【はじまり】
「ゲームをしないか?」 フラリとどこからか現れて声をかけてきた見知らぬ青年に、かけられた少年は訝しげに顔をしかめた。 「なんのゲーム?」 確かめるまでもなく、夕暮れの河原に座り込んでいるのは自分一人。 その青年が独り言を言ったのでなければ、答える相手は自分だけだ。 少年は、やっと8才になった小さな子供であるが、その目には思いっきり警戒の色が浮かんでいた。 尊敬していた父親を失ったばかりで、誰を見ても敵に思える時期であったから、それは仕方のない反応なのだが、青年に気にした風はなかった。逆に、その顔にはうっすらと楽しげな笑みが浮かべられていた。 「この世で最高のゲームさ。きっと君も気に入る」 「ふ〜ん・・・で、その最高のゲームに参加するのは?」 「君と僕、そしてもう一人・・・でも、その人物はこのゲームの最後のキーワードになるから、まだ誰とは教えられないけどね」 「たった3人でやるゲームかよ。それでホントに面白いのかあ?」 そう言って眉をしかめる少年に、青年はクスッと笑う。 「ゲームはまだ始まらないよ。このゲームがスタートするのは8年後だからね。その時、ゲームに参加したい者は参加するし、君がより多くの人間を参加させたいなら、そのようにしむければいいんだ」 「8年後っ?何だよ、それ〜!そんな先の話かよ!」 冗談じゃねえ!この兄ちゃん、俺をからかってんのか? 8年も覚えてられっかよ! 「そういうことなら、8年たってからまた誘ってくれよ」 少年がプイッと横を向くと、青年は困ったように肩をすくめた。 「そういうわけにはいかないなあ。今ここで君に返事をしてもらわないと、このゲームは成立しないんだ」 んなの、知ったことかと少年は口を尖らせる。 唐突に誘ってきて、すぐに返事しろなど理にあわないことは子供でもわかる。 「僕は君の可能性を見込んで、このゲームに誘いにきたんだ。できれば断ってほしくないなあ」 「え?」 青年のその言葉に少年は目を瞬かせる。 「もしかして・・俺のこと知ってんのか?」 「ああ、よく知ってるよ。僕は君のお父さんの大ファンだったからね」 「父さんの?」 少年は、初めてその青年に関心を持った。 長身だが、身体付きは華奢であまり健康そうには見えない。 だが顔立ちは、子供の目から見ても整っていてハンサムだ。 勿論、どう記憶を探っても初めて見る顔だったが。 「このゲームは世紀末に行われてこそ意味を成すものなんだ。きっと、君にとっても最高のゲームになる筈だよ、カイト君」 |