禁煙セラピー


アレン・カー著。「読むだけで絶対やめられる」らしい。これまでこの種の本は信じていなかったのだが、とにかく読んでみようと思って買ってきた。その日のうちにお風呂で読み終えた。

目からウロコ、とはこのことだろうか。これまで喫煙の有害を語る本(岩波新書「タバコはなぜやめられないか」など)は読んだことがあるし、禁煙マラソンなどの存在も知っていたし、禁煙にまつわるいろいろなことをそれなりに学習してきて、何度も禁煙しようと思ってきた。が、この本は手にしたことがなかった。日本の初版は平成8年というから、もう10年前から世にあったのに。

この本は、ニコチンが有害である科学的根拠を提示するわけでもないのに、禁煙がマラソンにたとえらるような苦痛を伴うものではないと言い切っている。そして、他の読者の感想のように、この本を読んだら禁煙しようと思うようになる。不思議な本だ。

もっとも、禁煙セラピーというだけあって、禁煙したい人を対象としているので、そうなるのだろう。喫煙し続けたい人が読んでも、禁煙したいとおもうかどうかは分からない。

この本には、たばこを吸いながら読め、と書いてある。しかし読後に最後の一本を吸い終わると、次の一本を吸いたくなくなるのだ。なぜか?

喫煙は危険な中毒症状であり、喫煙以前の状態のほうが、今よりも明らかに健康であったし、たばこ以外のもので至福感を得ていたことを思い出させてくれるからだ。まあ、そんなことを分析しても禁煙がうまくいくがどうか分からないが。

たばこが吸えないとか、手元にないという恐怖感がストレスの原因であったことも認識したし、たばこを吸いたい理由をつくるためにストレスを弾き越していたことも理解した。

これは朝夕に体重を測るだけでダイエットできるのと通じるものがある。実際には体重はかるだけで減量できるわけがない。しかし減量に成功するのは、こまめに体重を測ることで、体重が増える要因を認識し、それを除去しようと考えるようになるからだ。人間はやっぱり偉い。

だからタバコが有害であることを知っていたら禁煙できると思っていたが、なかなか実現できなかった。禁煙の秘訣は、そんな知識の問題ではなく、タバコを吸ったときの至福感とタバコを吸わなくても吸いたいと思わないときの至福感、そのどちらに本当の至福感を感じるかなのだ。


月 - 1 月 16, 2006   01:59 午前