Otona     2004      No.2
               


ダイヤモンドの分配■


算用数字1.2.3.4.5.6.7.8.9.0はアラビア数字と呼ばれていますが、
実はインドの人たちの考え出したものです。
それがアラビアを通じてヨーロッパへ伝わったもので、ヨーロッパの人たちはこれらをアラビア人が考え出したものと思い違いをして、アラビア数字と呼んでしまったものであることは、皆さんももうご存知のことと思います。

ところが、これらの数字ばかりではありません。
面白い数学的な考え方や問題がインドからヨーロッパへ伝わっています。
これらはインドの問題と呼ばれ、ヨーロッパの人たちは、インドの数学を大いに尊敬しています。
今月はインドの問題から次のお話を紹介します。

むかしむかし、インドのある王様が、いくつかのダイヤモンドを持っていました。
あるとき王様は、それらのダイヤモンドを、彼の王子全部に分け与えることにしました。
そして皆を集めて次のように言いました。

まず第一の王子は、1つのダイヤモンドとその残りの7分の1を取れ。
次に第二の王子は、残りのうちから2つのダイヤモンドと、そのまた残りの7分の1を取れ。
次に第三の王子は、残りのうちから3つのダイヤモンドと、そのまた残りの7分の1を取れ。
このようにして続けていけ。

さて、何人かの王子たちは、王様の言われるとおりにしてダイヤモンドを分けました。
そして、分けてしまってから、お互いのもらった分をくらべてみたら、なんとみんな同じ数だけのダイヤモンドをもらったことになっていました。

さて、王様の持っていたダイヤモンドは何個で、王子の数は何人だったのでしょう。

少々難しそうにおもえますが、中学で習った数学で解けますので、挑戦してみてください。

                                          (2004.1)



数あて遊び■


相手の人に、何かある数を考えておいてもらい、
それから出発して何がしかの計算をした結果を聞き、
その人の考えていた数をそくざにあてるという遊び、やったことありませんか?

ためしに一つやってみましょう。

  (1) 何か適当な数を考えて下さい。           (これを5としてみましょう)
  (2) ではその数を「3倍」して下さい。          (5×3=15になります)
  (3) 次にその答に「1」を加えて下さい。         (15+1=16となります)
  (4) では面倒でもその答をさらに「3倍」して下さい。 (16×3=48となります)
  (5) 最後にその答に、最初にあなたが考えた数を加えて下さい。 
                              (48+5=53になります)
  (6) 答はいくらですか。  ここで相手の人は 「53」と答えます。 
そうすると、そくざに、
  (7) 『ではあなたの最初考えていた数は 「5」でしょう。』
と答えて相手を驚かせるというのが数あての遊びです。
そのあて方は、最後の 「53の3をとってしまって5」 と言えばよいのです。

その理由は代数の心得のある人は明らかでしょう。
  (1)(2) いま、相手の考えた数を「X」で表すと、「3倍」で相手の人は、
     「3X」 を計算します。 
  (3) 「1」加えて下さいで、相手の人は、「3X+1」 を計算。
  (4) さらに「3倍」して下さいと言えば、相手の人は、
     「3(3X+1)=9X+3」 を計算します。
  (5) では、最後にその答にあなたが最初考えた数を加えて下さいと言えば、
     相手の人は、「(9X+3)+X=10X+3」 を計算します。
  (6) 最後に答はいくつになりましたかと聞けば、
     相手の人はこの、「10X+3」 を教えてくれるわけです。
したがって、その数から 3を引いて10で割ったものを言えば、相手の最初考えていた数「X」をあてることが出来るわけです。

ある数を考えて下さい。 
その数に 「1」を加えて下さい。 
その答を 「2倍」して下さい。 
その答に 「4」を加えて下さい。 
その答を 「2」で割って下さい。
その答から最初に考えた数を引いて下さい。
それでは答をあててみましょうか、えーと 「3」となったでしょう、という調子です。

この場合最初に考えた数が何であろうと、答はいつも 「3」なのです。      
                                          (2004.2)



■コラッツの予想■


「出る杭こそ伸ばせ」を合言葉に昨年からスタートした高校生の科学技術コンテスト
「ジャパン・サイエンス&エンジニアリング・チャレンジ(JSEC)」の入賞作6件の中から数学に関係する次の入賞作をご紹介します。

「コラッツの予想」という数学の問題があります。
ある数が奇数なら3倍して1を足し、偶数ならば2で割ります。
出てきた答が偶数であるか奇数であるかによって、同じ計算を繰り返すと、
どんな自然数から出発しても最終的には 「1」 になるというものです。

