人通りのない路地裏に不気味にたたずむ黒い影・・・・ そのあしもとには、闇夜にも鮮やかに浮かび上がる紅た、黒い塊・・・・ 影は、その塊を冷ややかな瞳で一瞥し、そのまま闇の向こうに姿を消した。 |
|
〈前編〉 |
新一は、黙々と作業に没頭していた。 今、巷を騒がせている連続殺人事件・・・・。 これだけ、大胆な犯行を重ねているにもかかわらず、犯人に繋がる証拠がえられず、困り果てた警察が、彼の操作の協力を依頼したのだった。
「・・・何か判ったかね、工藤くん?・・・」 そう聞いてきたのは目暮警部。 新一は現場に向けていた瞳を上げ、警部に向ける。 「今のところは何も・・・・申し訳ありません。お役に立てなくて・・・。」 「いや、君のせいじゃないさ。気にせんでくれたまえ・・・。」 そういう目暮の表情はわずかだが失念の色が浮かんでいた。 新一は苦笑すると、いくつか警部に助言し、わかったことがあり次第、連絡をくれるように頼みその場を後にした。 その光景を見つめる怪しい視線・・・。
『・・・・・・・・・・見つけた・・・・・・・・・・』
目暮からの電話が入ったのは翌日の午後4時44分のことだった。 指定された部屋に入ると先にきていた目暮が席を勧めてくれた。 「それで、目暮警部。何か判ったんですか?」 挨拶もそこそこに早速本題を切り出す新一・・・・。 「あ、あぁ。それなんだが・・・被害者は全員、殺される数日前に宛名のない不審な手紙を受け取っていたことが判った。」 「不審な手紙・・ですか?」 「あぁ、これだ。」 そう言って胸ポケットから取り出したのは、どこにでもある白い封筒・・・。 「受け取った本人達は、子供の悪戯だと思って相手にしてなかったそうだ。」 目暮の説明を聞いている間も新一は便箋から目を離さない。 「他に判ったことはありますか?」 その言葉に目暮は小さく溜息をついて首を横に振った。 「残念ながら、今はまだここまでしか判っておらん・・・。わざわざ呼び出したのにすまんな工藤君・・・。」 目暮の顔には疲労の色が濃かった。 新一は苦笑して頭を振る。 「いえ、かまいませんよ。それより、また何か判ったら連絡してください。」 そう言って席を立つ。 「あぁ、君も何か気付いたら連絡してくれたまえ。」 「はい。もちろん。」
そうして、目暮と別れ警視庁を出た。 駅から歩いて家まで帰る。 それに書かれていたのもまた、見覚えのある数字の羅列・・・。 わざわざ向こうから来てくれるとは・・・・ね。
手紙には 15・13・01・05・14・15・13・15・20・21 01・15・09・08・09・20・15・13・09・23・15 09・20・01・04・01・11・21』 と書かれていた。これをアルファベットに書き換えてローマ字読みすると・・・ となるのだ。 ・・・・・・・・・・誰がそう簡単にくれてやるかよ・・・・・・・・・・ 新一は一層笑みを深くし、その瞳には澄んだ強い光を宿していた。
あの手紙が来てから今日で四日目・・・・・。 『ルルル・・・ルルル・・・・・・』 朝早くから鳴る機械的な音にこの家の主は覚醒を余儀なくされた。 ・・・誰だよ、こんな朝っぱらに・・・ 「・・・はい、工藤です・・・」 内面の不機嫌を押し隠して、電話に出る。 『あ、工藤くん?高木だけど・・・』 受話器の向こうから聞こえてきたのは、馴染みの刑事の声・・・。 『実は、二課の人からキッドの予告状の解読を、工藤君に頼みたいんだって・・・。それで今からこっちに来てもらいたいんだけど・・・来られるかい?』 泥棒には興味のない新一だが、キッドの予告状の暗号を解くのは好きである。
予告状をあっという間に解読してのけた新一は、今、古い廃ビルの屋上にいる。 今日はあの殺人犯の予告日・・・。 時計の針は、予告時間から一時間経ったところを示している。 「・・・・こんなところにいたのか・・・・」 ふいにかかった男の声・・・。 殴られたと認識したときには、すでに意識は闇の中だった・・・・。
麻希利さま!!おまたせして申し訳ありませんでした!! ありがとうございます〜v |