祈 り



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手紙はおれへの感謝の気持ちにあふれていた。
苦しみばかりを与えたおれに、非難のひとこともなく、ただひたすらにおれのことを案じ、おれの幸せを祈る優の姿があった。
真っ白な便箋にポタリと雫が落ちた。








おれは・・・泣いているのか・・・・・・?








優の死を聞いても、友樹から真実を聞かされても、涙なんて出てきやしなかったくせに!








涙があふれて止まらない。
どんな思いで、この手紙を書き、友樹に託したのだろう。
そして、おれはなんて深く、優に愛されていたのだろう。
優は自分のことを忘れろと言う。
そして、おれに幸せをつかめと言う。
自分の道を歩んで行けと言う。





だけど、優、おまえより、おれのことを愛してくれる人間は、おそらくいない・・・・・・
そして、優、おれの幸せは、おまえとともに生きていくことなんだ・・・・・





優、おれはおまえにもらった音楽という世界で生きていく。
優と過ごした日々を思い出し、優のことを思って、たくさんの曲をつくるだろう。
そして、優の願い通り、たくさんの人におれの音楽を聞いてもらう。
音楽で、人々を幸せな気分にさせてみせる。
優とおれが一緒に作り出す音楽で・・・・・・








だから、ずっとおれを見守っていてくれ・・・・・・
ずっとそばにいてくれ・・・・・・永遠に・・・・・








おれはポケットからリングをとり出し、優からもらったクロスのチェーンに通した。
首からかける。ちょうど胸におさまるクロスとリング。
「これで、優はずっとオレの胸の中だ」
おれはいつでも、どんなときでも優を抱きしめて生きていく。
そして、優がおれを想ってくれていたように、優にもらったオルゴールのカノンの調べを聞きながら、毎晩優のことを想うだろう。





ギターを取り出す。
おれは歌う。
優の眠る場所に向かって、優の幸せを願って作ったあの曲を・・・・・・
優だけのために・・・・・・

                                              〜Fin〜






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