荒川静香のスタイル


NHKスペシャルで荒川静香を特集していた。昨年夏からの密着取材。オリンピックにむけてどういう練習を重ねてきたか。

この番組で新採点システムのことがよくわかった。前のエントリで得点を素人なりに分析したが、「要素」の得点の内訳がわからないことには意味のない分析だった。「要素」は、ジャンプとスピンとステップとスパイラルの4つ。それぞれ規定された内容にもとづいて難易度が設定され、それに応じて得点がある。最高はレベル4。得点は「要素」によって異なるが、ジャンプがいちばん高い得点をねらえるらしい。採点はビデオを繰り返し見ながら「要素」がそれらを満たしているかどうかチェックされるらしい。

フィギュアスケートが競技である以上、芸術的な構成より、技術的な「要素」が重視されて当然。したがって競技者たちにとって、その「要素」をいかに高得点に結びつけて行くかが重要になる。先日の得点の分析で芸術的側面を重視した考え方は、まちがいだった。

荒川は苦手のジャンプをさけて、それ以外の要素でレベル4をねらう訓練をはじめるが、うまくいかない。ジャンプが得意な浅田真央の台頭により最終的にはすべての要素でレベル4ではないと高得点は無理だと判断する。

荒川の転換期は単に高得点をねらうのではなく、自分の持ち味を活かした上での高得点をねらうと考えてから訪れた。そのためにコーチを変えた。なぜなら、自分がこれまでに培ってきたものの組み合わせではうまく行かなくなって、実際に手本を滑ってみせてくれるコーチが必要だったからという。新採点システムに対応した新しいコーチということかもしれない。演じる側以上に指導者側にも新システムへの理解が必要だということだ。

荒川のスケートは優雅で美しかった。それが荒川のこだわりであり、荒川のスケートのスタイルだったのだ。ひょっとしたら荒川がこだわった優雅なスケーティングが今後の採点基準をかえることになるかもしれない。


土 - 2 月 25, 2006   10:35 午後