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大阪府の財政が破たんの危機に瀕しています。間題は何故こんな状態になったのか、このまま推移すればどうなるのか、これからどうするのかについてご一緒に考えてみたいと思います。
大阪府の財政の現況を文章にするよりも「表」と箇条書きするほうが判りやすいので下記の如くまとめてみました。 その要点を記しますと、最大の原因は不況による税収の大幅ダウンと大都市圏特有の行政需要に原因があることがわかります。 民間企業は不況のなかで、必死の思いでリストラを断行していますが、役所には「親方日の丸」と「ぬるま湯」的な体質があることは残念ながら事実です。特に架空出張や飲食費をめぐる不当支出などはその典型的なケースで、間題点の最たるものは、善きにつけ、悪しきにつけ、前例と慣習を尊ぶ風潮があることです。 不当支出も以前からの慣習を引き継いだものだから特に罪悪感がなかったものと思われます。不当支出は管理職に弁償させ決着を付けましたが、現在の財政危機はこれらを含め「無駄を排する」程度の対応ではどうしようもない規模なのです。 現在の地方自治体の税財政制度が制度疲労をおこし従来のシステムでは対応できない根本的な間題点を露呈しています。
地方交付税制度は地方の均衡ある発展のために必要な制度ですが、大都市圏の行政政需要に対応できていない間題点があるのは厳然たる事実です。 別表が示すよう大阪府がこれほどの経済力を持ちながら準用再建団体(破産状態)になるとすれば制度上の欠陥と言わねばなりません。しかし、忘れてならないのは制度上の問題だけではなく、時代の急速な変化に的確な対応をしなかった責任は、行政、議会、国民の三者に等しくある点です。 数年前から「新しい時代には、過去の経験則で明日を構築できない」と言い続けてきました。政冶に先見性がないのも事実で、議会が総与党化しているなかで首長の人気取り政策が横行し、それに追従する政党や時代に即応した政策の見直しや改革を先送りしてきた「つけ」が、いよいよ廻ってきたのです。 誰しも負担が増えることや行政サービスの低下を喜びませんが、新しい時代にふさわしいシステムを構築するためには痛みを分かち合うことも当然必要となります。 今こそ勇気を持って府民が担うべき役割と行政の守備範囲を明確にすべきだと考えています。 |
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国 税 | 国庫支出金など |
単位・億円
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府 県 分 | 市町村分 | ||||||||||
所得税 | 法人税 | 消費税 | 合計 | 国支出金 | 交付税 | 小計 | 国支出金 | 交付税 | 小計 | 合計 | 還元率 |
18,318 | 13,469 |
3,881
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35,668 |
3,850
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809
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4,659 |
6,046
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1,245
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7,291 | 11,950 |
33.5%
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歳入減:法人2税の急激な落ち込み 最盛期である平成元年度の54%の水準
経常収支比率:9年度決算見込み112.0%(全国平均は86.7%[H8年度]) |
大阪府の 財政の特質 |
人件費:平均年齢が高いため、職員一人当たり給与月額の上昇を押し上げ |
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公債費:ここ数年、毎年300億円を超える伸び | |
単独建設:数次にわたる経済対策により、7年度までには大幅に増加(H8年度からは抑制・S62/H10→1.7倍) | |
一般施策:S62年度と比べH10年度当初では老人医療330億、制度融資595億、私学助成166億円など伸びが顕著 |
平成10年度大阪府当初予算
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危機の中にある大阪府財政府財政は、ここ数年にわたる急激かつ大幅な府税収入の落ち込みが、財政の対応力を超えて進行した結果、毎年巨額にのぼる財源不足をまねき、必要な政策さえも打ち出しにくいという、文字通り危機的な状況に立ち至っている。
