デベロッパはマンション事業の主役となりうるか


マンション学会京都大会でのシンポジウム「持続可能型社会をめざしたマンション」(4月21日)において、巽和夫先生の基調講演は非常に興味深かった。

基調講演は「持続可能型社会をめざすマンションの課題」というタイトル。大会誌にはあらかじめ論文が掲載されていたが、非常にたくさんのスライドを表示させながら、大会誌に掲載されていない内容も豊富な講演だった。

自身のこれまでの研究と照らして、マンションの置かれている社会的意義、とくに持続可能型社会をめざすときのマンションの特性をときほぐしていし、その持続性を解明していく手法に、ちょっと目からウロコ状態だった。

もっとも巽先生のこれまでの著作を読んでいれば、それは常識だったかもしれないので、ここでこんなことを書いているのは、私の不勉強を露呈するだけかもしれない。

マンションは、いわゆる青田売りが常であることから、他の住宅とは異なる建築生産システムにあるとの指摘。つまりデベロッパの登場によって建築物が投機的に扱われるようになったということ。

デベロッパがマンションの質を決めてきたという事実を振り返ると、デベロッパが高値売り逃げしてきたのを放置してきた住宅行政にも問題があり、宅建業法では規制できないので、デベロッパ法なるもので規制すべきだということ。

デベロッパ自らが設計することもないので、マンションに関するR&Dも水準が低い。ハウスメーカーには、儲かりもしない住宅研究所があったりするのに、デベロッパにはそれがない。とか。

講演後の質疑応答では、新築マンションの適性価格はいかなるものかとの問には、新築マンションに適正価格なんてないようなもの、高値売逃げができるのがマンションであり、需要があればいくらでも高く売りつけることができるし、売れ残り住戸なんて、半値以下で処分してもまったく痛くも痒くもないとのこと。適性価格という点では、中古マンション市場のほうが正しい。ということ。

要するに、デベロッパには新しいマンション生活様式を先導してく様な力が欠けており、商業主義的に売れればいい、という感覚が強すぎるということだろう。たしかに、マンションは売ってしまえばそれで終わる。いかに高く売るかが重要。

ところでこのしくみ、ベンチャー企業の株式を上場させ、上場時の高値のときに所有株を一気に売りさばいて大儲けするしくみと同じ?
そのしくみの詳細はこちらで紹介されている。

Life is beautiful: 21世紀の錬金術:Web2.0バブルで一儲けする方法

実はこのブログのエントリを読んで、金儲けの手法が不動産取引から株にシフトしただけとの印象を得た。いかに地価をつり上げるかが、いかに株価をつりあげるか、ということにすり替わった。


木 - 4 月 26, 2007   11:55 午後