ニュルンベルクのマイスタージンガー


ハインツ・レーグナーのことを書いて、マイスタージンガーのビデオがあることを思い出した。以前NHK-BSで放映されてたのを録画したVHSテープを引っ張りだしてきて観た。ジェームズ・レヴァイン指揮メトロポリタン歌劇場、2001年12月8日収録の映像。どうも市販されているDVDの映像と同じようだ。

たぶん初めて観たのかもしれない。そもそもワーグナーの楽劇自体が見るのがはじめてのような。

あらすじをネットでしらべてみた。
CDでワーグナーの歌劇・楽劇を聴く〜ニュルンベルグのマイスタージンガー
ニュルンベルクのマイスタージンガー - Wikipedia

トリスタンとイゾルデの作曲の合間に書いた喜劇ということらしい。前奏曲を理解するために、以前あらすじを調べたことはあったが、もうすっかり内容は忘れていた。

興味深い内容だった。しかし全曲(全幕)で4時間半もある内容。残念ながら、集中してみてたわけじゃない。あらすじを読みながらの鑑賞。第一印象は、レヴァインって太り過ぎ。

あらすじ
中世のニュルンベルクは、商業都市。そこに騎士ワルターが訪れて、教会のミサに参列している娘エヴァに人目惚れ。なんとか恋を成就したい騎士だが、娘の父はヨハネ祭で歌合戦に優勝したマイスタージンガーを婿にと考えている。そこでマイスタージンガー試験にのぞんだ騎士だが、その自由奔放な歌唱スタイルを採点係となった恋敵の市書記ベックメッサーに避難されて失格。しかし、その歌の新鮮さに惚れ込んだ一人のマイスタージンガー(靴屋の親方ザックス)の協力と策略によって、最終的にはヨハネ祭で歌を披露し、絶賛されて優勝。めだたく娘を射止めたばかりか、マイスタージンガーの称号も与えられる。一度は拒否するが、ザックスに諭されて、マイスタージンガーを名乗る。民衆の賛美のなか幕。

厳格なマイスタージンガーの規程。それに捉われて進歩をなくしてしまったマイスタージンガー制度。そこに新風を吹き込むのは、なんともっと前時代的なはずの騎士ってのがおもしろい。制度や慣習にとらわれて硬直化する組織の姿がおもしろおかしい。

騎士が惚れた娘に恋い心をもつマイスタージンガーがふたり。靴屋の親方ザックスは騎士の理解者だが、もう一人の市書記ベックメッサーは騎士の恋敵。ザックスが自分の娘ほどの女に恋心を抱きながらも、その女のために奔走する姿が、なんとなくゲーテのファウスト的。一方、市書記ベックメッサーが自分の立場を利用して恋敵を陥れる様は、いつの時代にも存在する悪者の姿として滑稽。

ザックスの計略はマイスタージンガー制度の発展に貢献し、民衆の圧倒的支持を得て賞賛される。どの時代でもヒーローが求められるが、それが騎士ワルターではなく、その背後で活躍した親方ザックスであるというのが、この話の最大の面白さかもしれない。

解説を読むと、恋敵ベックメッサーはワーグナーを標的にした批評をくりかえす音楽批評家のハンスリックという人をモデルにしたという。それがとことこん叩きのめされる様は痛快。しかしそこにはワーグナーのドイツ民族至上主義が働いているという指摘もあって、手放しで楽しめない要素もあるらしい。

前奏曲で示されるライトモチーフが全曲にわたって散りばめられており、聴いていて観ていて楽しい。

最初に観たのが2月26日。それから、何度かかけっぱなしにしながら仕事したりした。いずれも書斎(?)の9インチのテレビ。いつか大画面かつきれいな音響でじっくり観たい。


土 - 3 月 3, 2007   09:53 午後