携をしているが、如何に市町村固有の事務とはいえグローバルな観点での環境保全のために、府県として更に前向きの取組を検討しなければならない時期に来ている。

平成10年5月21日に開催された大阪府議会の商工農林常任委員会(環境問題所管)で、府議会として初めてこの問題を公式に議論をした。委員会における論議の中心は豊能地区のダイオキシン汚染土をどうするのかであった。処理の方法も重要ではあるが、所詮は対症療法でしかなく、今後の問題として発生源対策が最重要であることを指摘をした。

汚染土の処理について、焼却施設の法面が汚染度が一番激しい地域であり、とりあえず施設内のゴミをストックヤードに仮置きをし、次なる汚染地区の表土は府立城山高校の実験農場に囲いをして収納することとなった。その後の最終処理方法については現在検討中である。

問題は発生源対策であるが、抜本的な解決策を講じるには2つのシステム上の問題がある。1つは処理方法に関する技術的なシステムについてであり、2つ目の難関は行政のシステムに起因する問題である。

ダイオキシンの発生抑制については、技術的には現時点でもほぼ完璧にクリアーされているが、厚生省のガイドラインをクリアーするための設備投資とランニングコストが大きいために、単位市町村の財政力ではとても賄いきれない問題がある。すなわち技術面での問題点は財政上の問題を除けばクリアーできるが、2つ目の行政システム上の問題点とは、府県が焼却処理に直接関われない法律上の制約がある点である。

厚生省の通達では、発生源対策として大規模焼却施設(300?/日)を設置し、広域的に処理することにより発生源の絶対数を減らし、集中管理することを指示しているが、広域処理は他府県はともかく、大阪府の地理的現状からくる問題と前述した忌避施設特有の拒否反応など、きわめて難しい問題がある。

そこで、今後の処理法式としての提案であるが、厚生省も取り上げているとおり、ゴミの固形燃料化(RDF)が考えられる。市町村固有の事務であることからも、市町村の責任において分別収集されたゴミを1次処理としてRDF化し、可搬性と貯留性を持たせた上で府県が、府域をゾーン設定して搬送に関する忌避感を取り除き、ゴミを焼くのではなく、RDFを最終処分する方式をとるべきだと考える。

RDFは単なるゴミとしてだけでなく、燃料としての利用も推進すべきであるが、RDFを焼却してもダイオキシンが発生するので高度焼却処理などの管理の必要性はある。

高度燃焼処理の技術的な方法として、「ガス化溶融方式」が諸外国では本格稼働しているが、この方式の優れている点は、ごみを蒸し焼き状にしてガス化し、そのガスを燃焼させることにより残灰やその他金属などの不燃物を溶融させる点である。