今、僕らの住む地球という惑星(ほし)には魔の手が及んでいる。“夏”と言う悪の組織は日々地球に熱光線を与え、僕らを滅ぼそうと同時に自分達の住みやすい環境に変えてしまうという、まさに一石二鳥の計画が実行されているにもかかわらず、僕らはそれを阻止する術をまだ持っていない。つまり、ただ指をくわえて確実に近付いてきている終わりの時に日々怯える事しかできなかった。

 だが、それは一部の人間だ。今は確かに阻止する術を持っていないが、その方法を研究している人物達がいる。つまり、まだ希望は捨てられた訳ではないんだ。

 今全ての人間がしなければいけない事はただ1つ! 少しでも多くの時間を生きれば良いだけだ。

 だが、僕はもともと体力がないせいで、更に夏の熱光線まで浴び続けていて、もう限りなく限界に近い。あぁせめて今近くにアイスが……究極の回復アイテム、マンデーカップかもしくはオレンジヨーグルト風味シャーベットさえあれば僕は奴らに太刀打ちする事ができる。

 しかしこれも奴らの罠か……今冷蔵庫の中には昨日補充しておいた氷が大量にあるだけだ。確かに氷でもこの熱光線にほんの少しだけど対抗できる。だけどこれは食べ過ぎると逆に一箇所からしばらくの間動けないという欠点が待ち構えていた。それでは駄目なんだ。だけど僕の奴隷は――、

 ――はッ! 夏の部下であるミンミミンが僕の奴隷に騒音を放っている!! 鳥人(ちょうじん)という人間より遥かに体力を持つ彼だが、日頃僕の為に進んで尽くしてくれているおかげで彼もそろそろ限界に近い。それなのにあんな攻撃をまともに喰らったら――僕に負担をかけさせようなんてそんなの許さない!!

 何か太刀打ちできるものは……。そこで僕の目に入ってきたのは、夏に対抗するアイテムの1つである扇風機を自由自在にコントロールする事ができるリモコン! それは扇風機よりも位が高い事を意味する。これならきっと奴を追い払う事ができるはずだ。

 くそったれっ! 覚悟しやがれ!!

 僕の投げたリモコンは、見事奴隷を避けてミンミミンに命中。奴は負け犬のように短く叫ぶとそそくさと組織のある空へと向かって飛んでいった。さすがはリモコン。その存在だけで覚えていろよと言う敵の捨て台詞さえ吐かせる気力を奪う。

「大丈夫メルヴィーッ!?」

 慌てて、ふらつく足をそれでも前に進めて奴隷に近付くが、彼の顔は真っ青だ。もうほとんど精気が残っていない……かもしれない。

「ケル、ア……すまない。せめてアイスを手に入れる気力さえ残っていれば――」

「それさえあれば僕らは助かるのに……!」

 だが確実に奴隷の終わりの時は目の前まで迫ってきている。今奴隷を救えるのは――そう、あの、いつでも冷蔵庫と水さえあれば簡単につくれるんだけどしばらく痛みのあまり動けなくなるという、欠点を持っているあれしかない。悩みもせず決断する僕に対し、メルヴィーが出した答えとは……!?

 次回、『氷は僕らの味方か? 敵か?』。君に拒否権は、ない!

「あーすっきり! も最ッ高の気分――って、メルヴィー? どかした?」

「や……よくそんなに思いつくなって、思っただけだ」

Top 

久し振りに昔書いてたヤツに目を通していたら何となく書きたい衝動に駆られたので、取り敢えず思いついたものを書いてみた結果です。うーん…何だろうねコレは;
一人称の方が書きやすいな…。

今回惜しくも主人公の座を奴隷(彼曰く)に奪われてしまったケルアに次回予告を頼んだところ、快く引き受けてくれてノリノリでメルヴィーの台詞もなりきってやり通してくれました。次回の題名を言った後は本人が出てきましたが。
さすが日頃本を読んでいる為か、全部ケルアが考えてくれて大助かりですvやーありがとうございますvv

……なーんて、そんな人がいてくれたら良いねぇ…。
ちなみに“ミンミミン”というのはケルアが昔、メルヴィーに嘘ついた時に出てきた名前です。

06年8月12日