EYEWITNESS

 <前編>

 

 

 探偵として事件に関わることで、命を狙われている人を見る機会が何度もあった。

 皆殺されることに怯える。それはどんな人にも見られたこと。

 自分だって命を狙われたことは何度もある。

 でも今回は、もしかしたら本当に殺されていたかもしれなかった。

 

・・・・・・あいつがいなければ。

 


  

 

新一は自宅への道を歩いていた。

今日はある殺人事件のことで久しぶりに警視庁へと行っていた。

 

昨日5人目の被害者が出たという。

体中を刃物でめった刺しにされた遺体が、川沿いの草むらの中に放置されていた。

殺害方法はすべて同じ。被害者は若い女性ばかりだった。

なにひとつ証拠といえるものが残っていないため、犯人を特定できず、 困り果てた警視庁が現在は表向きは探偵を休業している新一を呼んだのだった。

しかしそれでも犯人を特定することはできなかった。

犯人は単独犯ではない。

そのことは警視庁で、使われた凶器が傷によって違うことから

すでに明らかにされていたが、新一にはさらに気づいたことがあった。

 

 

5人の遺体は両腕に抵抗できないように押さえつけられた痕があり、 最初に心臓を1突きされたあと、まるでうさばらしでもするかのように、 めった刺しにされていた。

おそらく最初に息の根をとめているのはプロの仕業だ、と新一は悟った。

最初の傷は惑うことなく確実に急所がねらわれていた。

それも比較的小さなナイフで。

そのナイフでつけられた傷はその1箇所だけだったのである。

 

(今回は犯人を逮捕するのがかなり難航しそうだな。)

 

人気のない道を新一は歩きながら溜息を1つついた。

 

廃ビルの近くまで来た時に、斜め前のちょうど道路をはさんで

向こう側の路地裏から飛び出してくる男が見えた。

月明かりのため、新一はその男の顔が見えた。

向こうも新一に気づき、お互いの目が合った。

その瞬間新一はなぜか嫌なものを感じた。

男は新一を睨むように見つめていた。新一は反射的に視線をそらした。

 

 

(なんだ?目つきのわりぃやつだな。それになぜか嫌な気分だ。

早々に立ち去ったほうがいいかもしれねえ。)

 

新一が再び歩き出そうとした時に後ろから車のクラクション音が聞こえ、

次に自分を呼ぶ声が聞こえた。

 

「新一じゃないか。また事件で呼ばれとったのかね?」

 

車の運転手は阿笠博士だった。

 

 

「あれ、博士?出かけてたのか?」

「ああ、用事があっての。今帰るところじゃよ。乗ってくかね?」

「ああ、悪りぃな。」

 

新一は車に乗る前に、もう一度反対側の道を見た。

そこにはもうあの男の姿はなかった。

 

(あいつ・・・なんだったんだ?)

 

ふとその疑問が浮かぶが次の博士の言葉で

そのことはすみに追いやられてしまった。

 

「そういえば、明日はキッドの予告日じゃったろ?」

「そうなのか?そういえば2課が騒いでいたような気がするな。

 それどころじゃなかったけどな。」

 

最近は組織を追うことに集中しているため、キッドの現場には行っていなかった。

 

(あ、でもあいつの暗号はおもしろいから、

今度行ったら暗号だけでも見せてもらおう。)

 

そう考えている新一の頭にはすでに先程会った男のことはすでになかった。

 

 

 

次の日新聞に6人目の被害者が出たことが載っていた。

その現場は、昨夜新一が謎の男と会った廃ビルであった。

しかし昨夜遅くまで調べものをしていた新一は寝坊し、 その記事を見ることもなく学校へと向かい、 放課後そのまま警視庁へむかうのであった。

 

 


 

ある高層ビルの屋上、そこに白い怪盗がいた。

獲物はすでに手の中。

いつものように満月へとかざし、そしていつものように溜息をつく。

宝石が展示してあったデパートはまだ騒然としているのだろう。

 

 

「今回も中森警部は相変わらずだったな。

 あ〜あ、最近つまんねえ。

 白馬はイギリスに帰ってるし、東の名探偵はまったく出てこないし。

 まあ、最近は警視庁に通ってるみたいだけどさ。連続殺人だったっけな。」

 

 

あの東の名探偵がコナンから元の姿に戻ったのは知っていた。

だからこそ本格的に彼と対峙することができると思っていたのだ。

しかし彼はキッドの現場はおろか、他の事件にも関わってくることはなかった。

まあ、裏では色々と協力しているみたいだが。

 

「ようやく遊べると思ったんだけどな。」

 

あの蒼い瞳に魅せられた。あの瞳と対峙するだけで胸が躍る。

クスリとキッドが笑った。

 

「少し会いに行ってみましょうか。今日も確か警視庁に行っているはず。」

 

そう言うとキッドは白い羽根を広げて屋上から飛び立った。

 


 

昨日と同じ帰り道を歩きながら新一は少し苛ついていた。

 

(くそっ!もう被害者が6人か!

