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BMWストレート6の魅力 それは既に言い尽くされた感があるが、高回転域におけるスムーズな吹け上がりと、演出された吸気サウンド さらには高密度感のあるエンジン回転フィールにつきる。 ボア径から来るガサツさが隠せない4シリンダーや、高回転域で水平方向の慣性振動を起こす宿命を背負ったV6 または、ピックアップ性能を犠牲にしてでも高級感を追い求めるV8では得ることのできない官能空間。 それがBMWストレート6のエクスタシーである。 多くのメーカーが合理化、流用性、居住性を重視してV6へひた走る時代にあって、直6に固執し巨額の開発費を注いだBMW。 その理由は、 各シリンダーをクランク角120度ごとに点火させ、吸排気時間をすべてのシリンダーで同等に保つことによって 理論的にゼロ振動を可能にできるのは直6だけだからである。 その歴史は1970年代のM20系エンジンからから始まる。 そして、80年代には、主要パーツに鍛造部品を惜しみなく投入し ”シルキーシックス”という冠を得た。 ところがライバルを意識して実用性に傾いた90年代には、M52のアルミブロック化によって直6路線を再度宣言したものの 雑誌などでは 「カタログスペックだけでは語れない」 などと絶対値の低さを揶揄された時代もあった。 しかしその後、M54では、ダブルVANOSやMS43によるDME(Digital Motor Electronics)を世界に先駆けて採用し、 数値上でも名実ともに高性能エンジンを完成させた。 それが20世紀最後の年、2000年であった。 また、このころまでの車台は、まだスチールフレームが主流であり、 M54がE46・E39・E53などのシャーシと奏でるシンフォニーは類まれな官能的サウンドを生み出し BMWの歴代ストレート6の中で、最もBMWらしい車を輩出したのである。 21世紀になっても、常に新技術を導入しつづけるBMWであるが 多くの車台がアルミ化してしまった今日、往年のビッグブロックを彷彿とさせる官能サンウンドは出せなくなったと感じている。 そんな世紀末の一瞬に実現した”M系スモールブロックの最終形:M54”とそれを搭載したモデルたち。 マグネシウム合金ブロックやバルブトロニック、直噴+ツインターボなど、新世代の技術が生み出す数値にはかなわない。 しかし、N54が N52で得た技術を捨ててアルミブロックに回帰し、84 X 89.6のボア&ストロークを採用した理由を考えると M54の基本設計の普遍性が感じられる昨今である。 新車でM54を搭載する最後のモデル:E53(X5)がまもなく終焉を迎えるが その価値を後世まで残すことを願ってやまない。 (2006年12月現在)
アルミ化されてしまったE60のエンジンフレーム ![]() その他のエンジンの特性 |
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