大野和士


MBS-TVの「情熱大陸」で指揮者大野和士を紹介していた。昨日、今日と吹奏楽のステージが続いて、曲の仕上がりの未熟さが恥ずかしいと思っていたところだったので、大野和士の情熱的な音楽監督ぶりに、いたく感動してしまった。

恥ずかしながら大野和士を知らなかった。2002年から今年の夏までベルギー王立歌劇場(モネ劇場)の音楽監督だった。

歌劇場の音楽監督ということは、いわゆるオーケーストラの指揮者ではなくて、オペラ上演に関する音楽的なことをすべて監督するということ。番組の冒頭では、オケの指揮のあと、合唱の指揮をして、ソリストの指導をして、オケメンバーの個人練習にもつきあってという多忙な様子を紹介していた。

ベルディの歌劇《運命の力》がモネ劇場の最終公演で、その練習風景を撮影したものだった。

エネルギッシュな指揮だった。細部にわたる指示。振りだけではなくて、引き出したい音楽に合わせるかのような顔の表情、とくに大きく見開いた眼で訴えるのがすばらしい。つい惹き込まれていく。

作曲者が曲をつくったときの霊感に触れたいという。それが再現芸術としての音楽のあり方にかかわる理念。

作者が表現したいことを楽譜から読み取り、それを楽員に現地の言葉で伝え、言葉にならないところは身振り手振りと顔の表情で伝えて、演奏表現方法を具体的に指示していた。その身体動作が指揮の振り方につながっていることがわかっる。

歌劇場の演奏活動の間隙をぬって日本に帰国しては、オペラ歌手らと老人施設や障害者施設を回って、演奏会を開いている。自らピアノで伴奏を弾き、演奏会を進行させている。皆に生の音楽を聴いてもらいたいという。今、その気持ちがあるときにやらないと、将来できなくなるかもしれない、というのが精力的に活動できる秘訣のようだ。

1986年にはバイエル州立歌劇場でサヴァリッシュに師事。
2008年9月からはフランス国立リヨン歌劇場の首席指揮者に就任。

1960年3月生まれの48歳、ひとつ年下。佐渡裕は2つ下、大植英次は2つ上。同世代の人たちが世界を舞台に活躍しているのは、元気がでる。

そういえば、最近ワーグナーの楽劇のことを調べ始めて、大植英次がバイロイト音楽祭で《トリスタンとイゾルデ》を振っていた(2005年)ことを知った。評判は芳しくなかったらしいが、まだ若すぎたということだろうか。大フィルとのマーラーの2番の演奏があまりにロマンチックで感動したことから推察するに、1年限りだったのが残念だ。しかし、抜擢されただけでもすばらしい。

ところで今日は文化の日。大野和士はベルギーから文化勲章をもらっていた。日本の文化勲章って現役ばりばりの人はもらっていないのではないか。小澤征爾やドナルドキーンがどうして今頃という気がする。


月 - 11 月 3, 2008   12:22 午前