掃除機考2(掃除機の性能評価基準)


日本の掃除機は、吸引仕事率を掃除機の唯一絶対の指標としている。最新の掃除機では570Wとかの数字を目にする。大きいほど吸引仕事率が高い。メーカーがそれを大々的に表記しているから、当然それを掃除機の性能と信じていた。が、それは国際規格ではなく、掃除機の性能はダストピックアップ率でみるのが一般的だそうだ。

掃除機を知って掃除機を選ぶ 」というのを見つけた。

生活環境研究所が運営しているのだか、これは民間のコンサルだろうか? 記事を読み進めると最終的にはスウェーデンはエレクトロラック社オキシジェンZ5954 という掃除機を販売しているので、ちょっと胡散臭い。しかし、オキシジェンそのものは良い掃除機のようだし、掃除機の性能は何をみるべきかについては、わかりやすくて、いい参考になる。

掃除機の性能を測る指標は2つ。ダストピックアップ率と排気性能。

ダストピックアップ率とは、規定のスタンダードダストをどれだけ吸引したかを測って、床に巻いたゴミと吸引したゴミの重量比のこと。当然ながら数値が高いのが良い。

排気性能は、掃除機全体から出る排気に含まれる粉塵の濃度。0.3μm(マイクロメーター=ミクロン=1/1000mm)の粒子が1立方メートル当たりに何mg含まれるかをみることが多いらしい。タバコの煙の粒子は1~0.1μmなので、タバコの煙を吸わせてみると簡単な排気テストができるという。

ダストピックアップ率が高くて、排気がクリーンなのが良い掃除機ということだ。

ちなみにオキシジェンは標準ノズルのダストピックアップ率が68.5%(国産B社はパワーノズルでも47%、生活環境研究所調べ)で、0.3μmの粉塵を99.995%キャッチする。だから生活環境研究所は、結論として掃除機オキシジェン(紙パック式ならぬ布パック式)を絶賛して、ほかの掃除機はすべてダメだということになっている。なかでもダイソンのように紙パックを使わないサイクロン式は時代に逆行していると非難している。どうして紙パックを使わないのが時代に逆行しているのか理解に苦しむ。

ゴミ捨て時に粉塵が飛び散るのでアレルギーのある人には不向きというのがその理由だ。たしかにそれは言える。しかし、たとえばダストボックスの蓋をビニル袋などで覆ってゴミ捨てすればいいように思う。

むしろ、高性能フィルターの役割を果たす紙パックを製造するトータルコスト(資源とエネルギーと金銭)を考えると、それこそ時代に逆行しているのではないか(オキシジャンは布パック式で交換回数も3~4ヶ月に1回なので紙パックよりマシ)。

だから、このサイトを参考にして私なりに行き着いた結論は、良い掃除機とは、紙パックを使わずに、ダストピックアップ率が高くて、排気がクリーンな掃除機である。

ここで国民生活センターが2006年4月の「サイクロン方式の掃除機 」報告書(PDF)が興味深い。報告書全体として、サイクロン方式掃除機への改善要望書なのだが、メーカーを選んだ理由(サンプリング方法)が不明瞭、テスト機の種類が少ないなど、性能比較実験の一般論として論じるには無理がある。しかも、テスト結果の読み取りも恣意的だ。公共の団体がこんな仕事をしてていいのか?

報告書(Webの記事ではなくPDFの報告書)にはテスト結果の数値が出ているので、それを素直に読み取ってみる。

たとえば、「表2 ごみの掃除性能測定結果」(概要の4ページ)では、砂ゴミの除去率が出ている。その表にダイレクト集塵式というのがあるが、これは業務用の掃除機を比較対象として取り上げたと思われるので、考察からは除外して他の機種で比べてみる。国産サイクロン式(3機種)では日立27%、三洋29%、三菱38%なのに、ダイソンは50%である。国産紙パック式(松下)では42%だが、これさえダイソンには及ばない。

一方、テストに使った掃除機の吸引仕事率は、国産機が580~620Wなのに、ダイソンは250W。ダイソンの掃除機は、吸引仕事率が低くても、ゴミを良く吸い込むことを実証している。排気性能はテストしていないようだ。

そこでメーカーのサイトで、現行機種の排気性能について記述があるかどうか調べてみると、どのメーカーも最上位機種では排気に占める微細粉塵量についてコメントされている。とくに排気がクリーンなのを標榜しているのは、日立のロボットサイクロンとサンヨーのエアシス。エアシスは大胆にも定価が10万円以上する。この価格設定はダイソン掃除機の普及に負うところがおおきいだろう。高くても良い物なら消費者は購入するということか?

でも、そんなに高いのなら、ダイソンのほうがいいのでは?

(価格.comによると、エアシスの最安値は5万8千円、ロボットサイクロンは4万2千円だった)

つづく


日 - 5 月 4, 2008   10:41 午前