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府税の実質収入 | 平成10年度(7月試算)ではピーク時の平成2年度と比較して、3,474億円の減 |
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うち、法人二税
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平成10年度(7月試算)では、平成元年と比較して、3,824億円の減、52.4%の水準 |
府の歳出は、一般職員をはじめ、小中高の教員や警察官の人件費や、借入金の返済に充てる公債費など、義務的な経費の占める割合が高くなってしまい、府税収入を大きく上回っている実情にある。
※平成10年度・・・府税の実質収入(1兆739億円)<人件費(1兆160億円)+公債費(2572億円)=1兆2732億円
今後10年間、特段の対策を講じながった場合、平成11年度は4,950億円、最大は平成14年度の6,250億円もの財源不足が生じると試算している。
現在の財政危機を克服するとともに、そのことを通して「明日の大阪づくり」に向けて、新たな時代の要請に柔軟かつ的確に対応できる、弾力的でしかも足腰の強い行財政改革を行い、スリムで効率的な府庁をめざすとしている。
《府政に求められる役割の精査》
⇒限られた行政資源の効率的な配分を行うため、市場経済視点も踏まえつつ、本当に「府攻にしかできないこと」なのかどうかを厳しく精査し、施策を選択《直接的なサービス提供・企業が活動しやすい条件の整備ヘ》
⇒多様な選択が可能な社会の実現に向けて、民間諸活動との連携を強めつつ、必要なルールづくりや情報提供、活動のコーディネート、府の持つ既存資源の活用などを含めた、府民・企業の自立的な活動のための条件整備にシフト《府民の満足度を尺度に》
⇒行政の透明度を高めて、行政サービスの利用者である府民の満足度を尺度に絶えず点検を行い、無駄のない利用者本位のサービス提供に努める
1.経常収支の改善に向けた取り組み
(1)組織・機構の見直し⇒府税事務所の統廃合など
(2)職員の削滅⇒平成11年度から20年度までの10年間で総計7000人 (一搬行政2200人、教育職員4800人)
(3)早期退職制度の拡充⇒対象年齢の引下げ(50歳以上→45歳以上)
(4)給与⇒平成11年4月1日以降の普通昇給を2年間延伸/特殊勤務手当ての全般的見直し
(5)施策経費の抑制・一搬施策⇒30%、建設単独事業⇒50%カット
・個別の主な見直し⇒府単独の私立高校の授業料助成の一部見直し/府単独の医療費公費負担事業の一部見直しなど
2.公の施設の改革
3.指定出資法人の改革
(1)統廃合の推進⇒法人数は、平成13年度までにおおむね2割程度削減
(2)役職員の見直し⇒常勤役員数は、平成13年度までにおおむね2割程度削減/府OBの退職手当ての廃止
4.主要プロジェクトの取扱
(l)主要な施設整備に関するプロジェクト⇒平成13年度までは凍結
(2)面的開発プロジェクト⇒後年度において府の財政に負担をがけないよう、採算性の確保を基本に、事業の点検・見直し
5.市町村との新たな関係
(1)市町村優先の原則のもと、府と市町村が適切な役割分担
(2)分権時代を迎え、府は市町村の自律化に向けた支援、広域的な調整と補完的役割へ
6.自主財源の確保
(l)府税収入の確保に向けた取り組み⇒収入歩合(95.6%)の向上
(2)府有財産の売り払いの促進⇒低・未利用行政財産の売却促進
(3)使用料・手数料の見直し⇒府立高校入学金の改定(現行5500円)
《健康・福祉》
少子・高齢化の急激な進展の中、府民の「生活の質」の向上をめざし、利用者である府民が、信頼し納得できる質の高いサーピスを、適正な負担のもと身近かなところで利用できるシステムづくりをすすめる。《環境》
環境汚染に対応した「汚染者責任」を原則とするルールづくりや、排出抑制・環境監視の強化なと有害化学物質への取組をすすめるとともに、農空間や周辺山系など自然との共生による豊かな環境の創造をめざす。
《教育・文化》
一人ひとりの個性や創造性、豊かな心を育む教育を推進するとともに、児童生徒が明るく生き生きと学び、保護者や地域住民から信頼される活力ある学校づくりをすすめる。地域の文化的資源やこれまでのストックを有効に活用し、府民の自主的・創造的な活動を支援するソフト重視の生活文化政策をすすめる。《産業・労働≫
大阪経済の高度化と内外における競争力の向上を図るため、企業活動を支えるソフト・ハードの魅力的な「ビジネスインフラ」の整備を推進する。雇用対策の重点化や産業構造の変化に対応した人材確保・育成支援を図る。《都市整備》
緊急性・重要性の判断のもと、事業の休止・中止を含む抜本的な見直しを行ったうえで、防災や福祉などの観点から良質なストックの形成を図る。また、既存のストックの有効活用と計画的・重点的な維持管理に努める
○地方税制の改善
⇒国から地方への税源委譲をすすめ、安定した税収が確保できるよう、地方税制の見直しを要請
○地方交付税制度の改善
⇒地方交付税制度が大都市圏特有の必要経費をまかなうには十分ではなく、実情に沿った交付税額確保の要請