天使のくれた時間


弟が推薦する名作。しっかり見たいので、気分がのるまで観ないようにしていたし、あまり予備知識を得ないようにしていた。原題はThe Family Man。2000年

見始めてしばらくは冒頭の空港シーンはいらんのちゃうん、と思っていた。「天使のくれた時間」という内容をダイレクトに表す邦題から、こいつが天使だとすぐ分かるし、起こっていることすべてが夢だということもわかる。クリスマスキャロルの現代的焼き直しだということもわかる。だから結末も十分に予測できる。しかし、そんなことはおかまいなしに、観ているとどんどん映画の中に吸い込まれていってしまうのだ。

それはちょうどジャックが天使がくれた時間になじんでいき、はじめは子供にとって宇宙人だったジャックが最後には「パパ、おかえりなさい」と迎えられるのと同じだろう。そこで何が起こっていて、我われに何を喚起しようとしているのか、すべて承知のうえでも最後に「おかえりなさい」といわれたら涙がでてくる。そういう映画だ。

妻のケイトを演じるティア・レオーニがみごとな演技をみせている。ケイトによってジャックは人間らしさを取り戻すが、映画を見ているほうはティア・レオーニによって、映画の主題がけっして押し付けがましいものではないと思い始め、きわめて自然に受け入れられるようになっていく。それにしても出来過ぎの妻。美貌で人格者。おかしくなった夫を素直な気持ちで迎え入れるケイトと、心境がだんだん変化していくジャックをみながら、ちょっとしたシーンでふしぎと涙が出てくる。どこで、どんなふうに感動するのか、説明のしようがない。

ラスト間際に冒頭シーンの重要さが理解できる。そのときのケイトと、夢の中のケイトは、明らかに別の人生のケイトであると分かっていても、同じケイトであると信じたい。あのケイトならきっと…

ラストシーンには、涙が溢れて出て止まらない。そのさきどうなるかは観客の想像にゆだねられているが、誰もが同じ未来を想像してしまうのではないか。もちろんそれは夢の世界を再現するわけではないことだけは確かだ。

今日は、ママの誕生日。シティの高級レストランでダンスしなくっちゃ。


日 - 9 月 25, 2005   05:55 午前