続 直観でわかる数学


畑村洋太郎著、岩波書店。ちょうど晃志が割り算で悩んでいるので、教え方の参考になるかもしれないと思った。

「続」というからには、この本以前に「続」がつかないのもあるのだと思って、この本を覗いてみたら、一番最後のページにその広告が載っていた。行列や微積分や虚数の話のようなので、そちらは本当に「数学」の話のようだ。「続」のほうは、足し算・引き算・掛け算・割り算など、数学の基礎は算数にありき、みたいな内容だったので晃志にもってこいと思った。さらに、帯には、「付録−1 続 直観の極意は丸暗記と暗算にあり」と書いてあったのが気にいった。日頃、口をすっばくして亮佑と晃志に言っていることに似ていたからだ。早速買ってみた。月曜日のことだ。

読んでびっくり。私と同じような発想が書いてある。数字になんとなく好き嫌いがあって、この数字は気持ちいいとか、何となく疎遠な感じとか思っていたのだが、1から100までの数字に対して気色良いかどうかを5段階評価してみろ、なんて書いてある。ふむふむ、おもしろうそう、と読み進むと、つぎには数字から思い浮かべる色をその数字に塗れなんてのがあって、これは子供にも言ったことがある。私の頭の中では、気に入った数字には色がついていて、代表的なのは5のつく数字はいつも黒なのだ。ははあーん、なんとなく分かってきた。

私の世代では小学校のときにソロバンを習いに行く子供が多かった。私は習いに行ってなかったので、小学校でソロバンの授業があるときは、結構差をつけられて、みじめな思いをしてきた。それでも、ソロバンで足し算と引き算はできるようになりたいと思ったから、親に問題集を買ってもらって一人で練習したものだ。実は、そのソロバン独習のおかげで、「補数」という概念が感覚的に身に付いたようだ(と、この本を読んで気づいた)。

しかし、ソロバンの名人たちと違って、いくら練習しても暗算するときに頭の中でソロバンを弾くというわけにはいかなかった。だから暗算方法を独自に考えださねばならなかった。ソロバンができない人のための暗算方法だった。

ふしぎなことにこの本は、その暗算方法を説明してくれている。しかも概念として非常に分かりやすく説明してくれているので、自分の考え方はこうだったのか、と再認識する。ただ、私は暗算は暗算として独自方法を考えたのに筆算については教科書通りの方法で計算していて何ら疑問をもたなかったのに、この本では筆算も同じ発想で処理しているところが素晴らしい。実は、筆算に関してずっと違和感を持っていたのだが、その違和感がどこからくるのか、この本には書いてあるのだ。

最後までその調子で一気に読み進むことができた。これは算数・数学の本というより、日常生活の算数的な智恵をわかりやすく表現しているというような本かもしれない。たとえば消費税5%を計算するときに、元値に0.05を掛けより、元値を半分にして10で割るほうが計算が速いとか。でも、しっかりと算数・数学の意義が述べられている。


水 - 11 月 16, 2005   04:32 午前