例えば、「10」の場合。
偶数だから「2」で割ります。 すると「5」です。 
「5」は奇数ですから「3倍して1」をたします。 今度は「16」。 
偶数だから「2」で割ります。 「8」です。
偶数だから「2」で割ります。 「4」です。
また偶数だから「2」で割ります。 「2」になります。
またまた偶数ですから「2」で割ります。
ほらっ、「1」になりましたね。

数学的な証明はまだ出来ていません。
成り立たないことを示すのはとても簡単なんです。
計算を続けても「1」にならない数(反例)を一つでも見つければいいのですって。
ただし、計算はやっかい。
比較的小さな数にも、27や31のように、100回以上の手順を要するものもあります。
千けたともなれば、スーパーコンピューターが必要な膨大な計算になると予想されます。

そこで、この高校生は友人たちのパソコンの空き時間に目をつけました。 
それぞれに仕事を割り振り、適宜データを交換しながら計算を進めていくソフトを独自開発したのです。
反例の有力候補として、2のべき乗から1を引いたメルセンヌ数に的を絞り、
常時10〜20台で計算を続けているそうです。

気候変動予測、地球外知的生命探査といった難問の解決に、
ネットワークでつながったコンピューターが共同で挑む「分散(グリッド)コンピューティング)」が注目されているとのことです。                            
                                          (2004.3)



ラクダの分配 1■


1月にインドの問題として有名な「ダイヤモンドの分配」の話を紹介しました。
今月は、またまた有名なインドの問題を取り上げてみました。

むかし、アラビアのある商人が、ラクダを17頭持っていました。

アラビアの商人にとっては、砂漠をこえて遠い国へ商売に行く必要がありましたので、そのため、ラクダはなくてはならぬものでした。
それを17頭も持っているというのは、そうとうな財産を持っていることになります。

さてこの商人が、年をとって死のうとする時、自分の3人の子供を枕元に呼んで、
次のような遺言をしました。

「自分は17頭のラクダを持っているが、そのうちの2分の1は長男に、
3分の1は次男に、9分の1は三男にやりたいと思う。
3人はそれぞれのラクダをもってしっかり商売をやり、いつまでも仲良く暮らすようにしなさい。」
こう言って商人は死んでしまいました。

そこで3人の子供は、お父さんのいうとおりにラクダを分けようとしたのですが、
これがなかなかうまくいきません。

ラクダが17頭いるのですから、長男がその2分の1をとろうと思えば17の2分の1で、8頭と半分ということになりますが、
まさかラクダを半分にして殺してしまったのでは、何の役にも立ちません。

次男も三男も同じ理由で困ってしまい、どうしても、お父さんのいうとおりにラクダを分けることが出来ずすっかり困ってしまいました。

この話を聞いたある年寄りが、 「よし、それならわしがうまくわけてやろう!」 
と言って、この3人の兄弟のところへやってきました。
                         来月号に続く       (2004.4)



ラクダの分配 2■


この年寄りは、自分のラクダを1頭つれて、この3人の兄弟のところへやってきました。
そして、そこにいる17頭のラクダに自分のラクダを加えましたので、
ラクダの数は18頭になりました。

そこでこの年寄りは3人の兄弟に次のようにいいました。
「長男は、2分の1だから18頭の2分の1の9頭をとりなさい。
次男は3分の1だから、18頭の3分の1の6頭を取りなさい。
三男は9分の1だから、18頭の9分の1の2頭を取りなさい。
これで3人とも、お父さんのいったとおりのラクダをもらったのだから、満足だろう。
これからは仲良く暮らすのですよ。」

さてこの年寄りは、長男に9頭、次男に6頭、三男に2頭のラクダ、
つごう17頭のラクダを渡した後残った自分のラクダを1頭つれて帰ってしまいました。
みんなはこの年寄りの頭の良いのにほとほと感心しました。


さて、この話には続きがあります。
それから数年たって、またラクダを11頭持っているある商人が、
死ぬとき、その3人の子供に次のような遺言をしました。
「自分は11頭のラクダを持っているが、その2分の1を長男に、その3分の1を次男に、その6分の1を三男にやる。」

ところがこのときも、3人の子供は、お父さんのいうとおり分けることが出来ずに
困ってしまいました。
そのとき、前の話を思い出したある男が、「よし、自分がうまく分けてやろう。」
といって、自分のラクダを1頭つれて、この3人のところへやってきました。

ラクダは11頭と1頭で全部で12頭になりましたので、次のように言いました。
「長男は2分の1というのだから、12頭の2分の1の6頭をとりなさい。
次男は3分の1というのだから、12頭の3分の1の4頭をとりなさい。
三男は6分の1というのだから、12頭の6分の1の2頭をとりなさい。」

