その日は学校が休みの土曜日だったが、朝から忙しい一日になる筈だった。

 いつものように服部平次は早朝、毎日欠かしたことのない竹刀の素振りで汗を流した後、母親が用意した朝食を食べ、そして出かける用意を始めた。

 大きめのウェストポートに必要なものを詰め込み、腰に装着し、さあ出掛けようと靴を履きかけた時、上着のポケットに入れていた携帯が鳴った。

 多分、これから会う相手からだろうと確認もせずに平次は電話に出る。

 だが、聞こえてきたのは意外な人物の声だったので、平次はすぐには声が出てこなかった。

『服部?聞こえてるか?』

 いっこうに返事を返さない平次に、電話の相手がじれたように聞いてくる。

 ハッとしたように平次は瞳を瞬かせると、携帯電話を力一杯握りしめた。

「あ、スマン!聞いてるで!あんまし急やったからびっくりしてもて。どうしたんや?」

『ん・・実は、おまえに頼みたいことがあってさ』

「あ、すまん・・オレ、今日は用事があってこれから出掛けるとこなんや。急ぎなんか?」

 ああ〜〜、せっかく向こうから電話かけてくれたのにと平次は間の悪さに泣きたくなった。

 龍の蒼玉の件で新一の激怒を買ってから、ずっときまずさが続いていた平次である。

 あの時は黒羽に泣きついたが、それでも新一から何か言ってくることはなかった。

 純平からことの顛末は聞いてはいたが、それから数日テストや剣道の試合があって間があいてしまったこともあり、なんだかこちらから連絡を取り辛くなっていた。

 で、やっとその相手から電話がかかってきたというのに・・しかも、めったにない、自分に頼み事!

(なんでや〜〜こないな時に〜〜)

 本気で今日の予定を取りやめようかと思いかけた平次だが、しかしそうもいかない。

 テストや試合ならともかく、これはずっと気になっていた“事件”に関わることだったから。

 だが、次に相手が言った台詞で平次の迷いはあっさり霧散した。

『そうか。じゃ、しょーがねえな。地図見ながら大阪の街を歩くことにするぜ』

 は?

「工藤・・おまえ、今どこにおるんや?」

『始発の新幹線に乗って、今新大阪に着いたとこ』

待っとれ!すぐに迎えに行ったるわ!

 平次は携帯を握ったまま、脱兎のごとく家を飛び出していった。

 唐突に切れた携帯に、さっきまで平次と話していた少年は、面白そうにくくくと喉を鳴らして笑っていた。

 

 

 

