第10回 「今日のドイツ」

日時:2006年3月11日(土)15:00〜16:30
場所:兵庫学校厚生会館
講師:大阪・神戸ドイツ総領事館副総領事兼文化広報部長 エルケ・ティート(Elke Tiedt)

@最終回の講演は、昨年、中国・上海総領事館から大阪・神戸ドイツ総領事館へ赴任さればかりの、副総領事兼文化広報部長エルケ・ティート(Elke Tiedt)女史である。講演は、ドイツが今日直面している問題について、通訳を介して行われたが、ティート女史の話されるドイツ語は、大変聞きやすく、きれいであった。以下は、その要旨である。

Aメルケル政権が誕生して100日が経過した。ドイツがこんなに早く女性首相を持つとは考えられないことだった。対立していた2大政党が、突然、パートナーとなり、大連立を組んだことから、新政権に対する信頼感は高く、ドイツのムードは、今、非常に良い。
B最初の大きな改革は、連邦制の改革である。ドイツには16の州があり、連邦制を取っていいるが、そのシステムが複雑である。全法案の60%が州の同意が必要とされているため、重要な案件が実現不可能に陥っている。連邦と州の役割分担を明確化し、これを40%にまで引き下げることを目標にしている。
C2つ目の大きな課題は、雇用の創出である。ドイツは、高い失業率に悩んでいる。ドイツの企業は外国で大きな利益を生んでいるが、国内の雇用は生み出していない。ドイツでは、福祉国家として、失業すれば、雇用保険等の社会保障を受けられるが、社会保障の費用は、働いている人のお金でまかなわれている。失業者が増え、働く人が減少していくとどうなるかは、誰の目にも明らかである。
D3つ目の大きな課題は、家族政策である。大学卒の女性の40%が結婚しても子供を持たない。仕事と家庭の両立は、もはや女性政策にとどまるものではなく、国民経済的な問題である。ドイツでは、子供は母親が育てるものとの考えで、子供は半日しか学校に行っていない。改革にはお金がかかる。しかし、高い経済成長の時代に、必要な分野の改革が行われてこなかった。

<講演を聞いて>
外交官として、ドイツの抱えている問題を、包み隠さずお話いただいた。日本でも、労働力の海外依存、正規社員のパート化など、雇用の形態が変化し、社会保障制度にも影響が出ている。段階の世代の退職を迎え、労働市場の2007年問題や年金問題など、日本の直面している問題も大きい。