エイズと癒し


京大ウイルス研究所前教授の速水正憲先生の講義をきいた。HIV研究の第一人者から、エイズと癒しというテーマでどのようなお話をされるのか、ちょっと興味深かったが、目からウロコだった。

HIVはヒトと仲良くしたがっている。というのだ。

HIVはアフリカのサルを起源としてヒトに伝染した。新しい環境で、しばし過激な状態が続いてきたが、母体を失うと自分自身が生き残れないから、発症してしまうのは自殺行為。賢いHIVが、そんなことをいつまでも続けるわけがない。ヒトに適応するように変化して生き延びようとしている。実際サルとは共生している。ヒトとも共生するだろうということ。

こんな平易なことばで書くと眉唾だが、遺伝子レベルでの研究。われわれが計り知れない世界でそういうことが起っているというのだ。

たとえば、成人T細胞白血病ウイルス(HTLV-1)は、日本人にキャリアが多いが、発病する前に寿命を迎えることが多いので、病気そのものが発症する例は多くない。HIVをそれを狙っているということだ。

また、エイズの薬というのは、もともとHIVの増殖を抑える薬。しかしHIV自身がヒトが発症しない程度に増殖を抑えるということ。

つまり、HIVに感染してもエイズで死なない。そういうときがもうすぐ来る。


ところで、エイズと癒し。これはもし発病したらということでの話。

さまざまな苦境にあるときこそ、そうでないときには見えなかった世界が見えてくる。だから苦境にあることを逆に感謝できる。という。これは工藤先生のことばと同じ。

そして、近くにいなくても自分のことを気遣っていてくれる人がいる。そういう存在を感じることができることが癒しなのだと。

この言葉(ちょっと正確ではないけど)に、私は子を見守る親の存在をみた。


土 - 12 月 22, 2007   11:10 午後