ケルアに尽くす思いを思い出して何とか町に向かう気力が出てきた俺。しかし熱光線のせいで俺の残り少ない体力は急激に減っていき、後少しというところで俺はケルアを乗せたまま飛ぶ事ができなくなってしまった。

「ケルア、本当に……すまない」

「ううん。メルヴィーは頑張ってくれた。後もうちょっとだしがんばろ」

 心優しいケルアは俺にそう声をかけてくれ、アイスが売ってあるところへと向かう。そんなケルアに何の恩返しもできない自分が悔しい。俺にできる事と言えば、ただ1つ。ケルアの背後を守る事だけだった。

 数々の困難を乗り切り、やっとアイスが売ってある場所へとたどり着いた俺達。ここはケルアの知り合いが経営するところだったので、俺もすっかり安心しきっていた。

 だが、奴らは違った。

 俺はケルアの後に建物の中に入ると、急に俺の足が自分のものではないかのように動かなくなってしまったのだった。何だ、コレは……。辺りを見回せば、雑誌の隙間から俺の様子を伺う奴らと目があう。何と奴らは、あろう事かケルアの個人情報を探って罠を仕掛けていたのだった。だが、今更気がついてももう遅い。

 まさか建物の中がそんな事になっていて俺が動けなくなっているとは知らないケルア。上機嫌に俺の分までアイスをレジまで持っていって、そこで知り合いの異変に気付く。

「え、ちょっと。どうしたの」

「どうしたの、じゃねぇ。お前、さっきはよくも俺様にリモコンなんて存在するだけで腹立つものを当てやがったな」

 何とケルアの知り合いは、先程ケルアが自分の体力も限界に近いのにもかかわらず命をはって追い払ったミンミミンに乗り移られていたのだった。何と言う事だ、まさかこんな所で再び出会うとは。

 ケルアの知り合い――いや、ミンミミンが言うには、俺の命とアイスが欲しければ、土下座して床に額を擦り付けて「ミンミミン様、どうか先程の無礼をお許し下さい。アナタ様の命令は何でも全て犬のように忠実に聞き機械のように正確に実行いたします」と夏の組織のボスに誓い、「ですから少しでもミンミミン様の命令をすばやく行う為に我が奴隷の命と、わたくしめの命をつなぐアイスをお譲り下さい」と、全財産とその他ケルアが持っている全てのものをよこせ、という事だった。何ていう奴だ。ケルアが手を出せない事を良い事にそこまでさせるとは。

「うーん……」さすがのケルアも、唸り声を出す。「メルヴィーもアイスも、どっちも必要だからなぁ」

 俺なんて見捨ててくれても構わないのに、そこまで俺の事を必要としてくれているとは……いや、今はそんな感動に浸っている場合ではない。ケルアがそこまで俺の事を必要としてくれているのだから、俺はアイツの期待に答えなければ……。

 自分の勝利を確信し、不適に口元を吊り上げ笑うケルアの知り合いに乗り移ったミンミミン。手出しできないケルアは、本当に土下座して床に額を擦り付けてミンミミン様どうか先程の無礼をお許し下さいアナタ様の命令は何でも全て犬のように忠実に聞き機械のように正確に実行いたしますと夏の組織のボスに誓いですから少しでもミンミミン様の命令をすばやく行う為に我が奴隷の命とわたくしめの命をつなぐアイスをお譲り下さいと全財産とその他ケルアが持っている全てのものをミンミミンにわたすのか。ミンミミンの騒音攻撃をまともに喰らい今動けなくなっている俺にできる事は本当にないのか。そしてミンミミンに体を乗っ取られたケルアの知り合いの運命とは。

 次回、『ケルア、究極の選択』。俺は……俺はッ、奴隷を辞めます!!

「――で、お前に渡された紙通り言ったが、コレで良いのか?」

「全ッ然。メルヴィー棒読みすぎ。ってか最後やけに熱入ってるけど……あれ、何?」

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今回次回予告をやってくれたのは、意外にもメルヴィー…でしたが、やはり考えたのはケルアなようです。
まさかこんな所でミンミミンが活躍できるとは…!私の思いをケルアがしっかりと受け継いでくれました。
しかし…やっぱりメルヴィーはやりたくなかったのか、ケルアが書いた紙にはしっかりとピックリマークやクエスチョンマークなどが沢山書かれているのに、それを全て無視して棒読みです。でも最後の台詞は、余程共感できたのか思わず握りこぶしをつくって叫んでいます。

06年8月18日