ムーンライト・グラハム にとっての "Field of Dreams" レイは、テレンス・マンと一緒にボストンのフェンウェイ球場で野球を観戦しているとき、 また新たな"声"きく。 "Go the distance" (最後までやりとげろ) そして、スコアボードに映し出されたのは、1905年にニューヨーク・ジャイアンツ(現サンフランシスコ)に在籍した"ムーンライト"・アーチー・グラハムという選手の大リーグ在籍記録だった。 彼は、大リーグに在籍していたものの、わずか1試合1イニングしか出場していない。 1イニングだけライトの守備についた彼には、打席に立つ機会は巡ってこなかったようだ。 レイとテレンス・マンは、グラハムの住むミネソタ州チザムに向かうが、グラハムは16年前に既に他界していることを知る。グラハムは、この町ではなくてはならない医者として、人々に慕われていたのだ。 誰もが口をそろえていう。 「ドクター・グラハムは聖人だった。」 シューレス・ジョーのように失意のうちに世を去ったわけではなく、皆に惜しまれ、充実した人生を全うしたようだ。 しかし、レイとテレンス・マンには腑に落ちない。 "16年も前に亡くなった彼を追いかけて、我々がここまで来るには何か訳があるはずだ。" ある夜、街中に散歩に出たレイの前に老齢のドクター・グラハムが現われる。 レイはかけ寄り尋ねる。 「あなたには、思い残したことはないですか。」 「夢がかなうまであとこれくらいだった。 だが、夢は肩をかすめ歩み去った。 人生の節目となる瞬間は、自分ではそうと分からない。 " また機会があるさ。" と思ったが、 ・・・実際はそれが最初で最後だった。」 「あなたの夢はなんですか」と尋ねるレイに、グラハムは答える。 「私はメジャーリーグで打席に立ったことがない。 一度でいいから立ちたい。 ピッチャーをにらみ、彼が投げる構えに入ったらウィンクする。 球を打ったときの腕の感覚。 二塁でとまらず、果敢に頭から三塁に滑り込み、 ベースを腕で抱き込む。 ・・・これが私の夢だよ。」 そこで、レイはいう。 「そんな夢のかなう場所があるのです。 ご案内しますよ。」 しばらく考えたのち、グラハムはいった。 「夢は夢のまま終わるのさ。 私はここで生まれ、 悔いなくここで死ぬ。」 しかし、それは真実ではなかった。 翌朝、レイとテレンス・マンがアイオワに戻る途中、ヒッチハイクで車に乗り込んできた若者がいた。 17歳のアーチー・グラハムだった。 若いグラハムは、好きな野球を存分にできる町を探して、前途洋々として夢を追いかけているさなかの若者だった。 レイの家に着いたグラハムは、トウモロコシ畑をつぶして作った野球場で、憧れの名選手達がプレーしているのを見て、驚嘆し心躍らせる。 シューレス・ジョーが言った。 「おまえがグラハムか。 何しているんだ、野球をしに来たんだろ。 早くユニフォームに着替えろ。」 目を輝かせて走っていくグラハム。 早速試合が始まる。 グラハムに打席がまわってくる。 ドクター・グラハムがレイに言っていたように、ピッチャーをにらみつけたあとにウィンク。そして外野に犠牲フライを打ち上げ打点1を記録する。 レイとグラハムの交わす視線がとても感動的だ。 原作では、このあたりはかなりあっさりとしか書かれていない。 しかも、グラハムは最初の試合にヒットを打ったばかりか、その後も数試合に出場し打率3割をマークする大活躍をしている。 観客席から転落したレイの娘カリンを助けるため、グラハムはフィールドからでて、もとのドクターグラハム老人に戻ってしまう。 謝るレイに対して、グラハムはいう。 「いや、礼を言いたいのはこっちのほうだ。 そろそろ失礼するよ。 妻のアリシアが心配する。」 シューレス・ジョーが呼び止める。 「いい選手だ。」 ムーンンライト・グラハムの夢はかなった。 |