第9回 「私の見たドイツ」
日時:2006年2月25日(土)15:00〜16:30
場所:兵庫学校厚生会館
講師:神戸日独協会会長 黒崎 勇
@今回は、神戸日独協会の黒崎会長の講演である。黒崎先生との出会いは、平成13年、私が50歳の時、神戸日独協会のドイツ語講座で、半年間、ドイツ語を教えていただいたのが最初である。30年前、大学でドイツ語を2年間履修したのだが、英語と違い、日常生活でドイツ語を聞き、話すことがなかったため、ほとんど忘れていた。しかし、先生のおかげで、ドイツ語検定3級は合格した。
Aさて、今回の講演では、黒崎先生の生い立ちから、高校・大学進学の経緯、ドイツ留学中のエピソードなど、長年のドイツとのかかわりや体験談の中から、ドイツという国や国民性について語られた。その中で、特に印象に残った事柄を書きとどめてみた。
B一つは、初めてドイツに留学した1960年、「ドイツにはKultur(文化)があるが、アメリカにはKulturがない。あるのはZivilisation(文明)である。」とよく言われていた。2度目に留学した1972年には、その言葉があまり聞かれなくなったので尋ねたら、「ドイツもアメリカナイズされたのだ。」との答えが返ってきた。しかし、ドイツは、”物質文明”より”精神文化”を大事にする国であることに変わりはない。
Cドイツ人は、古いもの、過去を大事にする。街の景観も大事にする。フランクフルト・アム・マインにあるゲーテハウスは、第二次世界大戦で破壊されたものを、元通りに復元したものである。日本人も昔は古いものを大事にしたが、今は、新しいものを追いかけている。
Dドイツには、哲学がある。日本では言った事がすぐ噂になるが、ドイツでは人の噂はしない。また、ドイツでは、守れない規則は作らないが、作った規則は守る。
Eドイツでは、原子力による発電が数年のうちになくなる。不足する電力を、他国の原子力で作った電力を購入してカバーしているという批判もあるが、ドイツでは、現在、ソーラー発電や風力発電など、代替の電力供給への切り替えが進んでいる。
Fドイツ留学中は、医学生、サラリーマンなど、分野に関係なく8〜10人集まって、Stammtisch(定期的な会合)を開いた。そこでは、様々なテーマについて論議しあった。振り返れば、ドイツ語が今の私を生かしてくれた。ドイツには多くの友人がいる。このドイツ年が終われば、昔のメンバーでStammtischを日本でやりたい。
<講演を聞いて>
ドイツでは、確かに古いものを大事にする。それが精神文化であり、哲学なのだろう。私が2000年にドレスデンを訪問した時も、1945年の大空襲で破壊されたフラウエン教会(Frauenkirche)を修復中で、石の部材を瓦礫の中から取り出し、不足する部材は石材を切り出し、保管してあった。なお、フラウエン教会は、2005年に修復が完成している。私の浄財も、柱の一部になっているのかもしれない。