新しい朝





第十五話
〜成瀬side〜






「卒業おめでとう、亮」





唐突な祝いの言葉に、おれは片岡を見上げた。
片岡の生徒でなくなることで、ひとつの関係が終わるとあんなに不安だったのに、今は生徒でなくなることがほんの少しうれしい。
卒業し、成瀬亮として片岡と付き合える。
教え子であったという過去は消えないけれど、それでもこれからは、新しい関係が始まる。

「おれ、絶対合格するから・・・部屋の荷物整理しとけよな!」
急に襲ってきた照れのため、しまったと思いながらもいつもの調子で片岡に生意気な口を叩くと、シーツの中に潜り込んだ。
片岡に背を向け、身体をまるめ目を閉じ、4月からの生活に思いを馳せる。
バイトはなるべく夜のシフトは組まないようにしよう。
食事は絶対一緒に摂ろう。

それより・・・毎日一緒に寝るんだろうか?
身体・・・持つのか・・・?

なんて考えていると、背後から片岡の手が伸びてきて、ギュッと抱きしめられた。
そのぬくもりを感じると、毎日こんな感じも悪くないなって思う。
身体にまとわりついた手に手を絡めると、すうっと全身の力が抜け、睡魔が襲ってきた。
規則正しい寝息を後ろに感じながら、おれは片岡のぬくもりに包まれて、眠りについた。







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