さて、この人は長男に6頭、次男に4頭、三男に2頭と、全部で12頭のラクダをやってしまったのでなんと自分のラクダを1頭そんしてしまいました。

                                          (2004.5)



■キツネの魔法■



公式や定理は第一に覚えやすいこと(忘れにくいこと)、第二に使いやすいこと、
第三にそれを使うことによる効果が絶大であること、が大切です。

受験算数の本をぺらぺら立ち読みしていたとき、面白いアイデアで、
「メネラウスの定理」を小学生に教える方法が載ってました。
興味しんしんで早速買ってきました。   

「メネラウスの定理」は、本来ならば高等学校で学習します。
教科書や、参考書を開いてみると、メネラウスの定理について解説はあるものの、
高校生でさえ理解しずらい内容です。
そんな定理をそのまま小学生に教えるのであれば、通用するはずがありません。
それなりの工夫が必要です。 それでは、見事なアイデアをご紹介しましょう。

これから解説するのは、アイデアと工夫で完成させた小学生でもわかるメネラウスの定理、改め「キツネの魔法」の紹介です。
小学生に帰ったつもりでチャレンジしてみてください。
そして、「メネラウスの定理」をマスターしてみましょう。

STEP 1   キツネを探せ!

「キツネの魔法」の内容はともかく、
まずはどんなときに使うのか、
それを覚えましょう。
それは、右のような図形が問題に
出てきたときです。
これをよく見ると、
キツネの顔が見えてきます。
キツネの魔法という名が示す通り、
この魔法は図形の中にキツネが存在
するときに使えるワザです。

それではまず、キツネを探す練習から
入ってみましょう

キツネをクリック→

      





■キツネの通り道を記入せよ■


キツネの魔法は下図のように



 が成り立つと言う定理です。
 「まだ意味はわからなくてもかまいません。」
 この魔法をマスターするには、
 とりあえず左図のように
 矢印を図に記入できるようになることです。
 この矢印を
 「キツネの通り道」と呼んでいます。

■比の求め方(1)

■比の求め方(2)
下図のaとbの比を求めたいとします 下図のaとbの比を求めたいとします


まずは、キツネの顔をかいてみましょう


まずは、キツネの顔をかいてみましょう


すると、aとbの比はキツネの右(キツネから見て)の
耳の先端にかかっています


すると、aとbの比はキツネの左(キツネから見て)の
耳の先端にかかっています


矢印のスタート地点はキツネの鼻です
まずは、
キツネの鼻から先ほどの右の耳にむかいます


矢印のスタート地点はキツネの鼻です
まずは、
キツネの鼻から先ほどの左の耳にむかいます


右の耳に到達したら、
求めたい線分の比の部分を通っていきます


左の耳に到達したら、
求めたい線分の比の部分を通っていきます


すぐにキツネの鼻に戻らずに1度左の耳にバックします


すぐにキツネの鼻に戻らずに1度右の耳にバックします


そして、最後に鼻までいっきにジャンプします


そして、最後に鼻までいっきにジャンプします


これで、「キツネの通り道」の完成です。
ポイントは
「キツネの鼻・耳の順に ピョン・ピョン・ピョン・ピョン・バック・ピョーン」 です。
それでは「キツネの通り道」を記入する練習をしましょう。 右のキツネをクリック→




■問題に取り組もう■


図においてAD:DB=1:2、BC:CF=3:2です。 
辺AEと辺ECの比を求めましょう。




ma

まず、AEをx、ECをyとおき、「キツネの顔」を記入します



次に、「キツネの通り道」を図に記入します
キツネの通り道は 鼻、耳の順に ピョン・ピョン・ピョン・ピョン・バック・ピョ〜ン


後は、今の「キツネの通り道」の順に次のように式を書きます





式の結果は必ず1になります
なぜ1になるのかあまり気にしないで下さい
1になるというのがキツネの魔法(メネラウスの定理)なのです

先ほどの式をまとめると、次のようになります



ここで計算の結果が1になるということは
分母の値と分子の値が等しいということになります
ようは、「xの4倍とyの5倍が等しい」という意味ですから
xとyの比は5:4と求められるわけです

答 AE:EC=5:4
それでは練習問題にチャレンジしましょう!  右のキツネをクリック→





北海道の重さ?■


北海道の地図があります。

夏の北海道、秋の北海道、素敵でしょうね。
私はまだ北海道へ、一度も行ったことがないのです。 
定年退職後の夫と、ユックリまわろうと残してあります。
今月はこんな夢のあるお話?ではなくて
この地図を利用して、その北海道の面積を求めるには、どうしたらいいかという話なんです。

