文字化けメールの背景にあるもの


iPhoneに送られてきたWindowsユーザーからのメールが文字化けして読めないかった。相手のメールが ISO-2020-JP でエンコードされていたからだ。

パソコンに詳しくない相手に対して、UTP-8を使ってくださいと言っても通じない。UTP-8に変更するにはどうすればいい? と設定変更の操作を求められても、それによってその人が他のメールを読めなくなるかもしれない。

前回も書いたが、iPhoneが世界市場を狙うなら、もう少しローカライズに神経を使うべきだ。日本でのiPhoneの売り上げが伸び悩んでいるのは、その辺にも要因があると思われる。(別に売れなくてもいいけど、いくら良い製品でも日本で普通に使えないモノは欠陥商品だ。ユーザーとして早急に改善を望む。)

一方、文字化けはWindows側にも問題があると思う。WindowsユーザーにUTP-8を使ってくださいと言うにしても、だいたいOutlookはどのていど多言語に対応しているのだろう、と懐疑的になる。

Windowsに対して懐疑的なのは、Windows(日本語版)の世界は閉じた世界の中だけで利便性を追求する癖があるからだ。覇者のおごりというか、傲慢というか、そういうものを感じる。(iPhoneのローカライズ不備についても同感)

たとえば、WindowsのWORDでカタカナを入力すると平気で半角カタカナに自動変換するのがデフォルトだった(今はどうか知らないが昔はそうだった)。ソフトの仕様がそうなっているので、ユーザーはそのまま使っていて、ワープロ文書だけならまだしも(とは言ってもワープロでカタカナが半角になっていることに不自然さを感じないのもおかしいと思う)、インターネットメールやホームページにも平気で半角カタカナを多用していた。さすがに今は半角カタカナが少なくなったが、機種依存文字については今でも平気で使っている。

便利な機能を使うことに問題があるわけではない。たとえばHTMLメールできれいにレイアウトしたメールを送るのは、世界共通の仕様として、歓迎する。しかし、半角カタカナや機種依存文字が便利だとしても、それが国際的に共通仕様になることはない。それを承知の上で日本のWindowsユーザー同士でしか使わない(あるいは携帯同士でしか使わない)というのならいいが、ユーザーにはその意識はない。

メーカーが用意した環境をそのまま使っていて不具合が発生するハズがないと思っているからだ。当然のことだ。パソコンやインターネットに詳しくないひとほど、そう思っている。だから問題はメーカーの姿勢にある。auのメールの仕様も同じだと思われる。

そしてこれはどうも日本のIT業界に共通の悪習慣のように思う。閉じた世界で高機能化を押し進めようとする。

古くはNEC-9801シリーズが日本の中だけでしか通用しない独自仕様を通し続けたが、AT互換機の台頭によって破綻した。NTTはISDN網を独自に広げようとしてADSLに着目したソフトバンクの営業妨害までしたと言われているが、結局自身もADSLを採用してISDNはどこかに消えた。NHKは多大な投資をしたアナログハイビジョンを欧米の放送業界に売り込んだが、ハリウッドの映像業界の押し進めるデジタル化の波を予測できずに失敗した。

最近では携帯電話が日本の独自仕様で発達しているが、電話機メーカーがどんなに優秀な電話機をつくっても、世界市場では通用しない。

技術大国のハズの日本製品をグローバルに展開できないのは残念だ。せっかくのビジネスチャンスをムダにしているように思う。

auメールのテキストエンコーディングについては、どうせ国内でしか使わないという安易な妥協があるとしか思えない。しかしケータイメールといえども、インターネットにも配信する以上、インターネットの仕様に合わせるのが筋だと思う。

独自仕様で発展を続けることに異論はない。しかし独自仕様を強要する覇者には傲慢さを感じる。デファクトスタンダードを取りたいという欲望があるのはわかる。しかし国内市場において独自に高機能化を果たしても、世界標準からズレていると、閉じた世界でしか通用しない。

せっかく高度な技術を駆使するのだからもったいなくはないか。はやく脱却してもらいものだ。


月 - 9 月 29, 2008   11:02 午後