 それなのになんの手がかりもつかめないなんて!)

 

ふと、何か思いついたようにその歩みを止めた。

 

(あれ?そういえば昨日の事件の現場・・・確かあそこで・・・・)

 

その時後ろから叫ぶ声が聞こえてきた。

 

「危ない!!ふせろ、名探偵!!」

 

 

 

空から飛びながら、新一の姿を捜していると、

警視庁からの帰りなのか、新一が歩いているのを見つけた。

 

(いたいた。さて、どうしようかな?)

 

その時、ふと新一の少し離れた後ろにもう1人いるのがわかった。

その男が持っているものを見たとき、思わず息をのんだ。

男が持っているのは拳銃だった。

 

そしてその標的は・・・・

 

(名探偵!?)

 

思わず叫んでしまった。

新一は驚いたようだったが、反射的に言われた通りにした時に、

銃弾が、新一の頭を掠めていった。

キッドは新一のそばへ降り立った。

 

 

反射的に言われたとおりかがむとすぐに何かが頭の上を掠めていった。

振り向いて、それが銃弾だとわかり、すぐに自分のおかれた状況を把握した。

ふと、目の前に白いものが降り立った。

それがなんなのかすぐにわかった。

 

「キッド!?」

 

どうしてここに?

 

「そんなことよりも名探偵、命を狙われる心当たりは?」

 

「そんなのありすぎてわからねぇな。」

 

それはそれは、とキッドは苦笑いをこぼす。

が、すぐに現れた人影に表情を凍らせた。

 

「まさか避けられるとはな。」

 

「!お前は・・・」

 

「やはり覚えていたか。」

 

その男は昨夜新一が見た男であった。

あの時感じた嫌なものは間違いではなかったらしい。

 

 

「名探偵?お知り合いですか?」

 

キッドが新一に尋ねるが、新一は男をにらみつけたままだ。

 

「まさかお前が・・・今回の殺人事件の犯人なのか?」

 

「なんだって!?」

 

男は楽しそうにククッと笑った。

 

「ああそうだ。まさか顔を見られたのが有名な名探偵だったとは思わなかったよ。」

 

「最初にとどめをさしているのはお前だな?

 あとはお前の仲間が切り刻む。

 なぜだ?なぜそんなことをする?動機はなんだ?」

 

新一は勤めて冷静に尋ねる。それに男はまた笑っていった。

 

「ほお、さすがだな。だが、あいつらは俺の仲間じゃない。

 暇だったんでね。付き合っているだけだ。

 まだ終わらせるつもりはない。だから、お前には死んでもらうぞ?

 ついでにおまえにもな、怪盗キッド?」

 

男の言葉に新一は怒りを抑えることができなかった。

 

暇つぶしだと!?ふざけやがって!?

 

ふとキッドが新一に近づき、そっと耳打ちした。

 

(え?)

 

”俺から、離れるなよ?”

 

「残念ですが、私も名探偵も、あなたに殺されるつもりはありませんよ?」

 

そう言うか言わないかのうちに、キッドは閃光弾を投げた。

眩しい光があたりを包んだ。

光がなくなると、そこにはすでにキッドも新一もいなかった。

 

「やってくれる。ククッ、おもしろい、今度の獲物は貴様たちだ。

 工藤新一、そして怪盗キッド。」

 

そう言うと、男は暗闇の中へ消えていった。

 

 

To Be Continued・・

01/10/29

 

 

後編

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長くなってしまったので分けました。
まだ前半ですが、こんなもので・・・どうでしょう・・・?(おそるおそる)

ありがとうございます、友華さまv
まさにリク通りの展開にもう舞い上がる気分です!
友華さんなら絶対に書けると思っておりました。
もうもう好みの展開!後編が待ち遠しいです!

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