仏陀の生涯ー4  
 

   死女が子を産む話


       死女が子を産む話

 若くてきれいな王妃が懐妊いたしまし
たのを妬んだ他の王妃が、バラモンを使
って若き妃が子供を産めば国に災いが起
こるであろうと王に告げ口しました。す
ると、王はそんなことになれば一大事と
子供がお腹に居る若い妃を土葬してしま
いました。仏陀は若い王妃を憐れんで墓
穴に横たわる亡き王妃(青矢印)の身体か
ら子供を無事に出産させたという話です。

 

  スリグプタの招待


  
  スリグプタの招待

 「スリグプタ」が仏陀を招待した際、落
とし穴を造りその穴に仏陀を落とし殺害
しようと企てましたが仏陀は神通力で落
とし穴を蓮池に変え何事もなく蓮華の上
を歩いて来られました。写真でははっき
りしませんが仏陀たちは蓮華の上に乗っ
ております。その奇跡におののき、スリ
グプタは仏陀の前に跪き懺悔しました。

 

 

  アパラーラ龍王の帰依 


   アパラーラ龍王の帰依


   
アパラーラ龍王の帰依

 

  「アパラーラ龍王」はスワート河を氾濫させては農作物を駄目にして農民を苦しめて
おりました。それを聞きつけた仏陀が龍王を懲らしめてやろうと龍王の許にやって来
ました。お伴のヴァジラパーニ(赤矢印)が金剛杵を岩山に打ち付けるとその轟音に龍
王が何事かと驚いて出てきたところで仏陀が龍王に懇々と諭しましたら龍王は仏陀に
帰依するようになったというお話です。龍王には龍蓋が付いております。

 

  アングリマーラの悔悛


   
アングリマーラの悔悛

 容姿端麗な少年だった「アングリマーラ」は師
の妻の横恋慕を拒絶すると、妻はアングリマー
ラを陥れようと夫に出鱈目な報告したため師は
激怒してアングリマーラに多くの人を殺し、殺
した相手の手の指を切り取りその指で装飾品を
作れと命じました。それから悪魔となったアン
グリマーラは、集団で押し掛けてこられようと
も全員を殺害してしまうので大変恐れられてお
りました。そこで、仏陀は単身でそのアングリ
マーラの住処に訪れました。アングリマーラは
仏陀を見つけ剣を持ち仏陀を殺害しようと背後
につけますが全力疾走するも徒歩の仏陀に追い
付けず、ついにアングリマーラは仏陀の神通力
に感嘆して仏陀に帰依することとなったという
話です。

 下段は仏陀に敬意を払うマガダ国の王ウダー
インです。

 

 

  アータビカの帰依


     アータビカの帰依

 ある野蛮人「アータビカ」は王に毎日、
人間一人を差し出すことを要求いたしま
した。それも毎日のことですから何十年
と続くとついに王は自分の息子を出さな
ければならなくなりました。それを聞き
つけた仏陀はアータビカに会い説法して
アータビカを仏教に帰依させたという話
です。
 中央が仏陀で左がアータビカ、右が無
事だった子供を抱く王でしょう。

 

  マンゴ園の寄贈


     マンゴ園の寄贈

 台座上に結跏趺坐して右手を施無畏印に
挙げる仏陀を中心に、両側に数人の供養者
を表しております。仏陀の両脇の人物はい
ずれも女性とみられ、左側の女性は「遊女
アームラパーリー」で手に水瓶をもってお
ります。古代インドでは遊女と言っても身
分の高い者だったらしくその遊女が仏陀に
マンゴ園を寄進したという話です。アーム
ラパーリーが水瓶を持っていますのは,彼
女の所有するマンゴー園を寄進することの
約束の証です。
 仏陀の上の木はマンゴの木らしいです。

 

  エーラパトラ竜王の訪仏


  エーラパトラ竜王の訪仏


      
エーラパトラ竜王の訪仏


    エーラパトラ竜王の訪仏

 「エラーパトラ龍王」は前世に善行を積
まず悪行を行った結果、人間から蛇に生
まれ変わりました。龍王は来世は元の人
間に戻れることを願って仏陀に会い懇願
することにしました。
 上は龍王の5頭の龍蓋上に龍女を乗せ
その龍女に仏陀のみに理解できる文句を
唱えさせて仏陀の到着を待っております。
右下は河の中を進む龍王と王妃たちでし
ょう。
 仏陀の象徴である菩提樹と聖台に龍王
が合掌礼拝していることは仏陀に無事に
面会出来たということでしょう。

 

  涅 槃

  仏陀は鍛冶職人が差し上げた食事に当ってしまいました。迫りくる死期を悟った仏
陀はマッラ村の沙羅樹林に入り右脇を下にして、頭を北に、顔を西にして右手を手枕
にし両足を重ねた状態で寝台に横たわられました。間もなくして仏陀はこの状態で涅
槃に入られました。
 35歳で成道されて涅槃に入られたのは80歳、仏陀は人生の大半を仏教の布教と伝道
で費やされて80年の生涯を終えられたのであります。このような涅槃図があるのは仏
陀が生存された方だからで他の如来には涅槃図はありません。 
 


