第5回 政治問題「ドイツの外交政策」

日時:2005年9月10日(土)15:00〜16:30
場所:兵庫学校厚生会館
講師:駐日ドイツ大使館広報部長 Dr.フィーツェ(Klaus Vietze)

Dr.フィーツェ氏は、旧東ドイツ出身の外交官で、1995年から4年間、大阪神戸ドイツ総領事館に勤務されており、阪神・淡路大震災後の神戸を経験されている。その後、ドイツに帰国されていたが、2004年に、再び日本に赴任され、現在は、ドイツ大使館広報部長を務められている。日本語は堪能で、講演は通訳なしで日本語で行われた。以下は、その講演の要旨である

@ ドイツ外務省では、核軍縮の仕事をしていた。メインパワーの国は、自分で核兵器を開発し、所有している。パワーバランスの政策という古い考え方が残っているが、今日、これでは解決できない問題が生じてきた。パワーよりも協力が大切で、ドイツと日本は、この点で意見がよく似ている。
A 国連が創設された60年前と現在とでは、国際環境が大きく変わっている。国連の完全保障理事会には、新たな常任理事国が加わるべきで、グルーバルでなければならない。2005年の安保理の拡大(完全保障理事会枠の拡大)の審議を巡っては、日本とドイツが頑張り、G4(非常任理事国である日本・ドイツ・ブラジル・インド)のイニシャティブを小泉首相が取った。しかし、中国が反対したため、成功する可能性は少ないと思う。
B 1994年、ドイツ連邦憲法裁判所は、ドイツ軍のNATO域外への派遣について、国際法で正当化され、議会が事前に派遣を承認することを条件に、これを合憲とした。それ以降、ドイツ軍は、バルカン半島、ソマリア、東チモールなどで活動を行っており、現在、6,770人の兵士が、平和を守るため国際任務に従事している。
C 私は、当初、ドイツ軍がアフガニスタンへ行くことに否定的であった。しかし、後日、経済的な結びつきのないドイツの軍隊は、アフガニスタンでは信頼性が高く、ずっと居て欲しいという声を聞いた。 2001年のボン会議は、アフガニスタン暫定政府の樹立を図る非常に難しい外交であった。2002年の東京会議でも、アフガニスタンに対する財政的支援を巡り、同様に難しい外交が行われた。
D 結論として、日本とドイツが行う貢献は、軍事分野ではなく、非軍事分野にあると思う。

<講演を聞いて>
(1) 安保理の常任理事国入りは、日本とドイツの永年の悲願である。日本は、毎年、国連に対し、アメリカにつぐ19.5%の分担金(アメリカ22.0%、イギリス6.1%、フランス6.0%、中国2.1%、ロシア1.1%)を拠出し、自衛隊も海外に派遣して国際貢献をしているのに、近隣諸国に受け入れられないのは残念である。