恐喝された亮佑


今日、中学校の保護者懇談会があった。担任からも最近提出物が出ていないことや教室の机の上がいつもちらかっていること、中間考査の成績表をもらって、超ご機嫌斜めのママ。いつものように帰宅が遅い亮佑にママがイライラしているところに、電話がなった。

亮佑や。

担任から帰宅が遅くなる時は、駅の公衆電話から連絡するようにと指導してます、と聞かされたから、てっきりそうだと思ったのだ。しかし、ちがった。横できいていて、すぐに警察からだとわかった。ローソンでカツアゲにあって、警察に逃げ込んだそうだ。

「いつも帰宅が遅いので、はやく帰ってくるようにと注意してたんです。」電話口で弁明するママ。「怖がっていますから、迎えに来て下さい、やって」

そりゃあそうだろう。中学生くらいの年頃で大人に恐喝されて怖くないわけがない。

パパが車で迎えにいった。たまたま今日は急に寒くなったので、残りは家で仕事しようと思って、8時45分には帰宅していたのだ。警察から電話があったのは、パパがちょうど夕食を食べ終わった時だった。

夜の警察署では、いかつい顔つきで体格がしっかりした兄さん(私服)が受付にいた。亮佑の父であることを名乗ると、ソファーにかけてお待ち下さいとのこと。しばし待っていると、若い男性の制服警官と亮佑が現れた。

「本人も遅い帰宅を反省しているようですし、怖い目にあって怯えていますから、あまり叱ったりしないでください。」

とたしなめられた。毛頭叱る気はなかった。恐喝されて怖い思いをしていることは十分に理解できる。いまはその恐怖をとりのぞき安堵させることが大切だ。警官たちにお礼をいって署をでると、車のなかで亮佑に事情を聞いた。

路上に座り込んでいた若い男が、ちょっと来い、金出せ、とやくざっぽい言い方をされたようだ。怖くてすぐに近くのローソンに逃げ込んだ。しばらく待って帰ることにした。そしたらまた同じ場所のもっと建物の影のほうにいて、再び金出せと言われた。怖くなってそのまま向いの池田署に逃げ込んだ。相手もそのまま逃げ去った。怖くて顔も思い出せない。

「明日からが怖い。また待ち伏せしているかもしれない。」
「もう大丈夫やって。大金をもちあるているわけちゃうし狙い撃ちなんかせえへんって。だいたい警察署の真ん前やと分かってて、そんなことするアホはおらんやろ。もっと時間に帰ってきたらええやん。」

いかに危険回避するか。毎日ふらふらと道草ばかりして帰宅が遅くなっている本人が一番分かっている筈だ。

「ローソンでガムを2つも買って手にしてたから、目つけられたんかなあ。半額で買ったのに、普段の値段で買ったと思われたんやろなあ。」

と、かわいいことをいう。たかだか正札でも2つ260円の品物なのに。怖かったけど、悔しかったんだろうな。なんで自分が狙われたのかを分析しようとしている。

「どんなヤツか覚えてへんくらいそいつのことなんか見てへんのに、何ジロジロ見てんねん? っていわれてんで」
「メンチ切ったやろってのはカツアゲするときの決まり文句や。気にせんでいいって。悪いことしている人は、いつも他人から評価されてないっていう負い目を感じているから、人をみたらみんな自分のこと蔑んでジロジロみてるっていう被害妄想があるねん。だから弱そうな相手をみつけたら吠えたくなるもんやねんて。」


木 - 11 月 1, 2007   11:00 午後