オペラ座の怪人(1943年版と1990年TV版)


1943年版は本屋で見つけた500円のDVD。どことなくうさん臭いのだが、レンタルしても300円はかかると思うと、まあいいか、と思って買ってしまった。同時に「風と共に去りぬ」も500円で買った。

映画の著作権がきれているのだろう。通常の販売会社ではない。再生してみてびっくり。ほとんどVHSテープをDVDにダビングした品質。しかも画面はテレビサイズ。メニュー画面もチャプターインデックスもない(チャプターは設定してある)。さらに字幕オンオフの切り替えもない。という、ほとんど素人制作のひどい内容のDVD。ちなみに、あとでレンタル屋さんで確認すると、2500円の正規版(?)には特典映像がついているが、もちろんこのDVDにはついていない。買って損した。この種のDVDは要注意。

オペラ座のソプラノ歌手クリスティーヌは、プリマドンナ目指して歌唱指導を受けていたが、その費用の出所はしらない。実は、オペラ座のバイオリニストのエリックが肩代わりしていた。しかしエリックはオケを解雇され、クリスティーヌのレッスン費捻出のために作曲した楽譜を出版社に持ち込むが、曲を盗まれたと勘違いして殺人を犯かす(安直すぎ?)。その際、薬品で顔にやけどをおいながらも、地下水路に逃亡し、オペラ座の怪人と化す。エリックはクリスティーヌをプリマドンナにすべくいろいろと画策する。しかし殺人事件を追うラウル警視総監に追いつめられ、シャンデリアを落とし、クリスティーヌを連れて地下に逃亡。クリスティーヌは殺人犯人として恐れるばかりだが、エリックの伴奏で故郷の子守唄を歌い、犯人に対して何か思うが、それは不明のまま。救助にかけつけたラウルとともに地下を脱出。そのあと地下室はエリックを残したまま崩壊する。

つまりエリックはクリスティーヌの父親であり、何かの理由でそれを隠さないといけない。だから名乗り出る事もできないまま、レッスン費を肩代わりしている。そして最後まで自分から名乗りでることなく物語は終わる。クリスティーヌはエリックを殺人犯としか思わないので、ふたりの間になんら感情の高ぶりがない。恋愛関係にあるのはラウル。アナトールがそこに割り込むが、この辺はまるでコメディ。しかも二人とも結構年配。しかしファントムが単なる殺人犯ではなく、その背後にある悲哀を感じることができる点で、現在のファントム像につながっていくのかもしれない。

そういう意味では、テレビドラマとして作られたバート・ランカスター出演の「オペラ座の怪人」は、なかなか良い。バートランカスタは劇場支配人役で、ファントムの父親.ファントムの良き理解者。クリスティーヌはファントムの母親にうり二つ。クリスティーヌへの愛情は母親への愛と通じる。クリスティーヌも支配人から話をききファントムへの母性愛にめざめる。ファントムへの愛とラウルへの愛は種類が異なる点が理解できる。

つまり、ファントム像もクリスティーヌの位置づけもラウルやカルロッタの役回りも十分に面白く、ロイドウェーバーのミュージカルにそのままつながっているように思う。特に劇中劇でクリスティーヌとファントムがデュエットするシーンは圧巻で、感動もの。吹替えらしいが、すばらしい。実はこれ、NHKで放映されたときにβテープに録画してあるが、βデッキが壊れてて手軽に再生できない。これこそDVDでほしい。


日 - 11 月 20, 2005   05:23 午後