秒速と時速の関係


問1 オリンピックの陸上選手は、100メートルをほぼ10秒で走ります。100メートル走の選手は1秒間に何メートル走っていることになるでしょう?

答え:10メートル

問2 1秒間に進む距離のことを秒速といいます。問1の100メートル走の選手の秒速はいくらでしょう?

答え:10メートル


さて、問1と問2の答えが同じです。しかし、表している内容は異なります。問1は距離ですが、問2は速さです。よって問2の答えを正確に表記するなら「10メートル/秒」としなければなりません。

しかし、日常生活では、速さをあらわすときにわざわざ「10メートル毎秒」とか「秒速10メートル」とはいいません。単位時間が「秒」「分」「時間」のいずれかであることは前提のうえで、距離の単位だけしか表現しません。それが、晃志が速度の問題に関して混乱している原因のように思います。

次の問題です。

問3 この100メートル走の選手が1分間走り続けると何メートル進むでしょう?

答え:600メートル

問4 1分間に進む距離のことを分速といいいます。この100メートル走の選手の分速はいくらでしょう?

答え:600メートル

晃志は問3はすぐに計算したものの、4問の答えにつまってしまった。

問3に正解したのなら、問3と問4は、次のようにまとめることができる。

「1分間に進む距離のことを分速といいます。100メートル走の選手は1分間に600メートル進みます。この100メートル走の選手の分速はいくらでしょう。」


問題文のなかに答えが書いてあるようなものだが、晃志は答えられない。

何度質問し直しても同じだった。

あらためて、秒速はいくらだったか、と聞き直すと、それも答えられない。

おそらく思考停止している。ブロックしている。図解すると分かるかもしれない。

適当な長さの直線を書かせて、10分割させて目盛りをつけさせた。1つの目盛りが1秒だとする。目盛り10のところが100メートルだとすると、1目盛りはいくらか?

ようやく10メートルと答えられた。

これを秒速10メートルという。では、秒速10メートルで60秒間進むとどれだけの距離を行くことができるか?

600メートル。

そのとき、分速はいくらか?

やっぱり答えられない。

どうして答えられないのかが分からない。

結局「1分間に600メートル進むなら、それは分速600メートルという」と答えを教えて納得させた。

1分間に進む距離だから、分速という。速さは、ある時間内に進む距離で表す。それが理解できていなかったのだ。

いちど理解するとあとは、容易いハズ。

「では、時速は?」
「36000メートル」
「36000メートルは何キロメートルですか?」
「36キロメートル」
「そう、だから時速36キロ、という」

実は晃志は速度の問題が苦手だった。考え方が分からなかったのだ。晃志の悪い癖は、いちど答えに窮すると思考停止することだ。いっさい考えなくなる。考え方がわからないのではなくて、筋道をたてて順番に解決してくという地道な作業を放棄してしまう。だから、今回は、考え方を教えようと努力した。秒速が分かれば、分速も時速も分かる。

「時速36キロと分速600メートルと秒速10メートルは、同じ速さ」
「わかった」
「36キロっていうたら、車が走る速さや。オリンピックの選手は車と競争できるくらい速い。」
「すごい」
「では、時速36キロで走っている車は、1秒間にどれだけ走っているでしょう?」
しばし、考えたのちに「10メートル」
「よくできました」

速度がわかれば、どのくらいの距離をどのくらいの時間で行くことができるか分かる。

応用問題:池田駅まで1キロメートルとすると、歩くと15分。自転車なら5分。それぞれの速度はいくらか?

答え:歩く速度は時速4キロメートル、自転車は時速12キロメートル。

これが答えられるようになった。

晃志は、喉のつまりがとれたようにスッキリしたという。

発展問題:音が伝わる速さは、秒速約300メートルです。稲妻が光ってから雷鳴が響くまで5秒かかりました。稲妻は、ここからどのくらい離れたところで光ったのでしょう?

答え:1500メートル(1.5キロメートル)

速度がわかると、かかった時間で、距離がわかる。ということが分かった。
よかった、よかった。


土 - 11 月 29, 2008   08:10 午後