「なんだとー!駐車違反だあ?」
ジョウはこれ以上ないってくらい怒りの声を上げる。
「アホ抜かせ!俺はちゃんとエリア内に止めたぞ!」
『 ソレワぽりすぼっくすデオッシャッテクダサイ。モンクヲイワレテモ、コチラデワイッサイカンチイタシマセン』
駐車エリアの入り口にデンと立っている、円筒に赤い目をつけただけのロボットに冷たく言い返されたジョウは、カーッとなった。
今にもロボットにつかみかかろうとしているジョウを、タロスが必死になって宥める。
ここで問題を起こせば、さらに罰金の額が上がることになるのだ。
「まあまあ、落ち着いて下さいよ、ジョウ」
「そうよ、ジョウ。訳がわからないけど、ロボットにモンクを言ってもしょうがないじゃない。とにかく、ポリスボックスに行ってみましょうよ」
「・・・・」
ジョウはタロスに腕を掴まれたまま、悔しそうに歯がみした。
ロボット相手に喧嘩をしても仕方ないことや、仲間にかみついてもどうにもならないことはわかっている。わかってはいるが・・・
(くそっ!ふざけやがって!)
ジョウはタロスの手を乱暴に振りほどくと、さっさと歩き始めた。
「どこ行くの、ジョウ?」
「ポリスボックスに決まってるだろう!」
「でも、タクシーを捕まえるなら、反対の道に出た方がいいんじゃない?」
アルフィンがそう言うと、リッキーが慌てて袖を引いた。
今は逆らうな、というのだろうが、アルフィンにはその理由がわからない。
と、ジョウの足がピタリと止まる。
リッキーの顔が怯えて引きつる。
ゆっくりと振り向いたジョウの表情の険しさに、さすがのアルフィンもゴクリと唾を飲み込んだ。
「タクシーだあ!仕事をすっぽかされた上に罰金まで払わにゃならねえんだぞ!そんなの乗れっか!」
ジョウはそう喚いて鼻を鳴らすと、再び大股で歩き出した。
本気でポリスボックスなで歩く気だ。
「そんな〜歩いていったら日が暮れちゃうわよ」
思いっきり嫌な顔でアルフィンは文句を言う。
「な〜によ、ジョウったら!罰金くらいで目を血走らせちゃって!どうかしてるわよ!」
「ホントに知らないんですかい?」
「何をよ?」
「ここの駐車違反の罰金の額だよ、アルフィン」
「いったい、いくらなのよ?」
タロスがその額をコソッとアルフィンの耳に告げると、彼女の目が驚きに大きく見開かれた。
「うっそお〜!そんな高い罰金、聞いたことないわ!ぶったくりじゃない!」
「仕方ないよ、アルフィン。ここはまだ開発途中だもん。お金がいるんだよね」
「ひっど〜い!断然抗議しなきゃ!」
「ところが、ここのポリスボックスの管理は人間じゃなくコンピューターでしてね。融通なんかききゃあしねえ。機械相手に文句いってもしょうがねえと言ったのはそっちでしょう」
「ふに〜!」
押さえようのない怒りに、ジョウの腑は煮えくり返りそうだった。
仕事の依頼を受けたのは5日前。
丁度大きな仕事を終えたばかりで疲れきっていたのだが、人の命にかかわるのだと拝みたおされて、仕方なく依頼の内容を聞くためにこの惑星モアへとやってきた。
最初から、あまり気乗りしない仕事ではあった。
だいたい、依頼主さえはっきりしないのだ。
それが、約束の時間になっても依頼主の男は現れず、連絡もない。
それでも半日待って、結局すっぽかされた形のジョウは憤然となって店を出たのだが、なんと、乗ってきた車が駐車違反で持っていかれていた。
こうなると、もう怒りの極地である。
機械にいいわけなど通じないし、かといって罰金を払わなければ最低1年の免停をくらうのだ。ばかばかしいこと、この上ない。
おまけに、正式な契約はまだだからキャンセル料も取れやしないのだ。
こうなったら、今回の仕事の仲介人をとっつかまえて締め上げるしかウップンのはらし場所がない。
(あの野郎!覚悟してやがれっ!)
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