 新大阪についた平次は、改札を出た所に立っている少年を見つけ駆け寄った。

 どんな場所にいようと、すぐにわかる印象を持つ相手であるから、探すのはそう苦労しない。芸能人かと思うほど、一種独特な華があるのだ。

 それは種類は違うものの平次にも言えることであるが。

「待たせてスマン!」

「いや、いいよ。思ったより早かったじゃんv」

 え?と平次の瞳が大きく見開かれる。

 黒いキャップを被った、ほっそりした印象の少年の顔は、かの東の名探偵そのものだったが、しかし決定的に違う印象があった。

 人をからかうような笑い方。

 しかし、人懐こい感じがするせいか、誰にも好かれる得な人間。

「あれ?黒羽?おまえも一緒やったんか」

「一緒って誰と?オレは初めから一人だぜ」

「・・・・・・・・」

 クスッと快斗が笑うと、平次はようやく自分の勘違いに気が付いた。

「電話かけたんは、おまえやったんかぁ!」

「そうだよ〜vお迎えありがとね、服部くん」

 平次は口をポカンと大きく開けて、にやにや笑っている黒羽快斗の顔を見つめた。

 顔だけではなく声も似てると思ってはいたが、まさかここまでそっくりとは思っていなかった。以前電話をかけた時は、それほどとは感じてなかったのだが。

「おまえ・・・わざと工藤の声を真似たんとちゃうやろな?」

 ちょっとだけね、と快斗が答えるとすぐさま平次はクルリと向きを変えた。

「ちょ・・ちょっと待ってよ服部!せっかく来てくれたんだから案内してよ?」

 ね?と快斗が言うと、平次は自分の上着の袖を掴んで引き留めている、大事な少年に瓜二つの少年をじと・・と見つめた。

「オレは忙しいんや。第一、なんで大阪に来たんや?まさか観光旅行とか言うんやないやろな」

「う〜ん、オレさあ、USJに行ってみたい・・・・」

 勝手に行けや、と平次はプイと横を向く。

「違うんだって〜!行ってみたいけど、今日はそういうんじゃないんだってば!」

「じゃ、なんや?何しに来たんや?」

「たこ焼きセットを買いに・・・・」

 はあ?と平次は目を丸くする。

「そないなもん、東京でも探せばあるやろ」

「けど、大阪で買ってこいって言うんだよお〜」

「誰がや?」

「新一に決まってんじゃん!ついでに服部からたこ焼きの作り方教わって来いって言われてさ」

 平次はジッ、と自分に泣きついている快斗を見た。

 新一の名前を出されては無視できない平次である。

 ほんま、ハマってるわ・・・

「なんで、おまえがそないなこと工藤に言われるんや?」

 おまえと一緒・・と快斗はガックリと平次の肩にもたれかかった。

「新ちゃんの怒りを買っちゃってさあ」

 もうこわいのなんのって・・・

「何したんや、おまえ?」

「・・・言えない・・・言ったら、今度こそ絶交される」

「おまえ、そんなひどいことを工藤にしたんかい!」

「人のことは言えないだろ、平ちゃん?」

 そうチロッと見られ平次はぐっとつまった。

「そのうち、おまえにもなんか言ってくるぜ」

「ほ・・ほうか・・・」

 まあ、何も言ってこないよりはマシかもしれない。

 しゃあないな、と平次は溜息をつく。

「つきおうたるわ。おまえには借りもあるしな。けど、その前に用事を片づけんとあかんねやけど」

 つきあうよ、と快斗はニコリと笑う。

「・・・・・・」

 平次はどうしようかと考える。

 全くの部外者である快斗をつきあわせていいものか。

「おまえ、日帰りか?」

「う〜ん、そのつもりだけど・・・どうせ明日も休みだし泊まってってもいいかなとも思ってんだけどさ」

「じゃあ、オレんちに泊まれや」

「え?いいの?」

「かまへん。せっかく来たんや、ゆっくりしていき」

 それに、工藤の近況も聞きたいしと平次は言った。

「いい奴だなあ、服部v」

 だから、自分たちの問題に巻き込みたくないのだと新一が言うのもわかる。

(だが、それは無理な話だと思うぜ、新一)

 既に服部平次は新一が巻き込まれた黒の組織のことを知っているのだから。

 しかも、平次は工藤新一に次ぐ探偵としての素質をもつ優れた男だ。

 隠していても必ず真実を突き止めるだろう。

「ほら、行くで」

 快斗はうんvと頷き平次の後についていった。

 

 

 

「ほな、やっぱり・・・」

「そいつに会うんやったら、ここに書いてある店に張っとったらええわ。けど、気ぃつけや、平ちゃん。かなりヤバそうやから」

「大丈夫。そない深いとこまで突っ込まへんから。おおきに、関さん。助かったわ」

 平次は待ち合わせていた新聞社のロビーで、馴染みの新聞記者からメモとファイルを受け取ると礼を言った。

「こんくらい別に構へんけど、いったい何調べてんのや?平ちゃんから頼まれた情報は、どう考えてもなんも繋がりがあるようには思えへんのやけど。それとも、なんかあんの?」

