令嬢と苦学生
その2

今日は淑子さんは、女学校時代のお友達、高校からそのまま女子大へ進学した綾子さん、椎名さんとおうちのお庭でお茶会です。

「淑子さんは私たちの女子校から初めて帝大に行かれた才媛ですもの!私たちも鼻が高いわ!」
「まあ、綾子さんたら」
「そうそう、椎名さんは卒業したらお父上の会社の優秀な社員さんにお輿入れするって決まったのよ」
「まあ!椎名さん、おめでとう!」
「・・・淑子さんは卒業したら何になられるのかしら。私みたいな平凡なお嫁さんでは厭ァよ・・・末は博士か大臣ネ!」

お話トップに戻る 次へ

門扉が開いて、隣のお屋敷の賢一郎さんがやってきました。

「賢さん!」
「淑ちゃん!ああ、麗しのご学友方、お久しぶり・・・君達の声がかしましくて勉学に集中できないから、少し気晴らしにお茶会に交ぜてくれまいか?」

「ほうら、淑ちゃんは男勝りに物理なんか勉強してるから、女らしさを忘れちゃうんじゃないかと思って薔薇を持ってきたよ。・・・淑ちゃん、お嫁のもらい手がないと困るだろ、僕がもらってやるからさ。ハハハ」
「まァ!賢さんの意地悪!」

楽しそうに笑う賢さんを、綾子さんと椎名さんは目配せしながら黙って見つめていました。

綾子さんと椎名さんが声を合わせて言いました。

「「淑子さんは、礼府さんに恋をされていてヨ!!」」
「ンまあ!綾子さん、椎名さん・・・!!」

淑子さんは思わず真っ赤になりました。

お庭を散策しながら、令嬢達の話は尽きません。
「・・・それでね、礼府さんっていう方がね、私の疑問をとても素晴らしく解決してくださるの、こうやって数式を使ってね・・・」
「アラ淑子さんダメダメ、私たちには難しいお話は分からないワ」
「でも、私、淑子さんのお話から一つだけ分かったことがあるの」
「まあ、なァに?」