コーランを知っていますか


阿刀田高、新潮文庫。『ギリシア神話を知ってますか』が面白かったので、もっと阿刀田高を読みたくなったところに、『ギリシア神話〜』を紹介してくれたN先生が、『コーラン〜』も面白いとず〜と前に教えてくれた。

で、何が面白いのか忘れたけど、とにかく読みたいとおもっていたことだけは事実。

ところが、先日卒業生とN先生と3人で食事してたときに、「文庫本も買えないのか」と言われて恥ずかしい思いをしたし、卒業生には阿刀田高の文庫本ならブックオフの100円コーナーにたくさんある、とか言われて、いずれにしても案ずるだけではだめで、まずは本を買うべしと心に決めた。そして、出張帰りに久々に本屋によったので、前からほしかった『カラマーゾフの兄弟』の新訳と『コーラン〜』を買ってきて、まず『コーラン〜』から読み始めたという次第。



実におもしろい。といっても『ギリシア神話を知ってますか』ほどの面白さではないのは、実はコーランそのものに由来しているような気がする。それは何度も阿刀田自身が文中でのべているのだが、コーランにはストーリー性が欠落していて、キリスト教の旧約聖書のような物語として示して啓示するということが稀だからだろう。

それにしても、イスラム教について、あるいはマホメットについて、あまりにも知らなさすぎた、ということがよくわかった。高校の世界史で学んだように思うが、それもウマノフ朝やアッバース朝といった正統カリフ以後の政治的歴史のような気がする。

とにかくマホメットがどうしてイスラム教を興したかなんてことは、イエスのことを知ってるほどには知らなかったということ。たとえばエルサレムがどうしてイスラムの聖地なのかは、マホメットがメッカのカアバ神殿近くで眠っている時にアラーによって現れた天使とともにエルサレムまで「夜の旅」をしてそこで天に昇って、旧約聖書に出てくる多くの天使と会ったことによる。

そもそも、イスラム教はキリスト教の「あとだし」宗教であるということすら忘れていたように思うが、イスラム教は根源的にはユダヤ教・キリスト教を認めたうえで、最後の預言者としてマホメットが使わされたということになっているのだ。

『ダヴィンチ・コード』による原始キリスト教に関するにわか知識によれば、キリスト教自体がローマ帝国によって都合の良いところだけを取捨選択して成立していったものだと考えるが、マホメットによるイスラム教は、ローマ帝国的キリスト教に反発して、ユダヤ教もしくは本来のイエス的な流れを汲む正統派の砂漠文化圏の宗教として成立していたたのかもしれない。

それにしても、新興宗教として興って行ったときから、孤児に配慮し、貧富の差を広げる金融市場に陥らず、商いごとを奨励しているところは、現代の非イスラム教である我々にもそのまま適用できる。


火 - 8 月 14, 2007   03:27 午前