one summer day



<1>



やっぱ来るんじゃなかった・・・・・・
おれの頭ン中は後悔でいっぱいだった。
視線の先では、楽しそうに魚釣りを楽しむ麻野。
しかも満面の笑顔。
おれは大きく溜息をついた。








ことの起こりは、一週間前。
夏休みの課題であるグループ研究発表の資料作成に仲間と集まった時だった。
おれ以外は、狭いアパートでひとり暮らしの輩ばかりのため、仕方なくおれの家―正しくは麻野の家だけれど―に集合していた。
すると、バイトで少し遅くなると言っていた麻野が、ひょっこり帰ってきたのだ。
仲間は、おれが後輩の家に住み込んでいることは知っていたが、麻野とは初対面だった。
人見知りするきらいのある麻野はリビングに上がりこんでいるむさくるしい数人の大学生に驚いたようだったが、すぐに笑顔で挨拶をした。
そして、邪魔をしないようにと、自室に閉じこもってしまった。
その途端だ。
「なになに?あれってオトコの子だよな〜」
「すっげーかわいくない?」
「三上、あんなのと一緒に住んでるなんて一言も言わなかったじゃんよ」
「ありゃ、そんじょそこらのオンナよりよっぽどイイぜ」
さすがに何で一緒に住んでるのかまでは誰も聞かなかった。
そういうところは、気に入っているんだ、こいつらを。
それからは、麻野の話題で持ちきりだった。
彼女はいるのか、オトコでもあの子ならお願いしたいくらいだなんて、言い出すヤツもいた。
「なんだよ?おまえら全員ホモか〜?」
ちげーよ、バカ言うなと、みんな否定はしていたけれど、おれは不安になった。
おれだって、ホモじゃないけど・・・麻野のことが好きになってしまったんだ。
こいつらだってそうなってもおかしくはない。
そして、グループでも遊び好きの崎山が提案した。
「オンナの子も誘ってバーベキューにでも行こうさ。あっ、もちろん優くんも誘ってな、三上」
気安く優くんなんて呼びやがって〜〜〜!
「いや、たぶんバイトで―――」
忙しいと思うと言いかけた時に、タイミング悪く麻野が降りてきた。
何か飲み物を取りにきたようだった。
「優くんっ、来週の水曜日、バーベキューに行こうって計画があるんやけど、優くんも行かへんか?」
突然、名前を呼ばれてびっくりしたようで、返事に困っている様子がうかがえる。



断れ・・・麻野、断るんだ!



「あっ、何なら友達も誘ってええから。人数多いほうが楽しいし。なっ、三上」
「あっ、いや、ああ・・・」
麻野はちらりとおれの方を見やってから、返事をした。
「友達も誘っていいなら・・・」
そうして、ここにやってきたのである。

          

                                                            





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