エコーを使ってハイドロリリースをしていて、最近になって気がついたことは、痛みは動くという事がはっきり分かるようになりました。
腰の痛みといっても決して同じ箇所が痛むのではなくて、少しずつ変動したり移動したりします。
又、単に腰が痛かったものが腰は良くなったが、今度は膝が痛み出したとか、頚が痛くなったとかします。
これらの病態はやはり背景にファッシア(筋膜、血管、神経などを含む支持組織)の存在があります。

身体を構成する筋肉や骨、関節あるいは皮膚や臓器と言った固有の組織だけではなくて、そういった組織をつなぎ合わせる支持組織があります。
それが将にファッシアです。実はファッシアは全身至る所に存在しますから、様々なところにファッシアの問題が生じてもおかしくないことになります。
私達はともすれば、腰が痛いとそこの骨や関節の状態をレントゲンやCT、MRIなどで調べてそこの問題点を解決しようとします。
でもそこにあるのは固有の組織です。例えば椎体だったり椎間板だったり、あるいは髄腔の狭さだったりします。
そうすると、痛みの問題点はその箇所をなんとかすれば痛みは軽減出来るだろうと考えます。
それで手術したり麻酔したりして痛みを軽減しようとしますが、そう簡単には腰部痛は治らないのです。
実は骨や関節を守っている組織があるのだとも云えます。
勿論筋肉もその中には含まれますが、筋肉そのものよりも筋肉と筋肉をつないでいる組織が重要になってくるのではないかと考えています。
その中には神経や血管が通りあるいはリンパ管も通ります。そしてそれらの組織が膠原線維を主体とした支持組織に包み込まれています。

エコーを使いながらハイドロリリースをしているのですが、神経周りや血管周りにある組織をリリースする事で痛みが楽になったり、
あるいは筋肉と筋肉との間の筋膜をリリースして痛みが楽になったりと、やり方は様々ですが、そうすることで痛みが軽減することが分かってきました。
勿論椎体や椎間板に対しては何もしていないので、椎体の変形や椎間板の変化は変わらないのですが、それでも痛みが軽減していくことがあります。

それと、リリースした箇所は痛みが楽になってもその隣に痛みが出たりする事もしばしば経験します。
腰部痛と行っても様々な組織が絡んできますので、痛みが一カ所に集中するとは限らないのです。
只患者さんいとっては同じような腰部痛と云う認識です。でも詳しく見て見ると微妙に違っていることがあります。
痛む場所が変わっていったりもします。痛む深度も変化します。あるいは腰から膝や頚にあるいは肩に痛みが移ることもしばしばです。

そう云う観点から考えて見るとファッシアの存在は痛みとかなり深い関係にある様な気がします。
東洋医学の経絡という概念も実はこのファッシアの考え方に似ている気がします。
トーマス・マイヤーズの考えたアナトミートレインという考えも、よく考えれば同じような考え方では無いかと思います。
つまり筋膜連鎖という考え方です。身体は筋膜連鎖で繋がっているのだというわけです。
テンセグリティーモデルという紐と棒で繋がった構造物があり、手でその組織を押しつぶしても、
すぐにバネのように元の構造物に戻ってしまうモデルがありますが、人体もそういった複雑なテンセグリティーモデルなのかもしれません。
そのモデルではある一部が変化すると、離れた箇所にそのひずみが伝わるという現象が現れます。
ファッシアは将にそういった紐の役割をなしていますし、骨や関節はその棒にあたる事になります。

 棒である骨や関節の障害もありますが紐の障害も考えられるのです。その紐の障害が将に筋肉やファッシアではないかと思っています。
ファッシは基本膠原線維で出来ていますから、いわば膠のような性質があって、温めると柔らかくなり、冷やすと固まります。
例えば、ファッシアを痛めたりするとそこは硬くなり易く、瘢痕化しやすくなります。
そうすると特にその箇所が冷えたりするとそこのファッシは硬くなって、他も部分のファッシアに影響を与えます。
そうすることで腰部痛などが発生する事もあるのではないでしょうか?
筋膜性腰痛という病名が健康保険にはありますが、将にそれが病態のような気がします。
でもその病態のメカニズムは非常に複雑です。様々な要因が考えられますが、要はファッシアの障害だと思うのです。

      


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