フルトヴェングラーの《トリスタンとイゾルデ》


急に《トリスタンとイゾルデ》全曲が聴きたくなった。ワーグナーのオペラを聴き始めたのは2年前に「バイロイト名演集(33CD)」を買ってからだけど、最近はなかなか全曲を通しで聴く機会がなかった。しかし、急にトリスタンを聴きたくなり、どっぷりとハマってしまった。

ベーム以外の名盤は? とネットをしらべていると

1952年のフルトヴェングラー指揮フィルハーモニア管弦楽団
1952年のカラヤン指揮バイロイト
1982年のクライバー指揮シュターツカペレ・ドレスデン

あたりが名盤らしい(Kenichi Ymagishi's Web Site トリスタンとイゾルデ より)ことが判った。

調べているうちに、バイロイトで《トリスタンとイゾルデ》を指揮して不評だった大植英次の演奏を実際に聴いた人の話を見つけた。情熱が爆発するような演奏で良かったとか(情報源のWebはどこかわすれた)。

大植のトリスタンを聴きたい。

調べてみると、Wagner Operas Podcasts に2005年のトリスタンとイゾルデのmp3がおいてあった。さっそくダウンロードして聴いてみると、いきなり第2幕前奏曲(といっても冒頭だけ)から始まる約55分のハイライト版。歌手もいいし、情熱的で良い演奏だと思いながら聴いていた。聴きながら、大植のバイロイトの評をいろいろと読んでみたが、不評だったのはきっと新演出のせいもあるのだろうと、一人でなっとく。次の契約がなかったのは、小澤ほどジャパンマネーを呼び込まなかったのでアテが外れたこともあるらしい。

しかし「イゾルデの愛の死」がはじまった途端、とても大植英次をフォローする気になくなった。だめだこれじゃ。情緒のかけらもない。

もっと情緒的な演奏を聴きたい。

情緒的と言えばカラヤンかな。

とりあえず、クラシック音楽のパブリックドメインサイトがあったハズと思って探してみると、以前に見つけたときより1つ増えて、2つのパブリックドメインサイトが見つかった。

(1) パブリックドメイン・クラシック (http://public-domain-archive.com/classic/)

(2) クラシックmp3無料ダウンロード 著作権切れパブリックドメイン歴史的録音フリー素材の視聴、試聴 (http://freeclassicmusicmp3.blog23.fc2.com/)

探してみると、カラヤンの演奏はなかったが、《トリスタンとイゾルデ》はそれぞれのサイトにフルトヴェングラー指揮フィルハーモニア管弦楽団の1952年録音のものがあった。

(1) ワーグナー - トリスタンとイゾルデ
(2) ワーグナー トリスタンとイゾルデ WWV.90

(1)のサイトではmp3ファイルのファイル名は単なる番号。詳しい説明はない。
(2)のサイトでは幕ごとにZIPにまとめてあるが、ダウンロードは別のサイトに飛ばされて、一瞬ヒヤっとする。ファイルの種類が2つあり、(ファイル曲別)とついているのもある。

さらに(2)のサイトには「前奏曲と愛の死」なら、トスカニーニ、フリッツ・ライナー、フルトヴェングラーの別録音、「第2幕第2場愛の二重唱」のワーグナー自作自演などが置いてあった。

さっそくダウンロードしてみた。

いや、なに、これ、すごい。

どうして、これを最初に聴かなかったのだろう。
「前奏曲」の冒頭の引張り。緊張感がたまらない。
「愛の死」は特にすごい。ネトネトでべったりしているのに透き通ったような感情的な高まりに引込んでいく。

フルトヴェングラーってこんな演奏してくれてたんだ。と今更ながらに感心。やっぱり巨匠。全曲聴いてもすごい。
ついでに1954年録音とされる「前奏曲と愛の死」もダウンロード。あまり演奏の質の差は感じない。

イゾルデのフラグスタートが、透き通った張りのある声で、かつ暖かみのあるふくよかな声。ときおりレベルオーバーになって耳が痛いところがあるのは録音のせいとして、全体に美しい。もともとオペラ歌手はあまり知らないのでさっそく調べてみる。キルステン・フラグスタート(1895-1962)はノルウェー出身のソプラノ歌手で、これ以上のイゾルデ、ブリュンヒルデはもう出ないだろうとまで言われた理想的なワーグナー・ソプラノだったらしい。1952年というとすでに57歳! 本当に?

キルステン・フラグスタートの《ヴェーゼンドンク歌曲集》 - HODGE’S PARROT

すでに高音が出にくくなっていたフラグスタートにすり替わって一部分はシュワルツコップが歌ったらしい。57歳だと、さもありあん。いや57歳でこんな若々しい声がでるのが不思議だ。

で、いつも聴いているニルソン(1918-2005)は、フラグスタートの後継といわれたそうだ。1966年のバイロイト当時はまだ48歳、1952年のフルトヴェングラーとのフラグスタートとは10歳ほど若い。84年に現役引退時でも66歳。

フラグスタートに魅力を感じる。




で、詳しく聞き出すと気になるのが、パブリックドメインとされる音源。そういう情報は一切記載されていない。参考になるのは、《トリスタンとイゾルデ》の各ファイルの仕様が異なる点。CDからのリッピングだとすると同じCDではないことは確かだ。それが同じ録音時のものなのかどうか。いずれも1952年録音となっているのだが。

(1)は場ごとにファイル分けして12ファイル、ファイ名は4桁の番号だけだが、iTunesにもっていくとちゃんとタグ付きであることがわかる。
(2)は24のシーンに分けたものと、51シーンに分けたものがあった。が、いずれもIDタグがついてない。

改めて、Kenichi Ymagishi's Web Site の トリスタンとイゾルデ をみると、1952年の音源に対して、EMIは3回CD化をしており、その度ごとにトラック分けが細かくなっていると記載されている。つまりトラック分けだけで、どのCDを音源にしたか判別できるということ。

クラシック音楽mp3無料ダウンロードにおいてある(ファイル曲別)というのが一番新しいCDからのリッピングだということだ。ところが、この26番目のファイルが壊れている。なんてこった。



ついでに、1954年録音の「前奏曲」と「愛の死」の音源が判らない。いろいろ調べているうちに、フルトヴェングラーは1954年に没したことが判った。その直前まで演奏活動をしていたわけだ。

http://classic.music.coocan.jp/wf/record/years/1954.htm
Kenichi Yamagishi's Web Site に1954年のライブ録音のページによると、54年には4月27日にベルリン、ティタニア・パラストにて、5月14日にはトリノにて、トリスタンの前奏曲と愛の死を演奏している。どちらのCDか不明。


火 - 8 月 17, 2010   05:54 午前         |