さいはての島へ(ゲド戦記III)


「アースシー」シリーズの最初の3部作完結編。前回亮佑が借りてきてくれたときは忙しくて読む時間をとれなかったので、再度借りてきてもらった。

読み直してみて分かったが、時間的余裕がなかっただけでなく、この巻は特別読み進めにくいのだ。死というテーマを扱っていること、しかしながらゲド戦記としては完結させないといけないこと。内容はなかなか哲学的でありながながら、冒険活劇の要素も失われずに、最後はゲドを英雄として扱い、なおかつ未来が開ける結末になっている。
さいはての島へ

しかしながら、先に「帰還」を読んでしまったので、ハラハラドキドキ感がなかった。第3巻で何があったから、「帰還」のゲドになってしまったのか、そこに意識が集中した。でも、なにもなかった。「帰還」におけるゲドを想像させるような辛辣かつ壮大な戦いはなく、闇の世界でどちらかというと災いをもたらしたものを救済するかたちで、ことは行われたのだった。

何もないというのは語弊があるが、スターウォーズのような活劇ではなく、語りによって諭すように災いを取り除くのだ。その語りを理解することのむずかしさ。それを理解する境地に至るには、延々と続いてきたアレンとゲドの旅とその会話を理解しないといけない。おそらくそれは一度読んだだけでは理解しうるものではないだろう。

ところでアレンがのちの王であることを最初に見抜いたゲドは、すでにこの3巻目で第1巻のオジオンである。そしてアレンが第1巻でのハイタカ。歴史はめぐり物語はくりかえされる。つまり、この巻は、大賢人となったゲドの到達点でありながら、その後継者であるアレンの始まりの物語なのである。アレンは魔法使いではないけれど。


日 - 2 月 19, 2006   01:50 午前