ミステリアス ブルー 【2】
あ〜あ、家に帰りたくね〜なあ、と元太はランドセルを担いだ肩をしょんぼりと落とした。 「そういうわけにはいきませんよ、元太くん」 気持ちはわかるけど、と光彦は言う。 実は、今日算数のテストを返してもらったのだが、その点数が目もあてられないほどのものだったのだ。 まあ、自分でも出来たとは思ってなかったから、当然の点数といえばそうなのだが、それでも元太が落ち込むのは母親の怒る顔が目に浮かぶからで。 「僕だって、ホントは元太君と同じ気持ちなんですよ」 「ホント!だって、難しかったわよ、アレ。だから、先生も最悪の平均点だって言ってたし」 「・・・・・」 ありゃ、確かに難しいよな、小1には、とコナンも思う。 「コナンくんだって、100点とれなかったのよ!」 「ま、まあな・・・」 コナンはハハ・・と引きつったように笑う。 いくら小1には難しくても、高校生にはお遊びのような問題だったからコナンはわざと間違えたのだが。 まあ、あのくらいが普通だよな?とコナンは肩をすくめる。 「そっそうだよな!コナンの奴も100点とれなかったんだよな!」 歩美の言葉に元太は俄然元気を取り戻す。 一応、親たちの間では、江戸川コナンは頭のいい勉強のできる子供で通っているのだ。 そのコナンが満点をとれないテストで、自分がいい点を取れる筈などないのだ! 「よおし!俺、母ちゃんに隠したりせず、堂々とテストを見せてやるぞお!」 だいたい、隠し事など男のすることじゃねえよな! ハハ・・げんきんな奴・・・・ 「じゃな、コナン!」 「さようなら!」 「また明日ね、コナンくん!」 ああ、とコナンはいつもの交差点で3人のクラスメイトたちと別れた。 そして・・・・ ハア、と短く溜息をついてコナンは自宅ではない家に足を向けた。 今、彼は幼なじみである毛利蘭の家で生活している。 本来高校生である自分が、こうしてランドセルを背負って小学校に通っているこの現実はまるで悪夢のようだった。 しかし、元に戻る方法が見つかるまでは不本意ながらもこの状態を保っていなくてはならない。 工藤新一が生きていることがわかれば、蘭にも危険が及ぶ恐れがあるからだ。それだけは、絶対に避けなければならなかった。 コナンが同居するようになってから、毛利小五郎の名は名探偵として知られるようになった。それは全て高校生探偵として優れた能力を発揮していた工藤新一のおかげなのだが、当の小五郎はそのことに全く気づいていない。 突然眠ってしまい、目を覚ましたら事件が解決していたという状況を何度も繰り返しながら、不思議に思うことはあっても謎を解明しようと考えない小五郎のあの能天気さは一種の才能かもしれなかった。 だが、コナンは呆れることはあっても、自分の手柄を己のものとする小五郎に対してはなんのわだかまりもなかった。 そんなことより、事件を解決できずに迷宮入りにしてしまうことの方が、彼コナンには重大なことだったのだ。 「ただいまあ」 コナンが毛利探偵事務所のドアを開けた途端、聞き慣れたキンキン声が耳に飛び込んできた。 「今度こそ!今度こそ、わたしは王子さまに会ってみせるんだから!」 (なんだあ?劇の練習でもやってんのか?) そうコナンが思うのも当然で、事務所の中で王子さま云々を喚きたてているのは、高校の同級生でうるさい女の代表格である“鈴木園子”だったのだ。