不規則だから、長方形の面積を求めるようなわけにはいきません。
こんな地図から本当に面積がわかるのでしょうか。

わかるのです。
正解は「重さを量る」です。

つまり、厚紙を使って、この地図と同じ形に切り取り、その重さを量ります。
また、別にこの厚紙で1辺が10cmの正方形(当然、面積は100cm2)の重さを求めておきます。
そして、「北海道の重さ」がその何倍になるかを調べるのです。
あとは、縮尺から計算すれば、北海道の実際の面積がわかるというわけです。

ええっ、本当?って言いたいですね!
疑わしいって方は、試してみて下さい。

                

           地図があれば、そのとおりに切り抜いた厚紙の重さを量って
           実際の面積を調べることができる                  
                                           (2004.9)




つり銭サギ■


近ごろ流行の「オレオレ詐欺」。 お年寄りの優しさにつけこんだ卑劣な犯罪です。
昔からあるのが、「そんなミミッチィこと、やりなさんな」と言いたくなる、つり銭サギ。
そのつり銭サギの特徴は

 ・よく聞き取れないほどの早口や片言でしゃべりまくる

 ・夕方薄暗く、しかも店番が老人の店をねらう

 ・5000円や1万円札などの大金をちらつかせて、おつりの計算を混乱させる。

といったものだそうです。

その一例をあげてみると、

 1、5000円札を見せながら、200円のタバコを買う 
               (値上がりしましたが、計算しやすいよう)

 2、店の人がタバコとおつり4800円を渡すと、800円をポケットに入れる

 3、4000円はそのまま置き、別のポケットから1000円札を出し

 4、はじめの5000円札と、おつりの4000円とポケットから出した1000円札とを
   合わせて「1万円札にしてくれ」 という

 5、タバコと1万円札を手にして店を出て行く

サテサテ? このお店はいくら損をしたのでしょう。

結局、サギ師は6000円出して10800円とタバコをもらったので、お店は5000円の損をしたわけです。

賢い?人が、この世の中 いつの時代もたくさんいるんですね〜
この知恵を他に使えないものでしょうか。

騙されるのはしゃくです。  皆さん、おおいに気をつけましょう。
                                           (2004.10)




■剣の極意■


剣豪と言えば、
宮本武蔵、塚原卜伝、柳生十兵衛などなど、数多くの人々が伝説的にあげられます。

「剣の極意」は、というと、「皮を切らして肉を切り、肉を切らして骨を切る」
であって、自分は無傷で相手を倒すようなことではなく、捨身の攻撃でなくてはいけない、という。
そして、最終的には、 「戦わずして勝つ」 が極意中の極意ということだそうです。

さて、昨年はNHKの大河ドラマに登場した宮本武蔵、
(私事で恐縮ですが、生まれたわが子を「触った」と表現した主人公配役の海老蔵が嫌いで、見る気を失ない全く見なかったのですが)
ある殿様に剣の極意を聞かれたが、そのときこう言ったとのことです。
「部屋のふすまの3寸(10cmぐらい)幅の敷居の上を歩くのは誰でもできる。
しかし、これが1間(約3m)の高さにあっても、同じ気持ちで歩ける心が極意である。」

これは、学校の数学のテストのときでも、自分の部屋で解く気安さで挑戦できる気持ちと言えます。
テストであがるようでは、まだまだ極意には程遠いようです。
                                          (2004.11)




■おこづかいの選択■


お正月が近づいたので、山田君はひそかに「おこづかい値上げ作戦」の計画を立てました。

「お母さん、もうじきお正月だけど、月1万円のおこづかいを、来年から値上げしてくれない?」
「そう、もう高3になる年だからねえ・・・・・・。 じゃあ2万円というのはどう?」 
                         (ちょっとあげすぎじゃないですかね〜)
山田君はこう提案しました。
「2万円もいいけど、僕は倍々と月々ふえるのがいいんだ。
''倍々こづかい''というのはどうかな。 一定でなくて楽しみがあるじゃない。」
「それでもいいけど、最初はいくらから始めるの?」
「1月が100円、2月が200円というのでどう?」
「エエッ! 初めは100円でいいの! お母さん助かるわ!」
               (まあ、100円からだって。 本当に山田君、いいの?)

話はうまくまとまったようです。  お母さんも山田君も、ともに内心ホクホクでした。
''二方両得''のような話でありますが、さてさて???  さてさて???

皆さんはどちらが得か、わかります?
そうなんです。
世のお父様方、おこづかいの値上げ、山田君に習ってみては?
ただし、夏までそのおこづかいの金額で乗り切れる自信がおありでしたら。 ね!

                                            (2004.12)