Mr.インクレディブル


この映画はやはり劇場で観ておきたかったが、晃志の誕生日(2/1)祝いのイベントとして実現した。

これまでに何度も予告編を観てきただけに山場は予告編で観たシーンで終わってしまうのではないかと懸念したが、ストーリー展開の面白さと丁寧なCGに感心しきり、予告編で観たシーンが本編にはなかったりして、あれ? あっ? と言う間の2時間だった。最高ですねこの映画。音楽もいいし。

なんといっても相変わらず脚本がすばらしい。フルCGアニメならではのストーリー展開。いや別にセルアニメでやっても構わないけど。とにかく脚本がいいので安心してみていられる。ガーフィールド(この映画は観て損した)のような緩慢なシーン展開はない。

ピクサーのCGをドリームワークスと比較すると、なんとなくCGが胡散臭い気がするのがドリームワークス。知り合いがドリームワークスのCGには重力を感じないと言ったが、確かにキャラクターの動きにどこか違和感がある。シュレックでは人物(フィオラ姫)のレンダリングが奇麗なのに感心したが、ロビンフッドとその一味たちの動きは、なんとなく風船っぽい。そういえばポーラーエクスプレスも、予告編で観た限り、車内の子供たちに食事をサービスする場面での給仕たちの踊りも、シュレックのときと変わらないように思えた。それに比べてインクレディブルの登場人物たちの動きは、実にシャキシャキとして気持ちいい。

たとえば、ジブリの耳をすませばの演奏シーンでは実写をトレースして半年かけてアニメーション化したというが、アニメとしてそれは邪道じゃないか。同様にポーラーエクスプレスもモーションキャプチャーを宣伝文句にしていたように思うが、それもCGアニメーションとしては邪道だと思う。そういえばスターウォーズのジャジャービンクスも動きが軽すぎるように思う。コンピュータで重力を計算して動かすほうがよりリアル感があるのはなぜだろう。

ピクサーの長編CGアニメでは、トイストーリーに出てくる人物たちがまったく人間らしくなかったのだが、インクレディブルにおいてピクサーが提示した人間を主人公にしたCGアニメの方向性は大成功だったと言える。つまり、これは従来のアニメーションと同じなのだ。

デフォルメされた体格や顔立ちは、それこそアニメそのものが立体化したもので、本物の人間らしいリアルさを追求したドリームワークスの方向性とは異なる。ピクサーの方向性こそフルCGアニメにふさわしいと思う。リアルさを追求したCGによる人物では、例えばファイナルファンタジーなどがあるが、はっきり言って全く魅力的ではない。リアルな人物CGは、実写映画におけるスタントマン的につかうと効果的だが、それがそのまま演じ続けると役者はいらなくなるではないか。もっともそこまでCG技術が進化していないからこそ、ファイナルファンタジーに魅力はないし、ポーラーエクスプレスでも中途半端なアニメとしか感じない。そこにCGが及ばない人間の魅力があるのだろう。

日本のCGアニメーションが従来のセルアニメーションらしさにこだわり、フル3DCGをわざわざセルアニメ風にレンダリングし直したりするのだが、どうしてそんなまどろっこしいことをしなければいけないんだろう。潔くCGの時代にはCGの時代にあったアニメーションの方向性を示すべきではないだろうか。変にリアルだけどまだ本物には見えない人物より、アニメっぽいけどより人間味を感じるほうがずっといい。ジブリのアニメだって、アニメ独特の手法を活かした作品づくりをしているからおもしろい。(そういう意味ではジブリのCGの使い方は気に入らない。必然性がないところでCGをつかっているから。)


日 - 1 月 30, 2005   12:00 午前