        涅 槃 図


         涅 槃 図

  左図で説明いたしますと寝台の両側後方には沙羅樹が表されており沙羅樹が2本で
すので沙羅双樹となります。 
 後ろ側には仏陀の涅槃に手を挙げたり頭を抱えたり全身で嘆き悲しむマッラ族の人
々と比丘たちです。
 寝台前で結跏趺坐するのは仏陀の臨終間際強引に弟子になった最後の弟子須跋(ス
バドラ)でしょう。 
 仏陀に常に寄り添ってきた阿難の悲しみようは大変なものでしたが、それに比べて
阿那律は仏陀の肉体は消滅しても精神は不滅であるからそんなに悲しむものでないと
座り込んで悲しみにくれる阿難の右手を取って立ち上がらせようとしております。
 右側で杖を持っているのは遅れてやってきた大荷葉でしょう。
 思い出すのは法隆寺五重塔の涅槃図で両手を後ろに付き顔を天に向けて泣き叫ぶ者、
胸を叩き悲しみを表す者などが居る有名な「法隆寺の泣き仏」です。この泣き仏の原型
がインド・パキスタンに存在したのです。
 涅槃とは逝去を意味しますが成道をも意味します。


      涅 槃 図 


       涅 槃 像
  東南アジアには恐ろしいほどの巨大な涅槃
像がありますがインドでは存在せずこれは巨
大像に入る貴重なものです。右側には柱が林
立しており撮影にはこれ以上下がらないため
このような写真となりました。この涅槃像は
アジャンター石窟に安置されております。

  上図はインドでは珍しい涅槃図です。左から沙羅樹の中からの樹神(青矢印)、頭に手
を置く者、両手を挙げる者、長い髪の毛を前に垂らす者など悲しみを身体で最大限に表
しております。インドでは当初涅槃図は見ることは出来ませんでしたが後の時代になれ
ば表わされるようになります。

 

   納 棺


      納  棺

 納棺の前に仏陀の遺体を布で包むのです
が画像は残念ながらありません。
  棺は閉じられていますが棺の上に手を乗
せまだ別れを惜しむのは阿難でしょうか。
 右側の人物は大荷葉で次の荼毘を取り行
います。
 棺は白檀製とも言われており香木を板に
して組み立てたのではなく、形からみると
大木を刳り抜いて造られたのでしょうか。
しかし、両端が丸みを帯びているので鉄棺
だったとの説もあります。後代になると金
棺に変わります。 

 

  荼 毘


          荼 毘

 荼毘の着火が出来ず困惑しているとこ
ろへ布教のため涅槃に間に合わなかった
「大迦葉」が帰ってきて釈迦の足許に跪き
礼拝すると火が付いたという説話であり
ます。
 マッラ族の供養者が持つ棒の先は火消
し用の水カメで中には香水・牛乳が入っ

ているとのことです。薪は香木の白檀でありました。
 インドでは火葬の火を付けるのは後継者の役目であることから大荷葉が教団の後継
者を意味します。

 

  分舎利戦争


             分 舎 利 戦 争 

  中央は仏陀の舎利を祀っているクシナーラ国に分舎利を求めて攻城する王たち。城
に向かって矢を引く兵士(青矢印)が見られます。左上では円満に舎利分配が出来、分
けられて舎利を本国へ持ち帰る王、象の頭上に舎利容器が置かれております。

 

  舎利分配

 仏陀を荼毘にして舎利を祀ったのは
「マッラ族」で舎利分配の要求を拒否し
たため争いとなりましたが、バラモン
が仲裁して仏陀と関係が深かった七つ
の王国とマッラ族に平等に八つに分け
ることが決まり球形の舎利容器に遺骨
を納めました。舎利分配から外れた者
は遺灰や分配に使用した容器を貰って
辛抱したらしいです。  


     
舎 利 分 配

 

  舎利運搬


          舎 利 運 搬

  これは部分図です。華麗な文様の衣で飾った象、その象に二人の護送人が乗ってお
り大切な舎利容器は象の頭上に乗せて運んでいます。右には賑やかに踊りながら先導
するグループが居ります。
 

 

   造 塔 


                  
 造  塔 

  アショーカ王が八つに分配された仏舎利を安置した塔から塔を解体して舎利を取り出
して更なる分割をしようとしましたが、ラーマガーマ塔だけは拒否。アショーカ王も蛇
族に強固な抵抗に会いラーマガーマ塔からの舎利取り出しは断念せざるを得ませんでし
た。
 右側はラーマガーマ塔に舎利を取りに向かうアショーカ王とその軍隊。
  左側は塔を必死で守る蛇族の兵士で、これら兵士の活躍で塔から舎利が持ち出される
ことは免れました。
 ですから、七つの塔を解体してそこに祀られていた一塔の舎利を12000に分けたので
7×12000=84000 84000の塔が建立されたということです。
 当初、アショーカ王は8×12000=96000すなわち96000塔の建立を計画されていたこ
とでしょう。

 

  これより仏伝図です。

  1は太子誕生、2は二龍灌水、3は降魔成道。4は従三十三天降下でその下の5は
ブラフマー、インドラが合掌して迎えているところです。6は初転法輪、7は涅槃の
場面です。

 

  

 

 

 1は占夢の場面。
 2は四天王が右手でピースを作り太
  子懐妊の知らせに歓声をあげてい
  るところ。
 3は太子誕生。
 4は太子の七歩行で四天王が持つ長
  い布に七つの仏足跡(青矢印)を刻
  むことで七歩行を表現しておりま
  す。ここでの灌水を2龍ではなく
  四天王が行ったかも知れません。
 5は誕生した太子の将来を占ってお
  ります。
 6は太子の宮参りですがお参りする
  神様の方が太子に合掌しておりま
  す。

 
 仏陀の生涯ー5へ続く