「繋がりがあるのかどうかはオレにもわかりまへん。ただ、ちょっと気になってたもんやから」

 このことは誰にも言わんといて下さい。

 特に親父には・・・と平次が言うと、関は分かってる分かってると笑って頷いた。

「けど、ホンマ危ない思うたら黙ってる訳にはいかへんから。それでええな、平ちゃん」

 ええです、と平次も頷いた。

 関は、まだベテランと言えるほどではない若い記者だが、勘が鋭く事件にくらいつく根性も人一倍なので暴走することもあるが、わりと府警では評判のいい新聞記者だった。

 本部長である父親と懇意だった古株の記者が可愛がっている記者ということで、何度か家に遊びに来たこともある。

 ほな、と平次は関と別れると、ロビーの椅子に座ってウォークマンを聞いていた快斗に声をかけた。

 もういいの?と快斗が立ち上がった時、平次に連れがいたとは知らなかった関はびっくりし、そしてチラッと見えたその横顔にあっという顔になった。

「ちょ、ちょっと待って、君!」

 関は出て行こうとする二人を慌てて追いかけた。

 そして、振り返った快斗の肩を掴む。

「君!え・・と、工藤新一くん?」

 確か、平次と東京の高校生探偵工藤新一が親しいと聞いていたので関はまずそう訊いた。

「あ、関さん、ちゃうって。こいつは工藤じゃ・・」

「じゃ、やっぱり黒羽くんかっ!」

 え?

 唐突に名前を呼ばれた快斗は瞳をパチクリさせる。

 なんで・・・?

「関さん、こいつのこと知っとんの!」

 平次も、まさか彼が快斗のことを知ってるとは思わなかったのでびっくりした。

 工藤新一と間違えたというならわかる。

 なにしろ双子といってもいいくらいそっくりな二人だから。

 で、名前が売れているのは新一だからそう思うのは当然であり、驚くことではない。

 だが、関はハッキリ“黒羽”と呼んだ。

「あ、ごめん。驚かせたね。実は俺、マジシャンの黒羽盗一氏のファンやったもんで」

 一緒に写真も撮ったことがあるんだと言って、関は上着の内ポケットから取り出したメモ帳から写真を抜き取って見せた。

 そこには、シルクハットを被ったマジシャンと幼稚園児くらいの男の子、そして昔の関なのだろう、学生服を着た少年が一緒に写っていた。

「高2の時、修学旅行の自由時間を利用して黒羽氏のショーを見に行ったんや。もうスゴイファンやったから感激してもうて、サインもらいに楽屋まで押し掛けたんやけど場所がわかれへんで弱ってたら、出会った小さな男の子に連れてってもろたんや」

 それが黒羽氏の一人息子だったと知った時は驚いたと関は苦笑する。

 快斗が持っている写真を覗き込んでいた平次は目を丸くした。

(まんま、コナンやんけ)

 今であれだけ似ているのだから、子供の時も当然似ていて当たり前なのだが・

 覚えてる?と聞かれた快斗は写真を持ったまま首を横に振った。

 まあ、小さかったもんなあ、と関は頭の後ろに手をやって笑う。

「けど、まさか平ちゃんと友達やったなんて驚いたわ」

「上京した時、同じ人にモデルにスカウトされて知り合うたんですわ」

「モデル?」

「結局、向こうの都合が悪ぅなってお流れになったんやけど」

「へえ〜モデル、ね。スカウトした人、かなり目が高い人やな」

 関が並んでいる二人を見てそう言うと、彼等は肩をすくめた。

「じゃ、行こか」

 うん、と快斗は頷き関に写真を返す。

「黒羽くん・・・俺はあの事故の時、君のお父さんの近くにいたんだ」

 快斗は瞳を細め、関の顔を見た。

「近くに?」

 ふっと快斗は微かに笑う。

「巻き込まれなくて良かったですね」

「・・・・・・・・・・」

 関は目を見開いたまま、新聞社を出ていく二人の少年を見送った。

 

 

