過激なデート 後編
「な。なに、この内容って」
給油の為に立ち寄ったサービスエリアにて、おもむろにモバイルを開き携帯に接続しようとした快斗の本音である。
「なにがしたいわけ?新ちゃんって」
<二時に通天閣前で待つ、捕まえに来い> こんなん、何を意味するって? 時計は今十二時半をさしているからぁ、間に合うんだけどさぁ。
過激だよ、俺の心がもたないかもしんない。
こんな事になるのなら言わなきゃ良かった。 のんびりだらだら過ごしていれば良かったなぁ等と泣き言を漏らしながら快斗はバイクを走らせる、仕掛けたのは自分だったのに逆転したなぁと思いながら。
「なんやねん、急に呼び出しおってからに」
事前連絡くらいしいやと、平次はのほほんと立っている相手を見た。 幾ら胸中で毒づき倒しても、当人に感づかせるようなヘマはしない。 愛する工藤の直々の呼び出しなのだ、疎かにしたらバチがあたる。
「わりぃな、服部」
ほかに大阪に詳しい奴が思いつかなくて。
「別にかまいわせんが、水臭いで工藤。なんで前にいわんのや?」
そしたら大阪で遊び倒す計画を立てとくのに。
「まぁまぁ、そう怒るなよ」
成り行きだもんなぁ、此処に来たのは。
「時間は何時までやて?」
「後二時間くらいだぜ?」
「二時間ゆーたらなにもできんなぁ〜」
「だから、買いに来ただけだって言ってんだろ」
「せめて、ワイに逢いたくてきたくらいはゆうてくれへんの?」
「聞く相手を間違えてるぞ、お前」
「〜取りあえず、メシを食おうか。そしたら連れてくわ」
脱力した平次に新一は笑っただけであった。
この自分を手に出来るのは、たった一人だけ。 彼しか、触れることは許さないから。
「哀君、新一は何処に行ったのかのぅ?」
見なかったかの?
「さぁ?でも夕方には帰ってくるわよ」
知っているけど、言えないわ。 だって、ねぇ・・・倒れたら困るじゃない。
「なんじゃ、居ると思ったのに」
折角、・・・なのに。
「あら、ケーキ?」
甘そうね・・・見るからに。
「悪くなるとなんじゃからと」
食べてもらおうと思ったのに・・・。
「帰って来たら私の元を訪ねるはずだから、置いておいて良いわよ?」
渡してあげるわ、ね。 どっちがついでなのか、解らなくなるけど。 でも、食べ物があった方が・・・黒羽君を懐柔しやすしい。 癖あるモノねぇ・・・。
時間前に辿りつき、何処に居るのかときょろきょろ探していた。 疲労を滲ませる見目麗しい男の出現に周囲はざわめき始める、一人なのかしらとの囁きが漏れる。
「<探せ>って言ったって、新ちゃんはぁ〜」
目立つから解りやすいんだけど、でも、早く逢いたいし。
「げっ、電波が込み合ってる」
嘘ぉ、此処まできて役に立たないわけ? ガーンとうちひしがれつつも、快斗は気を取り直して立ち上がる。
「最後に笑うのは〜」
俺なんだからぁ。
ん? この気配って・・・。
もしかして、新一? 自然に、走り出していた。
「さんきゅな、服部。おかげで助かったぜ」
此処まで送ってくれて助かったぜ?
「別に。用があるんなら呼び出してええし」
出来れば告白が嬉しいのだけど、と心底思う。 この状態では、便利屋ではないか・・・。
だけど。そんな淡い平次の思いは、目前から走って近づく相手によって打ち砕かれる。
「見つけた!新一」
「おー、タイミングがバッチリあってるぞ。快斗」
「なに呑気にしてんだよ、俺がどんなに焦って慌ててたか〜」
「ごたくは後で聞く、帰るぞ」
「〜〜〜ぅーん、納得出来ないっ!」
ぎゃんぎゃん鳴き続ける快斗を丸め込み、新一は艶やかにその場を去った。
呆然とそこに立ち尽くす石化した服部を残して。
大阪へ往復した疲れを微塵も見せずに詰め寄る快斗に、新一は紙袋を突き出した。
首を傾げつつ受け取り、中身を確認しようとするが怒られる。
「?」
「それを灰原に渡して、預かって貰ってる伝言を貰ってこい」
「哀ちゃん?」
「いきゃぁ解るから」
首を傾げつつも、快斗は促されるままにお隣りに向かう。
「あら、早かったのね」
しかも貴方が持ってくるなんて、きっとなにも知らされてないんだわ。
「預けてあるのを貰って来いって言われたんだけど」
新一は何を預けてったの?
「Kホテルのフロント、そこに<土井塔>という名前で部屋を手配してあるわ」
本人から詳しく聞きなさい、私の役目は此処までなんだから。
「へ?」
土井塔? なんでそうなるの?
「詳しい説明は工藤君に聞きなさいってば」
ほらほら、此処を出る!
あ、忘れてたわ。 この箱も一緒に持っていってよね、貴方のお腹におさまるのだろうけど。
強制的に締め出された快斗は、手渡された箱を大事に抱えて首を傾げつつも戻って。
かくかくしかじか・・・と、お隣で聞いた事を説明した。
「Kホテルか、洒落てるじゃねーか」
ま、一度は行くべき場所だよな。
「・・・新一、何を考えているわけ?」
今からホテル行くってのぉ? 時計の針、七時を回っているんだよぉっ!!!
くたびれただけなんですけどぉっ!と、不満不満の快斗に。 新一はペロリと舌を出して、そっと快斗の耳元に囁いた。
「過激なデートの締め括りがホテルってのは、不足か?」
こら、答えろ。
「・・・・・」
不満じゃないけど、蟠ってます・・・。 そんな顔の快斗に対し、新一はまた笑う。
「不満なら、ナシでも良いぜ?」
「・・・なんで、大阪に行ったのさぁ、白馬と・・・服部なんかと一緒に居るしっ」
「仕方ないだろ、アシが必要だったんだ。それに服部が地元だったからな、美味い店を知ってたし」
「・・・あの、中身のこと?」
「そ。あれは『てっちり』のセットなんだよ、ちょっとした取引でな?」
「・・・」
「突発だったのに、巧くいくもんだなぁ」
全然悪びれてない新一に、快斗は脱力しかけて・・・このままじゃイカンと思う。 流されまくってる、いつもはリードするのにっ。
「たまには、良いだろ?」
俺が作った流れに、乗ってもさ? 咄嗟に浮かんだ事で、かなり行き当たりバッタリだったからなぁ・・・。
「・・・降参するよ、新一の事ばかりを考えていた一日だからねぇ・・・」
これで別々になった日には、つらいだけだし。
「じゃ、行くか?」
「うん♪」
ああでも、『過激なデート』は暫く遠慮したいかも・・・。 そうひっそりと快斗が思うのは、無理もない。
それは、新一のみぞ知る。
終わり 7月8日
麻希利さんのサイトが40万HITを達成しまして、そのお祝いの品(?)なのです。 逆リクが『快新のデート』でした。 うーん・・・消化できてます? 新一に振り回される、快斗の図・・・かもね。
ありがとうございます、puchanさん!
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