私のお父さん(プッチーニ《ジャン二・スキッキ》より)


O mio babbino caro, Gianni Schicchi
この曲は、ネトレプコのCDを愛聴していたのだが、実は他の人の歌を積極的に聴いたことはなく、曲の美しさに満足していた。ところが、先日、ふとしたきっかけでYouTubeを検索してみると…

森麻季の歌が素晴らしかった。美しく透明感のある声で、柔らかく包み込まれる様な歌い出しから、張り上げることなく、ごく自然に伸び上がる高音域。雲海に昇りあがって、天上で踊る様な至福感。美貌(静止画)も相まって、聴き入ってしまた。

‪森麻季 ジャンニ・スキッキから「わたしのおとうさん」‬
http://www.youtube.com/watch?v=Fnli0a-rRi0&feature=related

YouTubeには、森麻季のライブ映像がある。ジャケットとは雰囲気が異なるが、こちらは動きがあって素晴らしい。

‪O mio babbino caro (Maki Mori) 森麻季‬
http://www.youtube.com/watch?v=epIPrgmkNwo&feature=related

最初の歌詞 o mio babbino caro の歌い始めの o の発声の仕方がいい。そこんところだけで、この曲の中にぐいぐいと引込まれていく魅力がある。そして、babbino のイントネーションの置き方がいい。一語として続けて発音している。bbino のbbiにやたらアクセントをおいた歌い方があるが、とくにba と bbinoを切り離している場合はとても不快で、ここで聴く気がしなくなる。ついで、mi piace, bello, bello の bello の llo のところで柔らかく伸びゆく声が気持ちいい。

恥ずかしながら、森麻季さんを知らなかった。まあ、知らないことが多すぎて、今更恥ずかしがることもないのだが、NHKのドラマ『坂の上の雲』の主題歌を歌っているほど一般に有名なソプラノ歌手なのに知らないということは、やはり恥ずかしい。というわけで、ついでにリサイタルの映像から《ボエーム》のムゼッタのワルツを観てみると、ますます素晴らしい。森麻季のファンになりました。

ところが、「私のお父さん」の動画をiPhoneに入れて音声だけ聴いていると、最初に聴いた時に感じた様な柔らかく透明な高音域ではなく、キンキンと張りつめた刺のある高音域のように感じた。ビジュアルにダマされたと思った。

そこで、ようやく他の歌手の歌を検索してみることにした。といっても、YouTubeの画面上に関連する動画がリストアップされるのでそこから選んだだけ。まず超有名なソプラノ歌手のマリア・カラス。晩年のリサイタル映像をいくつか観て、決定版は若い頃のCDからのこれ。

‪Maria Callas - O Mio Babbino Caro - Giacomo Puccini‬
http://www.youtube.com/watch?v=s6bSrGbak1g&feature=related

カラスと森麻季を聴き比べて驚いた。カラスのほうがよっぽど刺々しいのだ。それになんとなく田舎っぽい。カラスを絶対視していた私には、とてもショックだった。

カラスの動画のときにシュワルツコップの動画がリストアップされた。シュワルツコップといえば、フルトヴェングラー指揮バイロイト祝祭管弦楽団の第九、しか知らない(カラヤンの《ばらの騎士》をLDで買ったけど、ほとんど見る機会のないままLDプレーヤーが壊れて放置してしまった)けど、ソプラノの名手。さっそく観てみる。

O mio babbino caro - Elisabeth Schwarzkopf
http://www.youtube.com/watch?v=gJV_nY2CoqQ&feature=related

音声のレベルがやや低くて聞き取りにくいが、歌いだしから引込まれていく柔らかい美声。静止画が若いときの白黒映像だからより美声に聞こえる。か細い歌い方に若いラウレッタが父におねだりする愛らしさが漂っている。もっとも森麻季風で良かった(笑)。ははは、逆ですね、森麻季がシュワルツコップに似ているというべき。お手本にしているのだろうか。


Montserrat Caballé - O mio babbino caro
http://www.youtube.com/watch?v=RxZSP1Dc78Q&feature=related

モンセラ・カバリエのライブ映像。ビジュアルからは想像できない美声とやわからい歌い方。それでも張り上げる高音域が気になる。そういえば往年の名ソプラノは声量を出すために太っていないといけなかったおか。それにしても私の猛烈な無知ぶりは、このカバリエさえ知らなかったということ。

この3人の歌を聴き比べて、一日経ったあとに、もう一度森麻季を聴くと、なんと美しいことか。気になっていた高音域の張りの部分も気にならない。

ここまで聴き比べてみたが、実は、歌劇《ジャンニ・スキッキ》のことを全く知らなかった。Wikiによると、持参金のない若者と結婚したい娘(ラウレッタ)のために、若者の親類が発案した悪巧みに加担し、策を巡らすす父親(スキッキ)の喜劇。このアリアは恋人と結婚できるように一肌脱いでほしいと、娘が父に懇願する場面。

(オペラをアップした映像見つけました)
スキッキ4 Gianni Schicchi " 私のお父さん O mio babbino caro"
2008.3.13ミラノ・スカラ/シャイー指揮/ニノ・マチャイヅェ(ラウレッタ)
http://www.youtube.com/watch?v=JEim5rCHlBc


森麻季がモーツアルを語る動画を観た。モーツアルトの高音は丸く柔かく歌うことになっているらしい。対してイタリアオペラは高音を張り上げるとか。o mio babbino caro はモーツアルト風に歌っていると言うことかも知れない。




日 - 11月 20, 2011   01:34 午後         |