「なんや腹減ってきたな。まだモーニングの時間に間に合うし、どっかで食べるか?」

「うんうんvオレ、朝早かったからさあ、軽いもんしか食べてないんだよね」

 さっきから、ちょっと腹の虫がくーくー鳴いていたのだ。

 ほな、と平次は目についた喫茶店に快斗と入る。

 大抵のモーニングはトーストとコーヒー、ゆで卵だが、彼等が入った店ではホットドッグにサラダ、コーヒーにヨーグルトまでついている豪華版だった。

 それでいて値段は普通のモーニングとさほど変わらないというお得さに二人はご機嫌になった。

「おまえの親父さん、マジシャンやったんやな。知らんかったわ」

「十年も前に死んじゃってるからな。服部が知らなくても当たり前」

「え?」

「ショーの最中に事故って死んだんだ」

「そう・・やったんか。じゃ、おまえ」

「うん。ずっと母子家庭。オレ、兄弟もいないしさあ」

「苦労してたんやな」

 そういう事情を全く感じさせない明るい快斗だったので、平次は全く気が付かなかった。

 苦労なんかしてねえよ、と快斗は首をすくめてクスッと笑う。

 平次はそんな快斗を見つめた。

 初めて会ったのは蒼の館だった。

 本人かと思うほど工藤新一に似ていたので、かなり驚いた平次である。

 で、その後事件が起こって・・・

(そうや・・あん時もう、こいつは工藤のこと知っとったんや)

 病院で再会した時、妙に工藤が黒羽に引っ付いてて妙やと思とったんや。

 あの事件の後、再び上京した平次はもとに戻っていた工藤新一と一緒にいた黒羽快斗と工藤邸でバッタリ会ったのだ。

 あ、バレちゃった、と悪びれず笑う快斗に平次は呆気にとられ、しばらく口もきけなかった。

 話を聞くと、新一に戻る際にコナンが黒羽快斗に協力を求めたのだという。

「しょーがねえだろ。オメーはいねえし、状況も緊迫してたんだから」

 だからと言って、自分からバラすかあ?

 平次には納得がいかない。

 なにしろ自分の場合、こっちが気が付かなければずっと騙されたままであったのだから。

 憤る平次に対し、オメーとは状況が違ったんだよ、と新一の態度は素っ気なかった。

 特別扱いか、と怒った平次だが、今の現状を知れば、もうそう思うことはない。

 結局、新一に振り回されているのは自分も黒羽も同じだからだ。

「なんか・・・同類相哀れむって目してんな」

「あ、わかるかあ」

 平次はニヤリと面白そうに笑う。

 快斗はヨーグルトを口に運びながら溜息をつく。

「ま、女王さまに勝とうなんてどだいムリな話だよね」

「やっぱ、おまえもそう思うか」

 それだけ執着しているのだ。

 あの名探偵工藤新一に。

 ・・・・・そういえば。

「あの瞳、あのまんまなんか?」

「うん。博士がわからなくするためにコンタクトを作ってたけど」

「やっぱりクスリの副作用なんかな」

「そうみたいだね。前みたいに急に倒れるようなことは少なくなったみたいだけどさ」

「・・・・・・・・」

 夜、月の光で蒼く光った新一の瞳。

 初めて見たときは、その神秘的な美しさに思わず目を奪われ言葉をなくした平次であった。

 これまで二度見たが、きっと何度見ても慣れないだろうと平次は思う。

「黒羽・・・おまえ、どこまで知っとる?」

 快斗は、ペロッと舌でスプーンについたヨーグルトを舐めながら平次の顔を見た。

「新一のこと?多分、おまえより一杯知ってるよ」

 だけど教えてやんな〜いv

 黒羽!

 目をつり上げる平次を見ながら、快斗はクスクスと笑った。

「それ、新一のために調べてんだろ?」

 快斗は先ほど関から受け取ったファイルが入っている袋を指さす。

「な・・・」

 快斗はウォークマンに繋がっているイヤフォンを、驚く平次の手に渡した。

 なんだ?と平次は瞳を瞬かせながらそれを耳につける。

「どう?」

 なにがや?と快斗に聞き返したその時、平次はギョッとなった。

 耳に付けたイヤフォンから、快斗の声と自分の声が入ってきたのだ。

「こ・・これ!盗聴器か!」

 ということは、どこかに仕掛けられている?

 平次は慌ててポケットを探ったり、パンパンと身につけている服を叩き回った。

 と、快斗はちょいちょい、と襟の後ろを指で指した。

 Gジャンを脱いだ平次は、襟の後ろにつけられた盗聴器を見つける。

「・・・・・なんのつもりや、黒羽」

 さすがに冗談ですませられることではない。

 きつい目で問いつめる平次に対し、快斗は平然と笑っていた。

「それも博士の作品だよ〜ん。こっちに来る前に博士がくれたんだ」

 いつつけたんだという愚問は口にしない。

 駅で会った時、既につけられていたのだ。

 いったいなんのために。

「黒羽・・・おまえ、ホンマにたこ焼きセットを買いに来ただけか?」

「理由の一つではあるね。もっとも、それはついでだけど」

「工藤が言うたんか」

 う〜ん、と快斗は小首を傾げ小さく唸る。

「服部さあ、小宮のこと調べてたろ?実はそいつ、オレたちもちょっとマークしてたんだよなァ」

「オレたち?」

 平次は眉をひそめる。

「そ。オレと新一」

「なんでや!」

「なんでって・・・服部は?」

 逆に聞き返された平次は、ムスッ口を尖らせた。

「ま、理由はおんなじだろうね」 

 快斗は、キュッと肩をすくめた。

「なんで、おまえが関わっとんねん?おまえが首突っ込むようなことやないやろ!」

「そりゃ、オレは探偵じゃねえもんな。けど、全く関係ないってわけじゃないんだよね」

 え?

「親父が事故で死んだって言ったろ?ホントは事故じゃなく、殺されたんだ」

 なんやて!

「黒ずくめの男たちにね」

「・・・・・・・・!」

「といっても、新一が追ってる組織とおんなじかどうかは、まだわかんないんだけどさ」

「黒羽・・・」

「というわけで、協力してるわけ。納得した?」

「ああ・・」

 ほんで、工藤はこいつに秘密を話したんか。

「なんで、おまえの親父さん殺されたんや?」

「さあ・・・知らなくてもいいことを知ったからかもな」

 しらなくていいこと・・・

「なんなんや、それは」

 さあね、と快斗は首を傾げ微苦笑を浮かべる。

 その顔が工藤新一とだぶり、平次は複雑な気分になった。

 つまり、平次が小宮のことを調べていることに気がついた新一が黒羽を寄越したというわけなのだ。

「協力するよ、服部v」

「そりゃ、どうも。けど、なんでオレが小宮のこと調べてるってわかったんや?」

「そりゃあ、同じ人間調べてたら、どっかでぶつかっちゃうもんでしょが」

「オレは気ぃ付かへんかったで」

 扱う情報網が違うんだよ、と快斗は言った。

「ほうお。大阪府警よりもええ情報網なんか」

「服部は使えないでしょ。本部長にバレたら、新一のこと話さなきゃいけなくなるし」

 図星を指された平次は仏頂面を見せる。

 快斗は内心、大笑いした。

(ホント、素直だねえv)

 怪盗という仕事をしている快斗だが、何故か身近にいる3人の高校生探偵のことは気に入っていた。

 怪盗キッドにとっては警察よりも侮れない敵。

 でも大好き!と快斗は嬉しそうに笑う。

「なに笑てんねん、黒羽」

 緊張感のない奴やな、ホンマ。

 つきあわせて大丈夫なんか、と平次は不安を覚えてしまう。

 平次から見た黒羽快斗は、殺伐とした事件など無縁な普通の高校生だ。

 それでいえば、蒼の館で一時行動を共にしたジャックスの美山光と変わらない。

「で、これからどこ行くの?」

「関さんに教えてもろた店が開くんは夕方やし、それまで大阪案内したろか?」

「え、ホント?ラッキー!」

 快斗は無邪気に歓声を上げた。

 

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